第62話 ベータテストに無い演出
◇◇◇一時間後◇◇◇
「うへぇ……。掘っても掘っても、小さくならねぇじゃん……」
足元に転がる宝石を避けながら、クリスタルを叩く。ある程度掘っては、鉱石回収。それを繰り返すだけのクエスト。
耐暑装備はどこへやら。不審に考えてしまう。でも、ベータテスターのチェリスが言うなら、間違えるわけがない。
『もうこんな時間。君たち、私の工房に来ないかい? そろそろ武器も新調時だろうから……』
「強力な武器あるんすけど……」
『私に着いてきてくれ』
普通のNPCだ。AIのクリム達と違って、セルフトークのようなやり取りになっていない。
これが、大きな差なのだろうか? 反発できず、クエストチャートに従う。
「アレン、もう少しで入手できるわよ。目的のやつ」
「どういうことっすか?」
「行けばわかる。見失う前に行きましょ」
は、はあ~……。先ゆく鉱夫さんを追いかけて、やってきたのは溶解炉がある鍛冶工房だった。
◇◇◇◇◇◇
『では、掘った鉱石を、見せてくれないか?』
えっ⁈ なんで? 全部出すの? 俺、パンパンになるくらい、たくさんあるんだけど⁈⁈
「ほら、指示に従う……。次にいかないわよ? もう少しで手に入るんだから……」
「わかりました……」
チェリスにも指摘され、所持している鉱石を、全て実体化させる。全30種。個数2000個。1回叩いて20個から30個ドロップ。
クリスタルが小さくならないのに、獲得量が多い。こんなに掘っていいのだろうか? すると、俺が出した鉱石を見た鉱夫が……。
『なんだ、その七色に光る鉱石は?』
七色の鉱石? 工房のテーブルをよく見ると、一つだけ存在感のある物があった。
アイテムのメニューをひらくと、名称部分に"幻龍石"という文字。レア度も桁外れの20ランクだ。
「アタシも初めて見たわ……。ベータテストの時はなかったもの……」
ベータテスターでも知らないって、俺ラッキーボーイ? 絶対そうだよね?
『幻龍石は、伝説級の武器を持つ者だけが、掘り当てられるんだ……。まさか、実物を見る日がくるとは……』
「このクエストに、こんなイベントがあったなんて……。あんた、やるじゃない」
NPCのセリフに、目を輝かせるチェリス。続く内容は、自分で装備を作るというもの。
失敗をしながら、世界に一つの武器を作るのだが、鍛冶する上で耐暑装備が配られた。
しっかりと繋がりがあったのだ。さすがはテスター。チェリスに関する好感度が上昇した。
『二人とも、良い武器ができたようで、私はとても嬉しいよ。その武器と貸した装備は、自由に使ってくれ』
「これでクエストクリアよ。お疲れ様」
長いようで、あっという間の進行具合。耐暑装備を獲得し、俺達は第3層へ向かった。
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