第16話 お前は自分で思ってるより!可愛いんだから!
次の日。
朝、ハルは少し早めに学校に着いていた。
そして……。
ハル[(よし!ウヅキが来たら、昨日のコトちゃんと謝ろう!……あたしを心配して言ってくれたんだもんね…………まだ来ないかなぁ……?って、まだちょっと早いかッフフッ)]
そんな事を考えながら、1人席に座り待っていると。
ガラガラ……。
戸を開ける音が聞こえた。
男子[おはよー!]
ハルは直ぐ様、挨拶を返す。
ハル[おはよー!ウヅ……]
ユズキ[おはよー!ハ~ルちゃんッへへッ(笑)]
ハル[ユ、ユズキ……君……ど、どうしたの?朝から……?(声似てて……ウヅキだと思っちゃった……)]
ユズキ[いや~ハルちゃんの顔見たくてさッ!朝から来ちゃった~(笑)]
ハル[え?]
座ってるハルの席の前に行くユズキ。
正面に立ち……笑顔で、グッと顔を近付ける。
ハル[えッ!?……(わッ!……な、何!?……てか!顔近ッ………………あ……肌キレイ……)]
だんだん……ハルは顔が赤くなり……。
恥ずかしくなって目をそむける。
ハル[(見とれてる場合か~!)ち、近いよッユズキ君ッ……な、なに?]
ユズキ[あ!ゴメンッゴメン(笑)本当にあのハルちゃんなのかなぁ~って思って、まじまじ見ちゃった(笑)]
ハル[ほ、本当にハルですよー……]
ユズキ[うん、そーだね!本物のハルちゃんだった(笑)いや~ただビックリしちゃったんだよ、だってハルちゃん……何て言うか……小中と……容姿も性格も暗い感じになっちゃってたから、だからゲーセンで会った時もハルちゃんだって分からなかったんだよね、ははは(笑)]
ハル[……ま、まぁ……そう言うコトは……よく言われます……ははは……(笑)]
ユズキは微笑みながら、もう一度ハルをまじまじ見る。その視線が気になり、ハルもユズキを一瞬チラッと見た。
ハル[(……ッ…………な、何?……この笑顔と無言……)]
ユズキ[…………ハルちゃん本当に可愛いね]
そう言うと……ユズキはハルのアゴをクイッと上げ……ゆっくりと顔を近付けてきた。
ハル[!(え!?何!何!?…!?……)]
そこへ。
ガラガラ!
ウヅキ[…………]
ウヅキが教室へ入ってきたのだ。
ウヅキは……無表情で。
ウヅキ[……何やってんの]
慌てて、ハルがユズキの手を祓う。
ハル[ち、違うの!こ、これは!]
ユズキ[ハルちゃんとキスしようとしてた(笑)]
ハル[!]
ウヅキは一瞬ピクっとなったが……それでも無表情で。
ウヅキ[……あっそ]
とだけ言って席に着いた。
ハルが立ち上がり、ウヅキの方へ行こうとした時、他の生徒達が次々と教室へ入って来た。
男子A[おはよー!]
男子B[おっはよ~!アレ~?田口弟じゃん]
ユズキ[おはよーございまーす(笑)]
女子A[おはよーあ、田口君の弟君だ~(笑)]
女子B[はよ~……お!お!田口弟~何でいんの~!(笑)]
ハル[…………]
教室が騒がしくなってきた。
ユズキ[あはははッちょっと騒がしくなって来ちゃたから~俺行くね~またね~ハルちゃんッ(笑)]
ハル[……あ……]
女子B[え~弟君もう行っちゃうの~]
女子A[そーだよ~まだ、いなよ~(笑)]
ユズキ[あはははッいや~俺ちょっと用があるんで~また、来ますね(笑)]
女子B[わかった~また、必ず来てね~(笑)]
ユズキ[了解でーす(笑)]
ユズキはそう言うと、そのまま教室を出て行った……。
教室内はガヤガヤしたまま……ハルはウヅキと話すチャンスを逃してしまった……。
授業中。
ハル[……(何だったんだろ…………てか……ユズキ君……何でいきなり……あんなコト………キスしようとしてた?って何!?……え~~!?…あ~~何で?どうしてこーなるの?……ウヅキに絶対に勘違いされてるよね~~あーーーーもーーーー…………)]
頭を抱えグシャグシャにしながら下を向くハル。
すると……。小声で。
女子C[……谷川さんッ、長谷川さんッ]
ハル[………………え?]
女子C[先生に当てられてるよッ]
ハル[……!(あ、ヤバッ……全然聞いてなかった…)]
先生[長谷川……どうした?頭でも痛いのか?]
ハル[……あ……そ、そーなんですッほ、保健室行っても良いですか……?]
先生[……そうか、なら仕方ないな……行きなさい]
ハル[……はい……すみません]
女子C[長谷川さん……大丈夫?]
ハル[う、うん……大丈夫]
そう言うと、ハルは教室を出た。
ハルは教室を出る前に……ウヅキをチラッと見たが……一切目を合わせてくれなかった……。
ハル[はぁ~…………(何でこうなっちゃうのよ……)]
ハルはトボトボと保健室へと向かった。
コンコン。
ハル[失礼しまーす……]
保健室の先生[はーい、どーかした?]
ハル[……あ……いや……頭が痛くて(嘘)]
保健室の先生[そぉ……じゃぁ一応熱計ってみるから、はい、体温計]
ハル[……ども]
ハルは体温計を挟みしばしまった。
ピピピッピピピッ
先生に体温計を渡す。
保健室の先生[36.5℃か……熱は無いようね、どうする?ベッドで寝てく?今なら、どのベッドでも寝放題よッ]
ハル[寝放題って……あ……それじゃぁ……ちょっと寝ててもいいですか?……]
保健室の先生[どーぞ無理しちゃダメだしね]
ハルはベッドで少し休ませてもらう事となった。
横になるハル。
ハル[ふぅーー……(…………せっかく……ウヅキと仲直りしようと思ってたのに……ますます気まずくなっちゃったよ…………それにしても…………ユズキ君……何であんなコト……言ったんだろぅ…………)]
窓の隙間から風が入り込み……カーテンが優しく大きく膨らむ。
ハルは風を感じながら目を閉じる。
ハル[(あぁ…………風が気持ちいい…………何か……考えるの……疲れたぁ……………………)]
そのままハルは……いつの間にか眠りにつていた………。
しばらくして…………ベッドのカーテンを静かに開ける音が微かに聞こえた……。ハルは夢と現実の間だった……。
ハル[……ん……ん……]
その時……ハルは唇に何かが優しく当たる感触を感じた。
ゆっくりと……うっすら目を開けるハル……。
ハル[……ん……(誰……)]
目は、ボヤけていたが……目の前に誰が居たのは分かった…………ハルは、まだ眠気があり……一瞬3秒ほど目を閉じてしまっていた……もう一度目を開けた時には……男性の去る後ろ姿が見えた……。ぼんやり……ではあったが、背丈、髪型でウヅキかもとハルは思った。
ハル[(アレ……今のって…………ウヅキ……?……何か……今……唇に……当たってたような……)]
ハルが自分の唇を触る……。
ハル[(…………ウヅキ…………)ウヅキ!?]
バッと起き上がるハル……
が……そこには誰も居なかった。
バタンッ……と後ろに倒れ横になるハル……。
ハル[(夢かな………………アレ?)]
チラッとカーテンを見た……。
ハル[(…………カーテン…………少し……開いてる……)]
またまた、バッっと起き上がるハル。
ハル[(夢じゃない!……やっぱり今……ウヅキが来てたんだ!ウヅキに……会いに行かなきゃ!会ってちゃんと謝って…………朝のコトも……ちゃんと話したい!…………って今何時!?)]
ベッドから降りて時計を見るハル。
ハル[(……え~昼休みじゃん!どんだけ寝てたの~あたし!……)先生!…………あれ?…………ってそっか……昼休みなんだった……そりゃ……先生もお昼ご飯食べに行ってるよね……]
急いで教室へ向かうハル。
教室の戸を開け周りを見渡す。
ハル[(あれ……ウヅキが居ない……)]
女子C[あ、長谷川さ~ん!もう大丈夫なの?]
ハル[あ、うん、あの、ウヅキ見なかったッ?]
男子A[あ~俺見たよ!田口なら昼休みなって、直ぐに教室から出て行ったけど]
ハル[わかった!ありがとう~]
そう言うとハルは直ぐ様、教室を出た。
ハル[(ウヅキ……たぶん……屋上だと思う……)]
急いで屋上へと駆け上がるハル。
そして、扉を力いっぱい押す。
ハル[ん~~~相変わらず~~この扉~~お~も~い~~~!]
すると、扉が急に軽くなり、勢い良く空いた。
ハル[きゃッ!]
ゴンッ!!っと扉に頭をぶつけるハル……。
ハル[………ッ………痛ッた~~~……]
頭を抑え……かがみ込むハル…………。
すると……扉の取手を掴みながら……ウヅキが…。
ウヅキ[…………何やってんの?お前……]
ハル[う~~痛いよ~ぉ……]
ハルが頭を抑えながら見上げた。
ハル[………あ!ウヅキ!ウヅキ!ウヅキ~!]
飛び上がるハル。
ウヅキ[……わ、分かったって……うるせーよ……ハル……]
ハル[ゴ、ゴメン………………]
ウヅキ[………………プッ……あははははッ(笑)お、お前ってホント学習能力ねーのなッあははは(笑)お、同じ事を前にもやってたろッ(笑)あはははッ]
ハルは頬っぺをプク~っとさせて。
ハル[ウヅキ笑いすぎッ!別にやりたくて、やってるわけじゃないしッ!……そ、それにウヅキが悪いんじゃん!急に開けるからッ]
ウヅキ[いや、俺は戻ろうと思って扉開けただけだし、どっちかって言うとハルのタイミングがいつも悪だけじゃね?(笑)]
ハル[ん~~~ッそ~やって~バカにして~]
ウヅキ[はははッ(笑)バカにはしてねーよ悪かった(笑)]
ハル[もぉ~~!………………あ……そーじゃない……]
ウヅキ[?]
ハル[謝るのは、あたしの方だよ……]
ウヅキ[何が?]
ハル[……あの……あたしさ……【運命】みたいだねなんて気軽に使ってたでしょ……それをウヅキが注意してくれたじゃん……なのに……ちゃんと……ウヅキに謝れてなかったから…………その時、理解出来なかったけど……後から理解して……あ、あたしの為に言ってくれてたんだよね!?……だ、だから……ゴメンねウヅキッ!]
ハルがウヅキに頭を下げる。
ウヅキ[…………あ…………まぁ…………でも……俺も……キツい言い方……して……悪かった……って後から反省してて…………たから……俺も……ゴメン]
ウヅキもハルに頭を下げた。
ハルは目をパチクリさせた後……。
ウヅキに飛び付いた。
ハル[ウヅキ~~大好き~(笑)]
ウヅキは顔を赤くさせながら。
ウヅキ[お!お前!そ、それだよッそー言うのもだッつーの~!]
ハル[フフフッ(笑)今は気にしないッ気にしないッ(笑)仲直りのハグだよッ(笑)]
夏場で薄着のため、ダイレクトにハルの大きな胸の感触が伝わる。
ムニュッ。
ウヅキ[……ッ……お、お前ッむ、胸が……( めちゃくちゃ当たってんだよ!)]
ハル[え~何ぃ~?フフフッ(笑)]
ウヅキ[何じゃなくて!]
ウヅキは文句を言いながらも嬉しそうだった。
ハル[あ!]
ウヅキ[……え…何?まだ何か?]
ハル[そぉ……あの今朝のコトなんだけど……]
ウヅキ[あ~ぁ……]
ハル[アレね!ユズキ君が勝手に言ってたコトなの!あ、あたし!キスなんてしようとなんてしてない!]
ウヅキ[だろうな]
ハル[え?]
ウヅキ[知ってたよ……アイツがやりそうな事だ]
ハル[……でも、なんか怒ってたでしょ……?]
ウヅキ[別に怒ってねー……ただ、あー言う行動して、俺をおちょくって来るアイツにムカついてただけ]
ハル[そぅ……なんだ]
ウヅキ[……でも……なんで今日、学校来るの早かったんだ?]
ハル[それはッ……早くウヅキに謝って仲直りしたかったから……]
ウヅキは少し恥ずかしそうに。
ウヅキ[……そっか………………ところで…………ユズキと……何ぃ……会話してたんだ?……]
と言ってチラッとハルを見るウヅキ。
ハル[……会話って言うか…………ユズキ君が……あたしに会いたかったらしく……突然教室に入ってきて……本当にあのハルちゃんなのかなぁ~って……顔をまじまじ見られて…………その後……………]
声が小さくなるハル。
ハル[……ハルちゃん本当に可愛いねって……アゴをクイッて………されて………あの状況…………でした…………です……]
ウヅキ[ふーーーんッ…………ってか!お前は隙がお・お・す・ぎ・るッ]
ハル[え………あ…………はい……すみません]
ウヅキ[ったく……少しは自分の可愛さ………………]
ハル[…………え]
ウヅキ[…………]
ハル[……いま……なんて?]
ハルとウヅキ双方とも少しずつ……顔が赤くなる。
ウヅキ[…………な、なんでもねーよ]
ハル[……で、でも、ウヅキ……今……可愛さ……って]
ウヅキ[……ッ……あーーーもう!そーだよ!お前は自分で思ってるより!可愛いんだから!もっと自覚持った行動しろよってコト!]
ハルが一気に耳まで赤くなる。
ウヅキも真っ赤だ。
ハル[…………は、はい……]
ウヅキ[…………ッ…………ほ、ほら!時間ねーから行くぞッ]
手をウヅキに引っ張られながら階段を下りるハル。
ハル[……う、うん……そ、そーだね……ははは……(あ、あれ~?……あと何か……聞きたかったコトが……あったような……ははは……何だっけ……)]
ウヅキ[(ったく……こいつは……ホント自覚ねーしッ隙だらけだし……無防備だし…………保健室でも……あんな寝顔しやがって…………アレにも……気付いてるわけねーか……)]
ハル[(あれ~?ちょっと思考が提出してる~あたし~はは……)きゃッ!]
ウヅキ[わッ!……お、おいッちゃんと歩けよッ手引いてる俺までコケそうになるじゃねーか……]
ハル[あははは~……ゴメンゴメン(笑)]
ウヅキ[はぁ~]
そんな様子を……ユズキが薄笑いをして見ていた。
ユズキ[ふ~~ん……(仲は崩れない……か……) ]
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