第54話 ハトの大群

 凍結と解凍。何回続くんだよ……。もう20回以上もリピートしている。耐久再生のように何度も。

 まるでオーケストラのような秒針のタクト。指揮でもしているのだろうか? 縄跳びになぞらえることができる、決まったリズムの四拍子。


「これだとキリねぇじゃん‼」

『ねぇ、アレン‼ ボクから提案なんだけど?』


 冷気を放ち続ける俺に、雷夜が声をかける。提案ってなんだろう? こればっかりは、予想できない。


『あのね。止めるんじゃなくって、壊せばいいんだよ。ボクとふうにいで……』

「なるほど……。ってことは、一つの剣に二つ取り込むってこと? なんか、面白そう」


 属性を組み合わせる。雷夜が雷で風魔が風だから……。ハリケーンみたいな? 迷わず実践‼ 俺は風魔にも確認。すると、


『雷夜の提案には反対する。まずまず、一つの属性だけで、オマエは手一杯。まだ経験が浅く、感覚をつかみきれていない者に、2属性はおすすめできない』


 率直な意見。率直すぎる意見。たしかに、〈2色の瞳オッドアイ〉は、昨日できるようになった能力。

 反対するのも無理はない。でも、今やらないとバトルは終わらない。全力で交渉を続けて、なんとか許可をもらうことに成功。


 アルスが抜けて、風雷兄弟が剣に宿る。身体を包むのは雷と風。稲妻がとどろき、暴風が唸りをあげる。


「これなら……」


 増幅する相棒の怒り。俺も負けじと制御を試みる。電流が四方八方へ飛んでいき、勢い殺さず悪魔を襲撃。……刹那。


 ――カチン……。ゴーン……。ゴーン……。


 聞こえてくる鐘の音色。時刻を見ると12時を指している。舞踏会でもないのに……。だが、音色はそれだけではなかった。


 ――ゴーン……。ゴーン……。バサバサバサ……。クルックゥ‼


 なぜか分からないハトの声。


 ――クルックゥ‼ クルックゥ‼ ゴーン……。クルックゥ‼


 鐘なのか、ハトなのか……。それはだんだん激しくなり……。


 ――クルックゥ、クルックゥ、クルル……。クルックゥ‼ ゴーン……。クルックゥ‼


「うるさすぎて、集中できないすけど‼ このハトどんだけいるんだよ‼」


 ――クルックゥ、クルックゥ、クルックゥ……。ゴーン……。ゴーン……。クルックゥ……。


「ああもう、しつこいから消えてくれよ。ウザすぎ‼ うるさすぎ‼ 耳が痛い‼ 鼓膜が破れる‼ ゲームだけど‼ ゲームなんですけど‼ 絶対破れるから‼ ってか、どんだけいるんだよ⁉」


 フィールド全体を敷き詰めている、大量のハト。右を見ても左を見ても、目に入るのは全部ハト。


「こうなったら。俺の意識を吹っ飛ばして、暴走してやるっすよ‼ 暴れて、暴れて、うるさい空間はおさらばだ‼」


 制御をやめて、自ら怒りに飲まれる。もちろん、記憶は残らない。こうなってもいいくらい、うるさい空間から逃げたかった。

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