第10話 やってしまった……


事件後、学校へ登校するようになってから、更に数日経ったある日。


ハル[(あれから…………田口君と仲良くなれたと思ったのに……逆に話してくれなくなったような…………もっと仲良くなりたいのに……………いやいや!……と、友達として……あくまで友達として!………って誰に言い訳してるの……あたしは……………あ……………そーだ……ゲーセンにでも、一緒に行けば仲良くなれるかも!…………誘ってみようかな?…………………………よし……ちょっと誘ってみよう~(笑))]


ハルは休み時間、田口の所へ行った。


ハル[田口君ッ]

田口[ん?…………なに]

ハル[田口君ってさ~ゲーセンとか行ったりする?]

田口[……まぁ行くけど……なんで?]

ハル[そっかッ!じゃぁ~さ今度あたしと一緒に行かない?……あ、ついでに、ご飯とか(笑)]


その会話に……周りがザワつく。


男子C[え!長谷川さんが……た、田口を誘ってる……]

女子A[え!え!?長谷川さん?]

男子A[うそーー……それって……ずりー田口……]

女子B[それって……デートの誘いだよね……]


皆の小声が微かに聞こえてきた。


ハル[あッ、あッ、あッ、えーとッ(デート!?え!コレってデートの誘い?…って事になるの!?)た、田口君さえ!よ、よ、良ければ!(もーー押し通すしかないーー!)]


ハルの顔と耳は……もう既に真っ赤になっていた。すると、田口は……。


田口[……お、お前な~]


田口にも、周りの声が聞こえていたみたいで……田口も耳が真っ赤になっていた。


ハル[あはは……ど、どーかなぁ(笑)(で、ですよね~!こんな所で誘ったら……ごめんね~田口君!……)]

田口[ま、まぁ、ゲーセンなら行っても良いかな……]


そう言うと田口は一瞬……目を合わせた後……直ぐに横を向いてしまった。恥ずかしかったのであろう。

ハルは意外な反応に目をパチクリとさせた後。


ハル[(いぃんだ!?断られると思った!良かった~)う、うん!じゃぁ~土曜日は?]

田口[別に良いけど……]

ハル[じゃぁ土曜日の10時に○○駅前にとか、どうかな?]

田口[あーそれでいい……]

ハル[うん、りょ~かいッ]


机に戻ったハルは、うつ伏せになりオデコを机にくっつけた……。


ハル[(はぁ~やってしまった……皆の居ない所で誘えば良かった…………)]


そんな事を考えていたハルだったが……今度は伏せていた顔をバッと上げて……。


ハル[(え!てか!デートなの!?コレって!デート!?え?え?まじで!?ど、ど~~しよ~~~!)う~~……]


頭を抱えるハル。

そんな様子を周りが見ていて……。


女子A[長谷川さん……だ、大丈夫かな……(笑)?]

女子B[う、うん……さっきから様子おかしいよね(笑)]

女子C[たぶん、自分から【デート】誘って、恥ずかしくて、あーなってるじゃないの?フフフッカワイイよね~(笑)]

女子D[だねぇ~(笑)青春って感じッ(笑)]

女子A[なにそれ~(笑)]

男子A[ショックだわ~まさか……田口が誘われるだなんて……]

男子B[しょーがねーよ……だって田口、長谷川さんの事を助けたヒーローだし……]

男子C[……だよな~でも、俺はまだ!諦めん!]

ハル[…………(お~い!全~~部聞こえてるよ~やめて~~!)]


そして、ハルは、また、オデコを机にくっつけた。

そこへ、追い討ちを掛けるかのように、カオルが現れた。


カオル[ハル~なにッなにッ(笑)田口君とデートするのぉ~やるじゃんッ(笑)ねーねー?聞いてるの?ハル~]

ハル[……(コイツが居たんだった……忘れてた……シカトしよ……)]


ハルは……顔を上げず無言で、どっか行ってと言わんばかりに、手だけを出して【しッしッ】と言う素振りを見せた。


ハル[(あっち行って……ホント頼むから~今は……ほっといてよ~)]

カオル[ひどいよ~友達でしょ~ねぇ~ハルってば~]

ハル[…………]


その日の夜。

ルイの部屋をノックする音。

コンコン。


ルイ[はーいッ]

ハル[ルイ……入るよ……]


ルイの部屋入るハル。

ガチャ……。


ルイ[ど……どーしたの……お姉ちゃん……な、何かやつれてない(笑)?]

ハル[ルイ~!]


ベッドに座っていたルイに抱き付くハル。


ルイ[えッどーしたの!お姉ちゃん?]

ハル[……ルイ~……あたし……やっちゃったかも……]

ルイ[え?え?どー言うこと?]


ハルは今日の自分のやらかした、出来事を全て話した。


ルイ[なるほどね~~~うん、それは確実にお姉ちゃんから誘った【デート】でしょーね(笑)]

ハル[ぐッ…………だ、だ、だよね……やっぱり……コレはデート……と言うやつだったか…………で、でもね!あたしは、ただ、田口君と仲良くなりたくて誘ったわけでッ別にデートなんて意識してなくて…………]

ルイ[フフフッ良いじゃん!田口君だし(笑)それとも、嫌なの?]

ハル[……い、嫌じゃ……ない……ケド(仲良くなりたいし……)で、でも、デートなんてした事無いし……(男の時だって……女の子とデートした事も無いのに……出来るわけ……)……]

ルイ[うーーん……じゃぁさぁ~……この前助けてもらった、お礼って思えばいいんじゃない?]

ハル[……お礼…………なるほど……お礼!そっか!お礼って思えば良いのか!そ、そーだよね!コレは~お礼だよ(笑)うん、うん!そっかそっか!(笑)あ~何か気が楽になった~(笑)ありがとう~ルイ]

ルイ[フフフッ全然~(お姉ちゃんそれでも、デートはデートですよ~(笑)まぁ本人がこれで、納得したなら~まぁいっか(笑))あ、所で~その日、お姉ちゃんは何着ていくの?]

ハル[え?……服装?]

ルイ[うん]

ハル[えーーとーー…………ちょっと待って]


ハルは自分の部屋のクローゼットに行き……直ぐ様戻ってきた。


ハル[ルイッ!大変!……あたし……ほとんど夏服……無かった……どうしよ……]

ルイ[だと思った(笑)じゃぁさぁ明日~帰りに一緒に買って帰る?]

ハル[いーのッ?うん!ルイが居てくれると心強い(笑)]

ルイ[オッケー(笑)それじゃぁ~お姉ちゃん!早速!父さんにお金貰ってきて~(笑)]

ハル[え!?あたしが?]

ルイ[そーだよ!だって、お姉ちゃんの服を買うんでしょ?だったら自分で言わないと~いつまでも、あたしがお姉ちゃんの変わりに言うの嫌だもん(笑)]

ハル[……でも……大丈夫かなぁ?……]

ルイ[大丈夫ッ大丈夫ッ(笑)たぶん、父さん、お姉ちゃんに言われた方が嬉しいから~直ぐにくれるよ(笑)]

ハル[……そーなのかなぁ?……(男の時の感覚があるから……そう言うの……父さんに軽い感じで言ったこと無いから抵抗があるんだよね……)]

ルイ[ほらッ!お姉ちゃん!早く(笑)]

ハル[わ、わかったよッ……行ってきまーす……]


ハルは……渋々自分で父にお金を貰いに行くこととなった。

父の部屋の前に来たハル。

ゴクリと唾を飲む。

そして、恐る恐るノックをする。

コンコン。


父[はーい]

ハル[父さん?入るよ]

父[どーぞ]


戸をゆっくりと開ける。


ハル[父さん……ちょっといい?]

父[おー!ハルッ何だ?何でも父さんに言ってみなさい(笑)]

ハル[あのーーー……な、夏服が……欲しくて……その……おか]

父[服が欲しいのか!いぃぞ!いぃぞ!ほら、コレ持っていきなさい!(笑)]


渡されたのは……プラチナカードだった。


ハル[え?プラチナ……]

父[何だ?それじゃ足りないか?じゃぁコレも持っていっていいぞ(笑)]


更に渡されたのは……ブラックカードだった……。


ハル[……ブラックカード!………………いやいやいや!……父さんッそんなに高い物、買わないよぉ!しかも、前もだけど未成年にカードって……]

父[え~そうなのか?ハルちゃんには、良い物着せてあげたいのになぁ……父さんショック]

ハル[どこでショック受けてんの…………]

父[でも、父さん現金持ち歩いてないからなぁ……あ!今日たまたま下ろしたんだった!(笑)ちょっと待ってな~]


父はカバンからゴソゴソと紙袋を取り出した。


父[じゃぁ、はいコレ(笑)足りる?]


出されたのは……束になった100万円だった……。


ハル[…………足りるも何も…………コレは…………多すぎでしょ!]

父[えーー?そうなのか?父さん最近の若者の服いくらするかわからないからさぁ~]

ハル[……(どーーーなってる……この父親……)……]

父[じゃぁコレぐらい?]


50万。

首を横にふるハル。


父[じゃぁコレぐらい?(笑)]


25万。


首を横にふるハル。


父[じゃぁコレ……ぐらい?(笑)]


20万。


首を横にふるハル。


父[……じゃぁ……コレ……ぐらい]


15万。


首を横にふるハル。


父[……じゃぁ……]


10万。


首を横にふるハル。


父[えーーー!?絶対に足りないでしょ!]

ハル[全然足りるよぉーー!父さんのか・ん・か・く!おかしいよ!]

父[うーーーん……でも、これ以下は譲れない!]

ハル[(……意味が分からん……以下はって………………はぁ~…………仕方ない…………よくよく考えたら……娘の為にって思ってくれてるからだもんな……)わかったッそれじゃぁお言葉に甘えて、頂きます]

父[うん!父さんもハルちゃんの可愛い姿見たいからね(笑)どーぞッ]

ハル[…………あ、ありがとう父さん(何かゾクッてなった……コレが春期のアレか?まぁ気にしないでおこう……)]


こうして、ハルはお金を貰いルイの部屋へと戻っていった。


ハル[……貰ってきたよー……]

ルイ[お帰り~お姉ちゃん(笑)どーだった?(笑)]

ハル[疲れた……だっていきなりプラチナとかブラックカードよこすんだもん……]

ルイ[あはははッそんなのいつもだよ(笑)]

ハル[そーなの?……はぁ~感覚おかしすぎ……]

ルイ[まぁまぁ(笑)それだけ娘の事が好きなんだよッ]

ハル[まぁ~それは分かるけど……]

ルイ[で、結局?]

ハル[現金持ってたから、現金で貰った……で、この袋の中に……!……(あのオヤジ~)]


結局、袋の中身は50万程入っていたのだった。


ルイ[50万なら全然よゆーだね(笑)]

ハル[はは……そーだね……(今度からは母さんに言おう……)]


そして、次の日、ハルとルイは学校の帰りに、夏服を買いに色々とショップを見て回った。

ルイがアドバイスしてくれたお陰で、買い物はスムーズに終えられた。


ルイ[よし!こんなもんじゃない?]

ハル[うん!ありがとう~ルイッ]

ルイ[どーいたしましてッ(笑)]

ハル[にしても………コレ!買い過ぎじゃない!?]


ハルもルイも……両肩に大きく膨らんだ紙袋を持っていた。


ルイ[え~だって~お姉ちゃんッ何でも似合うんだもん!(笑)]

ハル[似合うからって……着た服、全部買わなくても良いじゃん!]

ルイ[でも、お金使い切ってないしー]

ハル[使い切らなくてイイからッ!]

ルイ[まぁ、まぁ(笑)取り敢えず~帰ったら、土曜日に着ていく服、選ぼうね(笑)]

ハル[……(付き合ってもらったから……これ以上、どーこー言ってもアレだな……)う、うん、ありがとう]


そして、帰って来たハルとルイは、土曜日に着て行く服を選んでいた。


ルイ[お姉ちゃん何着て行きたいとかある?]

ハル[うーん……取り敢えず……涼しい格好が良いかも]

ルイ[オッケ~じゃぁコレなんかは?]

ハル[う~ん、ちょっと派手じゃない?]

ルイ[んじゃコレは?]

ハル[う~ん……ロングスカート……暑いかも……]

ルイ[じゃぁコレ]


そんなやり取りを何度も繰り返し……。


ルイ[も~~お姉ちゃんワガママ過ぎッ暑いのは嫌、派手なのも嫌、動きにくいのも嫌、もぉ~自分で好きなの選べばイイじゃん……]

ハル[は、はい……(だんだんルイも、あたしに馴れてきたのか……扱いがザツになってきてるような……)]


ルイはスマホをイジリ出した。

結局ハルが自分で選ぶ事となった。


ハル[(ルイ……スマホ……イジってるし……あ~絶対に面倒くさいさい……って思われたんだ…………早く決めなきゃ…………シンプルなのがいいなぁ……どーしよう……)ん~~~~~………じゃぁ…………コレと………コレに……コレで………………]


ハルは一生懸命に考えて、そして、恐る恐るルイに、選んだ服装が変じゃないか聞いてみた。


ルイ……こんな感じの組み合わせ…………なんだけど……変……かな?……]


ハルが選んだ服装は……下は、短め【ミニ】プリーツスカート、上は、シンプルにTシャツ【イン】、それに、加えキャップをかぶるスタイルだった。


ルイ[ん?あッうん!うん!良いね!シンプルで~お姉ちゃんらしいよッ]


ホッとするハル。


ハル[うん、じゃぁコレで行く、ありがとうルイ]

ルイ[いいえ~それより、お姉ちゃんッ!あたし今、良い感じの料理屋さんを何軒かピックアップしといたよ~ご飯食べにも行くんでしょ?]

ハル[え?……う、うんッ(ルイ~~スマホずっと見てたから、あたしに愛想を尽かしてたのかと思ってたよ~~う~~なんて優しい妹なんだろぅ……泣けてくる……)本当に何から何まで……ありがとう、ルイ~……]


ハルは嬉しくて胸がキュンとした。

ルイはキョトンとして。


ルイ[え?何が?]


さも、当たり前かのように、気にもしていなかった。

ハルはそんな優しいルイを可愛く思い、抱き締めた。


ルイ[え?なに?]

ハル[エヘヘッなんとなく~(笑)]

ルイ[なにそれ(笑)]


なーんてッ言っていたルイだったが、嬉しそうな顔をしていた。


ルイ[よし!それじゃぁ準備万端!あとは土曜日のデート……じゃなかった……]

ハル[…………]

ルイ[あははッ……冗談だよ(笑)えーと……【お礼】まで、待つだけだねッ(笑)]

ハル[……う、うん……お礼……ね……ははは……]


そして、迎えること当日。


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