胸のない彼女と足の細い彼の話

はるゆきあさ

第1話

月曜日が嫌いだ。

1つ目の理由はまともな学生なら誰でも思っている、「一週間が始まるのが嫌だから」。


2つ目の理由も皆どこがで思っていると思う、「同じ毎日を繰り返すのが嫌だから」。

なんでって、嫌でしょ?

毎日何も変わらないでただ作業のみたいに繰り返すなんて馬鹿みたい。

平日なんて曜日ごとにだいたいの日課が決まっているから本当に嫌い。

祝日と休日だーいすき。


「…はぁ、起きよ。」


朝6時半、起床。

7時、朝食を食べる。

7時半、諸々の支度を終える。

7時45分、家を出る。

8時5分、学校に到着。


スニーカーから上履きに履き替えて、つま先をとんとん、とやる。

そうして二階にある教室まで向かう。

まだ静かな廊下を歩き、私の教室まで向かうと教室の後ろのドアをガラリと空けて、最後列の自分の席へと座る。

いつも私より先にいる彼に声をかける。



「おはよう。」



また同じ一日が始まる。








突然だけど、同じクラスの綺麗な顔をした彼は足が細い。

もう高校生だし棒みたいって訳じゃなくって、小枝か木の幹かって言われたら小枝を束ねたような足。

特にそれで悪い点があるとは思わない、男の子はがっしりしてるものかもしれないし、女の子は筋肉がついている方が好きな子が多いかもしれないけど。

なんか変態臭い。どうせ私の考えていることなんて分かるわけじゃよなー、と脳内で独り言をブツブツ。


彼は私の友達だ。友達って行ってもいいのかな?知らん。

すごく仲が良いわけではないけど趣味も割と合うので、活動班が一緒になると喋ったりする。

彼ははっきり言ってクズだ。

勉強ができる訳じゃないし、むしろちょっと馬鹿。

人とあまり関わらないけど、信用している人は何人かいるっぽい。

仲が良くなるとかまって欲しいみたいで、よくちょっかいを掛けている。

暴力も結構振るう。痛がる人を見て笑ってる。



私は特にその子を慰めることも、正義感が強い訳でもないからそれについて憤ることもせず、感情表現が歪んでるな、不器用だな、可哀想だなあと頬杖を着いて見ている。

見えない空気のような壁があるのが、彼と私の距離感だ。


朝登校してみると彼は私より登校する時間がはやく、席について本を読んでいる。

朝日が当たって彼の髪は艶めいていて、そんな彼に何も声をかけずに席に着く。そこから広がる会話は特にない。


たまにアニメとか、漫画の話とか、小説の話とか、そういう他愛のない話をする時もある。


そのまま時間が進み、あっという間に放課後が訪れ、はしゃいで帰っていく人ごみに紛れて私は下校する。

騒がしい昇降口を抜けて友人と帰りの挨拶を交し、いつもの通りに出て、きゃあきゃあやらぎゃあぎゃあなど声を上げる人々の中で、空を見上げてふぅと息を吐き、そんな時に彼のことを考える。

今どんな気持ちで、どんな顔で、どんなことを考えて下校しているのか。

知らないことがある事に少しだけ寂しさを覚え、知っている事があると嬉しくなる。まだ熟れていない、そんな蕾を大事に抱えて生きている。


家に帰るといつものように洗面所へ向かい、水道のレバーをきゅ、と引き上げて水を出す。じょぼぼぼ、と音を立てて水が流れ、そこへ手を差し出し、洗う。ハンドソープを付けて手を洗い、約30秒かけて水で流す。次にコップに水を入れ、その中にうがい薬を2滴ほど垂らしてがらがらとうがいをする。

決まりごとのように同じ毎日を行動を繰り返している。


何にも変わらない私と彼の、普通のお話。

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