第52話 事故発生⁉

 ◇◇◇アレン目線◇◇◇


「強化終わった。試しに持ってみろ」


 風魔に呼ばれ、俺は足を運ぶ。刀身の色は変わらず真紅の赤。強化してもらった〈クリムゾン・ブレード〉を手に取ると、重さが違うことに気がつく。


「風魔さん。重くなるのは予想ついてたけど、なんで重くなるんすか?」

「単純だ。強化する時、新たなインゴットを追加する。その重さが反映されただけ」

「なるほど」


 現実でどうなのかはわからないけど、重さが変わる理由は、なんとなくわかった。でも、インゴットって何?


「金属の延べ棒」


 勉強なりやす‼ 俺は受け取った剣に「おかえり」と言って、素振りの準備を始めた。

 重くなったことで、遠心力のかけやすさに好奇心が湧くが、重いものは重い。いつ振り回されても、おかしくないと思う。


「早速行くっすよ‼」


 勢いをつけて振りかぶって、旋風を巻き起こす。足のステップに悩まされるが、剣に認めてもらった分、楽になったような、いないような?

 そんなことはどうでもいいから、素振りに専念する。相棒と心を通わせる。後日聞いたが、属性強化をした時、〈2色の瞳オッドアイ〉になっていたとのこと。自覚症状はない。


『アレン。みんなと合流する』

「了解しやした‼」


 仮想バッグに武器を片付けて、雷夜達のところへ向かった。


 ◇◇◇その頃、雷夜達は◇◇◇


「大変なことになっちゃったよぉ〜⁈」

「そうですね。雷夜君」

「アルスちゃん、ボクに対してフレンドリーなってない?」

「別にいいじゃないですか。急いでどかしましょう」


 どうしてこうなったのかというと、〈レイベル酒〉を作るために、専用の薬草を取りに行く途中で、事故に遭ってしまったのだ。

 このフロアは稲作等が盛んで、ゲーム内でもトラクターが走っている。ボク以外にも、農家として活動していた。


「まさか、仮想空間でも事故が起こるなんて、理不尽よ。ゲームなんだから、事故は無くていいじゃない‼」


 チェリスが投げやりになって、田んぼで横転したトラクターを、強く蹴りつける。ガタンと揺れてより深く埋もれた物は、持ち上げるのも一苦労。

 すると、


『おまたせ、今戻りやした‼』


 一夜明けたアレンの声。以前と比べて生き生きとしている。きっと嬉しいことがあったんだ。


「〈クリムゾン・ブレード〉強化してもらいました‼ 風魔にも認めてもらって、今日は絶好調っすよ‼」

 〖それは、大したものじゃな。日々成長。忘れるでないぞ〗

「はい‼」


 クリムにほめられて、とても嬉しそうなアレン。なんだか、ボク達も笑顔になれる。


「さ、第十二層のボスも終わらせるっすよ‼ 着いてきてください‼」


 上機嫌の少年は、たった一人で重機を戻して、少し移動させると、メンバー全員を先導するかのように歩きだした。

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