第44話 チェリス‼ チュリトス⁉

「見てて面白かったぁ〜。アタシも一緒に行動して良い? お兄さん?」

「べ、別に大丈夫っすけど……」


 お兄さんって言われたの、第2層のガロン以来じゃね? そう言われると恥ずかしいなぁ〜。


「ありがとう。改めて、アタシはチェリス。この名前は、大好物のチュリトスから文字ったのよ」

「は、はぁ……」

「もっと、関心くらい持ちなさいよ」


 ……俺、甘い系苦手なんだよなぁ〜。チュリトスって何? 食べたことないから、わからないんだけど……。


「まあ、いいわ。アタシに絶対服従なさい」


 上から目線……。ボス倒したの俺だよ? 普通なら俺に慕うよね⁈ そうだよねぇ? なんでこうなるの⁈


「チェリス姉さん。服従を求めるならボクにしてよ。ボクは雷夜。で、背の高い男の子はアレン。女の子の方がアルスだよ」


〖雷夜殿、我を忘れておるのでないかね? 我が名はクリム。この者達と、仲良うしてやっとくれ〗


 クリムがひょっこりと礼をする。ドラゴンなのに礼儀正しい。過去に茶道をやったことがあるが、先生に注意されてばかりの俺には無理。思えば、ただのこじつけだ。

 できないものはできない。ずっと考えていたことだが、挑戦するも一理ある。何事も経験から。ルグアが通ったであろう道。


「まずは、十一層まで運んでもらえる? お駄賃50万エレメントよ」

「は、はい……」


 俺は剣を仮想バッグにしまい、チェリスを背負う。雷夜の協力のもと、階段を通ってジャングルの十一層へ。


「次は、この階層のボス部屋に案内して」

「りょ、了解しやした……」


 なんかこき使われてない⁈ 召使いとか、小間使いじゃないんだからさぁ〜。ってか俺、男だよ⁉


「早く行きなさい。さもなければ、エレメントは全没収よ」


 それは嫌だ‼ エレメントは欲しい‼ 武器強化に使いたい‼ でも、どうやって探せば……。


 俺は耳を澄ます。聞こえてくるのは、似たり寄ったりの風の音。ルグアみたいに聞き分けることができない。


「アレン‼ ボクから提案なんだけど……。オーラが見えるんでしょ? 風のオーラを見るのはどうかな? 多分、役立つと思うよ」


 なるほど。風のオーラを見るのか。早速試してみると、目に入ったのは、色が少し違う緑色だった。


 その中に、一つだけ黒が混じった緑。以前第6層のボスと戦った時も、黒や赤色のオーラが見えた。多分これを追えばいいのだろう。

 俺は、チェリスを背負ったまま、黒く濁ったオーラの方向へ歩き始めた。もしかして歩きたくないんじゃね? そう疑問に思いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る