第16話 ルグアアンチ
「酸素ゲージの減少軽減装備って、なんすか?」
「ん? シーダンジョン系統のゲームには、必ず存在する便利アイテムだが……。知らないのか?」
シーダンジョン⁈ 俺、泳ぐの苦手。カナズチ、潜水無理‼ 遊んだこともないし‼
っていうか、名前長っ‼ もっと覚えやすい言い方、なかったのかよ……。
「そうか……。なら、この2つはルナとアレンの二人で使ってくれ。私は何とかなる」
何とかなるって、ほんと大丈夫なの‼ 神死んだら、このゲームクリア出来る人、いなくなっちゃうじゃん。
「安心してくれ。酸素ゲージなくなっても十六時間なら大丈夫だ。ただ、その間に抜ければ問題ないんだが……。このダンジョン。道が見えなければ、風もねぇ……。参ったな……」
「完全なる"ルグアアンチ"ですね」
なんていうことだ。
「ほらさっさと行くぞ‼ 今回は相当時間かかるだろうが……」
――シュパーン……。
「なんだ? この音は……」
どこかで何かが弾ける音。ルグアを追いかけ音のした方へ走ると、着いた先には泣きじゃくる一人の少女。
『お姉ちゃんが……。ゲームオーバーしちゃった……。お姉ちゃん、死なないで……。誰か……。助けて……』
どうやら攻略中に少女の姉が、HPを全損してしまったようだ。ルグアが急いで駆けていく。
「なあ君。今、ゲームオーバーしてどれくらいだ?」
「に、2分です……。もしかして……」
「わかった、私に任せてくれ」
ルグアは、床に魔法陣のようなものをものすごいスピードで書き始める。
このゲームファンタジー要素も満載なんだ……。魔法陣って異世界とかだけのやつだと思ってた。
「これでよし‼ えーと、今のHPは……。70使っても問題ないな」
ものの数分……。いや、たったの数秒で魔法陣が完成。最後に姉に与えるHP量を書き足す。
ん? 待てよ⁉ さっきルグア『70』って言ったよね⁉ ルグアの最大HPが100だから、残るの30だけじゃん‼
「これを発動させて……。と」
なんて仕事の速さだ。止める間もなく終わっちまったじゃんかよ……。ルグアのHPは急激に減少し、少女の姉に流れ込む。
「……。こ、ここは?」
魂だけとなっていたアイコンがアバターに変化して、倒れていた姉が目を覚ました。
「無事、成功だな。最後に回復魔法で仕上げして……。もう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます‼」
泣きじゃくる妹は涙を拭い、頭を何度も下げる。さすがだ。ルグアは万能すぎる。判断も即決だし。
「君達、お名前は?」
ルナが優しく二人の少女に語りかける。一体何をするのだろうか? 目の前の二人は顔を合わせると、
「改めて、助けてくださりありがとうございます。姉のラミアです。で、こっちが妹の」
「ファリナです」
「ラミアとファリナ……。可愛い名前だね」
なんで、名前を聞いたのだろうか……。ってことは、ここから発生する展開は……。
「二人とも、一緒に行動しないか?」
ですよね~。100パーセント人助け‼ 人助けからの人助け‼ もちろんウェルカム、ウェルカム‼
「良いんですか? ありがとうございます。よろしくお願いします‼」
こうして、新たにメンバーが加わった。俺、ルグア、ルナ、クリム、ラミア、ファリナ。合計五人と一匹。
これがほんとのロールプレイングゲーム。楽しいけど、ゲームオーバーした人見るとめちゃくちゃしんどい。
そう思いながら、迷路と想定して攻略を再開した。
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