第38話 雷撃の嵐

「剣に憑依ひょういするってマジかよ。こんなこともできるって、面白すぎじゃん‼」

「そんなんどうでもいいから、手伝えよ‼ アレン‼」

「は、はい……」


 さっきと何かが違う。前まで俺の剣は焼けるくらい熱かった。でも、今は痺れるような感覚。

 炎ではなく雷。属性が変わったのだろうか? 力を込めると稲妻が走る。これってつまり……。


 ――ビュシューン……。


 剣を振ってのビームスラッシュ。赤やオレンジの炎ではなく、黄色い電撃。良いことを思いついた。


「フォルテ‼ ちょっと良いっすか?」


 俺は一度フォルテに後退してもらう。それから、ビームスラッシュを連発させて、鏡に反射。一面電流が支配した。

 感覚ではリズムゲーム。タイミング良く、テンポ良くビームを放つ。でも、なんだろう? だんだん痺れが酷くなっていく。


「これって……、前にも……同じ……ことが……」


 俺は、意識を失った。


 ◇◇◇フォルテ目線◇◇◇


「おい、アレン‼ 急にどうしたんだよ⁉ ん? なんだ、これは……」


 オレは、宙に浮き始めたアレンを見つめる。様子がおかしい。正面に移動すると、アレンの瞳が黄色く光っている。

 状況の把握ができないため、急いで明理との接続を開通させると、必死に呼びかけて、現状を説明。


『まだ早いと思ってたのに……。クリムがアドバイスしたから……。悪気はないと思うけど……』

〖すまんかった。我も忘れておったわい〗

『良いの。慣れれば大丈夫。私もそうだったから』


 ここまで冷静だとは思っていなかった。経験者は語るとはこのことか……。雷鳴の中で、静かにアレンを見守る。


 ――グウォーン‼ ガシャンッ‼


 雷鳴の轟音が、ボス部屋の中で反響する。鏡も共鳴して音を弾き、次々と割れていく。5分後。音は全て消え、オレは力尽きて落下するアレンを受け止めてから、明理と交代。


『明理。あとは任せた』

「OK‼」


 ◇◇◇アレン目線◇◇◇


 なんか、身体が重い。ずっしりとしている。目を開けると、フォルテの顔。いや、オーラが違う。ルグアに戻ったのだろう。


「大丈夫か?」


 相変わらずの俺口調。心配してくれたのはちょっと嬉しい。でも、自力で起き上がることができなかった。


「アレン。その剣は、いざという時だけで良い。しばらく持つのはやめておけ‼」

「ど、どうしてなんすか? 記憶も無いし……」

「だからだよ。メインで使うには早すぎる。こいつもくれてやるからさ。武器が無けりゃ意味無いだろ?」


 すっと渡された、神剣〈レヴェネス・ソード〉。実は、ランサーを辞めることにしていたので、受け取らなくては戦えない。

 ほんとは断りたかったが、俺は素直に仮想バッグへ入れた。〈クリムゾン・ブレード〉を使いこなすには、修行も必要かもしれない。


「みんな‼ 第九層に行こうぜ‼ さっさと終わらせて、今夜はうたげだ‼」

「「了解しました‼」」


 息ぴったりの返答。俺はルグアに抱えられて、冷気に満ちた階段を移動した。

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