第55話 戦いの後で
「ここは?」
怒りに自らを投じ、意識を失ったはずの俺。目が覚めた場所は、白紙の世界。今の状況がわからない。いったいどこへ来たのだろう。
『おーい、聞こえるか?』
「えっ⁉ だ、誰?」
『よし、しっかり繋がったみたいだな』
声はするが姿は見えず。存在するのは俺1人。聞き覚えはあっても、確定とは言えない。
『ま、普通ならそういう反応するよな。第12層踏破おめでとう。私だ。これでわかるんじゃないか?』
「もしかして、ルグア?」
『そうだ。声だけですまない。通信魔法だからな。無線通信と言えば簡単か……』
でも、ルグアがいるの第50層だよね? 今ここ十二層……。おめでとうってことは、バトル終わってるの?
って、どうして十二層にいるのがわかるんだよ⁉ 居合わせていないよね? 不自然なんだけど。
『勘だが……』
「あ、相変わらずっすね……団長……」
あんなに離れても勘が働くって、情報収集の速さに度肝を抜かれる。ルグアの本気は絶対ヤバそう。
本人が本気って言っても、100パーセントじゃないと思う。それよりなんで、通信魔法で俺に?
『んじゃ、本題に入るとするか………』
発言に合わせて吹いてくる、黄金色の風。ルグアが放つオーラの証。やっぱり理由ありなんだ。
『まずは、仲間が増えたことだな。どうだ? 協力し合う気持ちは?』
そりゃ楽しいの一言しかない。初めて協力したのは、紛うことなきルグアだが、3人以上でのバトルは最高だった。
『だろ? あとは……。どうやら新しい能力を手に入れたと、風の噂で聞いたんだが……』
「実は俺、属性強化ができるようになったんすけど……。〈
『そうか。私も属性強化は可能だが、種類が違うようだ……。どちらかといえば、属性を直接私に付与させるからな。慣れていないお前には合っていると思う』
いろいろが完璧なのに全能ではないのは、なんの変哲もないただの人間だということ。全能だったら、怖すぎる。
世界を制圧しようと強行突破して、為す術なく倒されるくらいなら、彼女が知らないこともあっていいじゃないか。全てを手に入れるのは間違えだ。
『確かにその通りだな。私が知らなくても、お前が知らないことでも、いずれ意味がわかってくる』
「ですね。俺も、もっとルグアのことが知りたい。頑張って迎えに行くよ」
『おっ‼ それなら、楽しみにしておくか……。ファイト‼ アレン‼ みんなにもよろしくな‼』
この会話で通信が途切れ、気がつけば第十二層のボス部屋。心配そうに見つめる仲間が、口を揃えて「おかえり」とささやく。
俺も「ただいま」と応え、第十三層に向けて歩き始める。ルグアと再会するために……。
◇◇◇第十三層◇◇◇
「なんか湿気がすごい。ジメジメしてて気持ちいいぃ‼」
「雷夜君よかったですね」
「よくねぇじゃん。蒸し暑いんだけど‼ 沼地なのに、日光ヤバ‼ ぬかるみで足取られるし、歩きづらい」
〖まあまあ、よいではないか、アレン殿〗
「クリム飛んでんじゃん‼」
のっそり進むアレン一行。まだまだ先は長い。第50層まであと37……。
「オマエら、こんなとこで騒ぐな。沈んだら、自分で対処しろ」
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