第59話 空気中に壁あり
「さて、始めるとしようかのう……」
相変わらず胸を揺らすクリム。どうしても胸を見てしまう。俺スケベ化してんじゃね? ヤバッ‼
「我の胸が気になるじゃと⁉ 仕方ない……」
クリムは寂しそうな表情で龍の姿に戻る。手に持っていた剣は口に咥え、熱気をまとって、ホバリング。
〖改めて出走といこうかのう……〗
その姿で戦うのか……。ボスエネミーが、ボスエネミーの姿で、ボスエネミーと戦う……。ややこしい……。
どっちが仲間のボスエネミーで、どっちが十三層のボスエネミーなのか……。あべこべになる。
――ドゥワァン‼
「ん。ボスの声……。気のせいか? 友人かもしれない」
風魔は目を閉じたままで、仮眠にも見えてしまう。寝ているのか? イマイチわからん……。
「いるんだろ? ラルク……。オマエが一緒に行動しないのは、わかってる。だが、せめて顔だけは見せろ」
『あいあい。わかりゃした……。フェイント無し。オイラも暇じゃないから……。さっさと拝んでさっさと消えな……』
変わり者すぎる。ボスなのに消えろって、すんなり行かせてくれる系? クリムのバトル見たかったなぁ〜。
『ついでに、上層まで運ぶから……。こう見えて運搬得意でさ……。本気になれば、1時間で第400層に移動できる。今はめちゃくちゃねみぃけど……。コマンド教えてやるから……』
変わり者っていうか、完全なるめんどくさがり屋。しかも、目の前にすら出ていない。
旅のお供にならないのは悲しいが、移動手段が増えるのは嬉しい。歩くだけでも頭を使うから、もうクタクタ……。
『あーい、おまたせぇ……。ご乗車くださ〜い……。ねむ……』
おまたせと言われても、見えないんじゃ乗れねぇよ。早く手を出せ、脚出せ、顔を出せ。
――ドスンッ‼
「ぐはぁ⁉ なになに、誰かぶつかった⁈」
「ラルク……。ふざけるのはほどほどにしとけ。隊長が混乱している」
ラルクさん⁉ どこ? どこにいるの⁉ 出てきてよぉ〜。
『あいあい……。わーたって……。めんどくせぇなぁ……』
目と鼻の先が色鮮やかに変化する。どうやら、ラルクはカメレオンだったようだ。
「改めて……。ご乗車くださ〜い……。ふぁうぅ……。あくび消えて……。あ……。乗る場所背中のカプセルの中だから、シクヨロ……」
戦わずして上層へ移動。前にも何回かあったが、ここまで重だるいのは初めてだ……。こっちまで眠くなる。
「じゃあ、十七層までお願いしやす……。俺は寝る……」
なぜ十七層を選んだのかはわからない。というより、眠過ぎて頭が働いていない。ラルクは壁を突き破り、外壁を上り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます