第43話 vs大ムカデ

 ◇◇◇第十層◇◇◇


「ボス部屋、ボス部屋……。あぁ~。もうどこにあるんだよ⁈ ルグアがいないからわからねぇじゃん‼」

〖こっちじゃよ。アレン殿〗

「この声は……。クリムさん‼」


 ふわふわと空中でホバリングをする、茜色のドラゴン。そのドラゴンを走って追いかける。横を見るとアルスや雷夜の姿。


「ソロかと思ったけど助かった……。よかったぁ〜」

「ボク心配だったよ。急にアレン以外のメンバーが消えたんだもん。でも、アレンだけでも合流できてほっとした……」


 隣で走る雷夜は肩を撫で下ろし、安堵のため息をつく。そんなに心配してくれたんだ。持つべきものは仲間。そうだよね。


「アレンさん、まもなく到着しますよ。あたしと雷夜も共に戦います」

「えっ⁉ その身体で?」

「はい。固有武器があるので、貸し借りは不要です」

「アレン。ボク達も頑張るから、指示は任せたよ♡」

「了解しやしたぁ‼」


 俺が判断して戦うのか……。上手く指示できるかな? ノリで頷いちゃったけど……。


「あれ? アルスちゃん。ボス部屋の扉開いてるね……」


 雷夜の一言で前を見ると、開きっぱなしの大扉。誰かが入っているのだろうか? 三人プラス1匹で中に入る。


『な。なによこれ……。強すぎるじゃない……。誰か手伝ってぇ〜』


 聞こえてきたのは女性の声。どうやら苦戦しているようだ。俺は急いで駆け寄り、ボスと女性を引き剥がす。


「大丈夫っすか? えーと、名前は……」

「チェリスです。た、助かったぁ〜」


 チェリスという女性は、大の字に寝そべり疲労困憊。チェリスのことはクリムに頼むことにして、俺は〈クリムゾン・ブレード〉を装備。

 ルグアからは控えるように言われたけど、適度に使わないと逆効果になってしまうので、それを踏まえた判断だ。


「アルスさんは敵の後方に。向きが変わったらその都度移動を」

「承知しました」


 まずは、後ろの陣取り。次は……。


「雷夜さんは俺の後ろから」

「りょーかいです。任せて♡」


 メインの注目ヘイト部隊。しっかり前衛と後衛でバランスをとる。敵は、大ムカデ。なんでムカデ? どうでもいいか……。

 毒攻撃があることを視野に入れて、無数の脚に刃を通すが、鋼のような硬さに苛立ちを感じる。


 アルスは氷属性の魔法で攻撃。雷夜も雷電を起こして加勢するが、歯が立たない。ん? 氷……。解かせば水……。沸騰させればお湯……。

 確か、ムカデは熱湯をかければ即死だったはずだから。アルスと俺が上手くやりさえすれば……。これいけるんじゃね?


「アルス‼ デッカイ氷って無理っすか?」

「可能ですが、なぜ氷を……」

「いいから。お願いします。どうなるかは、見てのお楽しみっすよぉ〜」


 アルスは不審に思いながらも、大ムカデの頭上に巨大な氷を生成する。そこに俺が剣の炎でビームスラッシュを放ち、氷を解かして熱湯になるまで温度を上げる。


「雷夜さん‼ 電流をこのお湯に‼」

「りょーかい‼」


 雷夜にも指示を出して、ふつふつと沸騰するお湯に電流を流し破裂させる。ブシューと噴き出した熱湯は全て大ムカデにかかって、死亡エフェクトのポリゴンが舞い散った。

 すなわち、作戦が成功したのだ。


「アルスさん、雷夜さん、お疲れ様」

「うん‼ アレンもおつかれ♡ 面白い発想だったね♡」

「ただ駆除の仕方を再現しただけ、なんすけどね」


 三人でハイタッチすると、クリムのところへ向かった。

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