第47話 オークとポーク

 頭をさすりながら立ち上がる。猪突猛進の勢いで、扉はすでに開いていた。

 中で待ち構えるボスエネミー。二足歩行で棍棒を振り回している。ゴブリンではない。これは……。


「ポークですね」アルス

「ポークだね」雷夜

「ポークだわ……」チェリス

〖ポークじゃな〗クリム

「オークだよ‼」俺


 なんていう会話なんだ。大喜利じゃん。何ボケてんだよ、みんなは……。それよりも、ボスを倒さないと……。

 仮想バッグから〈クリムゾン・ブレード〉を取り出す。もう一つルグアからもらった武器があるが、今持っている剣の方が手に馴染む。

 ずっとこの剣を使いたい。手放したくない。今では大事な相棒だ。ルグアも使っていた剣だから。


「十一層も終わらせて、じゃんじゃん攻略。OK?」

「「はい‼」」


 俺の号令で、巨大なオークを囲むように散らばる。雷夜は投擲とうてき用の小刀。アルスは杖。チェリスは……、ボウガン?

 クリムは戦えないから、至近距離で戦うの俺だけじゃん‼ 他のみんなは遠距離武器‼


 まあ、いいか……。剣を構え、敵との距離を詰めていく。皮膚を掠めるくらい近づき接触に合わせて左斜め上の回転斬り。

 昔の糸が巻かれたコマを回す時の、傾き具合い。オークは向かってすぐ左。正面から突っ込んだ攻撃が敵の皮膚をえぐる。


「アレン‼ どんどん投げてくよ‼ えいっ‼」


 後方から聞こえた雷夜の声。飛んでくる小刀が、雷をまとったまま敵に吸い込まれていく。


「あたしもいきます‼」


 今度はアルス。氷の弾丸が敵の足元を凍らせ動きを封じる。無言のチェリスも止めどない射撃。

 オークは遊び道具になっていた。これでいいのかよくわからないが、楽しめているならそれでも良い。


「俺も本気でいくっすよ‼」


 剣の炎を燃えたぎらせて、烈火のごとく舞いおどる。炎はキレイなあ螺旋らせんを描き敵を包み込んだ。


「あんた、なかなかやるじゃない。見直したわ。そのままやってしまいなさい」

「そんなんわかってるよ‼ 一歩間違えたら……。俺は……」


 剣に飲み込まれる。今抱える恐怖の一つだ。飲まれたら、仲間に危害を与えるかもしれない。恐れる前に倒す。

 頭の中にあったのは、恐怖とのせめぎあいだけ。一心不乱に剣を振る。自分の意識が途切れる前に……。


「アレンさん。お手伝いします」


 アルスの援護。とても助かる。剣を振る。たった一つのことに集中して、敵を仕留めた。


「おつかれ〜。かっこよかったよ♡」

「あ、ありがとう……。雷夜……」

「相当疲れているようね。わかった。十二層は明日からにしましょ」


 気遣きづかってくれる仲間。支え合いの力ってすごいんだなぁ〜。感心して集中が切れたのか、その場に倒れ込んでしまった。

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