中編

 なにこれ? 


 こういうの流行ってんの??


 僕はそう思いました。


 A男さんに続いて今度はB子さんから同様のメッセージが届いたのですから、不審に思っても仕方無かったと思います。ちなみにその時B子さんから送られてきたテーマはホラーモノでした。なんか怪しいなーと思いながらも、これはチャンスだと思いました。


 元々僕はホラー作品が好きだった母の影響で小説を読みだしたものですから、ホラーに関しては他ジャンルと比べれば多少人より知識がある筈だと自負していました。なので、いただいたテーマで傑作を書き上げれば、僕をフォローから外したA男さんにも認めてもらえるかも知れない!


 そう気持ちを切り替えると、僕は新たな作品作りに没頭しました。結果、一日がかりでしたが、一度も手を加えることなく割と満足のいくホラー掌編が出来上がりました。


 ぶっちゃけますと、最初にテーマをいただいたミステリーより出来栄えは良かったと思います。結果はすぐに出ました。僕がその時書いたホラー掌編は週間ランキングのホラー部門でなんと最高二位を記録しました。もう踊りましたね。情熱の一人ランバダです(笑)


 二位になったのはほんの一瞬のことでしたが、これなら流石にA男さんも満足してくれたんじゃね? なんて思いました。心はルンルンです。きっとどこか遠い空の下で目に涙を浮かべて『立派になったのー』なんてつぶやきながら、僕のホラー作品に目を通してくれているんだろうと考えるとウルルとなりました。しかし、そんな風に遠い異国の地(?)に思いを馳せる前に、僕にはすべきことがありました。


 まずは今回ホラー作品のテーマをくれたB子さんにお礼をせねばならぬ!


 そう思いました。


 そして僕はすぐにフォロワ―リストを開きました。



 B子さんの名前は消えていました。



 えぇー……。


 もうね。脱力感が半端なかったですね。


 僕、なんか悪いことした!? そんな思いでした。ええ。完全に逆ギレですねありがとうございました。例に違わず、(といってもその具体例も一件しかないのですが)B子さんが送ってきてくれていた『○○をテーマに――』という応援コメントも当然のように消去されていました。最初のA男さんの時と同じパターンですね。


 これはもうなんか、そういう遊びなんじゃね? 


 ていうか絶対そうだよ!


 僕はそう決めてかかりました。そう思うのが精神衛生上一番ラクだったからです(笑)


 たぶん、このサイトではそういった、『こんなテーマで小説を書いてみましょー♪』みたいなノリが横行してるのでは? と考えたわけです。いやー。恐るべし投稿サイトですよ。


 まあ郷に入っては郷に従えと言いますし、実際そのおかげで僕のようなド素人でも週間ランキングにランクインできる作品が書けたと思えば、メリットこそあれどデメリットはないよなーと頭を切り替えることにしました。で、他の作家さまも僕と同じようにこういったテーマをいきなり与えられて作品作りとかをしてたりするのかなー? 他の作家さまと仲良くなったらそれとなく聞いてみようかなー? となんとなくそんなことも考えていました。あらためて今思い返すと頭ふわっふわですね(笑)


 ただ、そんな風に一度頭を切り替えた僕は次の行動を起こすのがとても早かったんです。やれば出来る子なんですよ僕ってやつは(笑)


 僕はすぐに二位にランクインしたホラー掌編のコメント欄を確認しました。コメントは何件か届いていました。で、まあ予想通り、そのうちの一件に、


『○○をテーマに○○○○○のような話を書いてみてはどうでしょうか。具体的には○○○○を○○するという話です』


 テーマはまたもやホラーでした。


 はい、きたー。ありがたいテーマいただきましたー。ちなみに今度は男性の方からでした。C男さんとしておきます。


 前作のホラー掌編がランクインしていたこともあって、すっかり僕は調子に乗っていました。で、すぐに新しいホラー作品の制作に取りかかりました。推敲含めて二時間くらいで書き終わりました。まああらかじめテーマが指定されているので、こともなくスラスラ―っと書けたんですね。


 こ、これが僕の本当の力か……! なんて、調子に乗ったり飛んだり跳ねたりしていました。たぶん思ったより早く完成しちゃって暇だったんでしょうね。


 まあ、結論からいうとそのホラー作品はそこまで良い結果を得られませんでした。オチが微妙だったというのもあるのかも知れません。ですが、不思議とそこまで落ち込みはしませんでした。


 作品に愛着が沸いてないんだと気付きました。


 まあ、あらかじめ大筋を提示されたものを形にしていくだけの作業だったので、一から作品を手掛けていない僕からすれば、『他人が育てたキャラを使ってロープレをプレイしている』、それに近い感覚でした。それに気付いた僕は大いに反省しました。だって元々は誰かに自分の作品を読んで評価してもらいたくて投稿を始めたわけですから。


 これじゃいかんと。反省をして、次はめっさエエもん作ったる! と息巻きました。で、またも応援コメントの中に次の『○○をテーマに○○を――』のメッセージを見つけました。その時はもう作品を一本投稿するごとにそのメッセージを探すのがしきたりみたいになってましたね(笑)


 次のテーマはまたもやホラーでした。もう四回目なので流石に慣れていました。人ってこうやって汚れて大人になっていくんだなーと知りました(笑)


 しかし、メッセージの続きを見て僕は驚きました。


 素人の僕からしても、『これ、ひょっとすると結構面白いものが書けるかも』と思ったほどです。もっと筆力のある他の作家さまにそのテーマで書いてもらったらきっと物凄い怪作が完成しそうなのに。そうも思いました。そう思いましたけど、実際にメッセージが送られてきたのは僕なので僕が書くしかありません。ただ、その時はテーマにもビックリしたのですが、それより何より驚いたのが、僕にそのメッセージを送ってきた方のお名前でした。


 有名人。


 芸能人かも? その方の職業はあまりよく知らないんですけど、名前くらいは知っていました。たまにテレビにも出てましたし。D子さんとしておきます。


 なぜにこんな有名人が僕に!? てゆーかD子さんって投稿サイトとか観とんのかい! と戦々恐々でした。リアルにあわわわわ……という感じです(笑)もちろん僕には芸能界とかに知り合いなんて居ません。いや、それどころかリアルの世界にさえ知り合いなんて殆ど居な、……なんでもないです。


 しかし、よくよく冷静に考えてみるとアカウントの名前なんて自由に設定できるじゃありませんか。それにすぐ気付いてしまったのです。もうブチ切れですよ。僕の驚きをかえせやゴルァアアー! てな感じで。(実際は、『あ……、へへ……なんだ、変えれるんだ……そっか……へへ……』みたいに冷静に対処しました)いや、すぐ気付けよって感じでもありますが。まあそれだけD子さんの名前にはインパクトがあったわけですね。


 ともあれ。気を取り直した僕はすぐに執筆に取りかかりました。別に他にやることもないし? 一緒にどこかに出かけるリア友もいないし? みたいな? 


 悲しくなったせいでテンションが元に戻っちゃったので普通に続けますね(笑)

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