第1話
「レオン様、ご準備を」
(はい。転生でした。真っ暗で何も聞こえなかったのは、体が未成熟だったようで、しばらくしてから、少しずつ見えるようになっていった。本当、怖かった)
レオンが転生したのは、所謂、地球で言う、異世界であり、時代的には、中世あたりであるが、魔法の影響で一部、現代並みの技術力を保有している。
そんな異世界のシルフィード伯爵夫妻の長男として、レオンは生を受けた。基礎知識は、現代の日本レベルであったレオンだが、これまで、その知識を見せびらかすことなく、秀才程度の評価にとどめていた。
「レオン様?」
「ああ、ごめんね。少し考え事をしていた」
レオンに声をかけた少女ーーレオンの専属メイドのルナールは、レオンがお忍びで街に遊びにいった際に奴隷市場で見つけて、伯爵、つまりはレオンの父にまじめに礼儀作法を学ぶことを条件にメイドとすることとなった狐の獣人である。
「もうしっかりしてくださいよう。もうすでに、適正診断の儀の準備は終わっているのですから」
ルナールが頬を膨らませながら、そう言う。
「わかったよ。さあ行こうか」
レオンは、これ以上怒らせては堪らないと、そそくさと儀式の間に向かう。儀式の間は、平民と貴族で行われる場が違い、貴族の場合、神殿の最奥の部屋で執り行われる。表向きは、平民を萎縮させないようだが、実情は、一部の貴族が平民と儀式を行われるのを嫌うためである。
その最奥の部屋は、今までいた神殿の控え室から数分の場所にある。
ちなみに適正診断の儀とは、文字通りその者の資質を図る儀式のことだ。この世界では、ステータス、レベルはないもののスキルや魔法はある。スキルに関しては、神殿などで確認ができる。スキルには、適正職業によって得られる職業スキル、生まれた時から持っている才能のような特殊スキル、努力によって得られるコモンスキルの3種類に分類される。
レオンは、一切のスキルを持っていない。職業スキルはこれから得られるとして、どれだけ努力をしてもスキルを得られていない。これは異例のことであり、普通、貴族の子息であれば、礼儀作法などのスキルを得られるが、今まで、レオンはスキルを得たことがない。
(別にスキルなどなくとも他人にできることはできるから、別にいいけど)
「レオン様、素敵な職業を得られるといいですね」
「うん。そうだね」
この職業もスキルを得る一つの方法であるため、平民、貴族問わずにかなり重要視される。一応、職業は全ての人類に与えられるものであるが、膨大な種類あり、下級クラス、中級クラス、上級クラス、最上級クラスの4種類からなり、それぞれの職種によって、さらに増えていく。
例として、戦士だと下級クラスの剣士や槍士、中級クラスの侍や狂戦士、上級クラスの剣聖や騎士、最上級クラスの武王や騎士王となる。
貴族は最低でも中級クラスになることが多い。
儀式の間の前に着く。
「では、私はここまでですので、頑張ってくださいね」
儀式の間の前で、ルナールが両手を握りしめて応援する。
ルナールは、貴族ではないため、儀式の間には、入れない。そのため、廊下で待つこととなる。
「うん。頑張るよ」
儀式で何を頑張るのかはわからないが。
そんなやりとりの後、儀式の間の扉を開ける。
儀式の間は、普通の礼拝堂と同じような感じのレイアウトで、中央に神殿の司祭とレオンの父ーーゲルトが立っている。礼拝堂と違う点は、中心に魔法陣があることとこの部屋には窓がないはずなのにステンドグラスから、光がさしていることだろう。意味がわからない。
「父上、司祭殿。お待たせいたしました」
「うむ、さあ、早く来なさい。モエナ司祭、これが我が息子、レオンだ」
「まあ、噂通り、利発そうなご子息ですね。シルフィード伯爵もご安心でしょう」
「まだまだこれからだよ。はっは」
ゲルトはモエナの言葉に相合を崩しながら、返事をする。
「またまた、では、さっそくですが始めましょうか。レオン様、こちらに」
「はい」
モエナに促されるまま、レオンは魔法陣の中心に立つ。
「それでは。主よ、主の子を導かんことを」
モエナの言葉とともに、ステンドグラスから指す光が一層の輝きを増す。
(ま、眩しい……)
《神名・グリードの強欲の権能が発芽しました。異能力、世界間売買を獲得しました。続いて、分別の権能が発芽……失敗しました》
《ーーERROR、傲慢の権能の介入を確認……強欲の権能が介入を阻止…………失敗しました》
思わず、目を閉じてしまうほどの光となった時、レオンは、不思議な声を聞いた。
(なんだ? 今の声)
「モエナ司祭、結果はどうだった?」
不思議な声にレオンが、気を取られている隣で笑みを隠そうともしないゲルトがモエナに結果を聞く。
「…………」
しかし、モエナは、そんなゲルトの声も届いていないように、ひどく戸惑っていた。
「……モエナ司祭? 結果はどうだったのだ?」
「……ッ! す、すみません!」
モエナの様子に少し訝しみながらもゲルトが、モエナに声をかけると、ハッとしたようにモエナは、ゲルトの方に向き直す。
「その、結果はーー
ーー
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