第8話 怖かったよぉ


急いで帰宅するため走るハル。


ハル[ハァッ、ハァッ(やばーい!こんなに時間経ってたの~!?)電話しとこう!]


ハルはスマホを確認した。

すると、着信に……ルイ5件、母5件……と着信履歴が表示された。


ハル[(げ!…………ですよねぇ……取り敢えず電話しとかなきゃ!)]


ハルはルイに電話を掛ける。

プルルルー……。


ハル[あ、ハル!ごめーん!]

ルイ[お姉ちゃん!!どこに居るの!?]

ハル[ごめんね!ゲーセン寄ってたら、時間忘れちゃってて!]

ルイ[も~~何やってんの~あたしも、母さんも心配してたんだから!!]

ハル[ごめんッ……母さんにも言っててッ今すぐ帰るからッ]

ルイ[……うん、わかった、気を付けて帰ってきてよ!]

ハル[うん、わかったッ!じゃぁねッ]

ルイ[はーーい]


電話を切るハル。


ハル[ふぅーッ(取り敢えず……コレで大丈夫……でも、もう暗くなったし、急いで帰らないと……あ、でも、もう走れない……さっきので足がガクガクだ……(笑))]


ハルは、ダンスラッシュで足を使いすぎて、走れないでいた。


ハル[(せめて、早歩きで帰ろう……)]


しばらく歩いて。


ハル[あ~疲れた~もう、歩きたくな~い(自業自得か……あ~でも、楽しかったなぁ~……また……会えるかなぁ~ユズキ君……いい人だった……しかも、イケメンだったし~………………また、イケメンに反応してる………………最近変だよな~あたし………………あたし……って……俺でしょ……)]


そんな事を色々と考えながら歩いていたハル。

辺りは、たいぶ暗くなっていた。


ハル[(ん?………………何か…………今…………?)]


ハルは後ろを気にした。が、気のせいかなと、また、歩き出す。


ハル[(あ、ここの公園、横切ると近いんだよね~)]


ザッ、ザッ、ザッ……。

パッと後ろを向くハル。


ハル[(やっぱり!誰かいる!?)]


すると、薄暗くて、顔は見えないが……男らしき人が後ろに居た……。

一瞬で心臓がバクバクするハル……。


ハル[え、……(こ、こっちに近づいて来てるよね…………)]


一歩一歩……ゆっくりとハルの方へ、と近づいてくる男………。


ハル[(怖い……!……に、逃げなきゃ…………])


走ろとしたが……恐怖とゲームのやり過ぎで……足がガクガクで、思うように動かない……。


ハル[(声……出さなきゃ……!……こ、怖くて……声が出ない……!)]


後退りするハル。そして、逃げようと後ろを向いた瞬間!

……男が一気に詰め寄ってきた!


ハル[きゃ!]


腕を捕まれ、そのまま、後ろから一気に抱き込まれるハル。そして、口を手でふさがれ……。


ハル[んー!]

男[ハァ、ハァ、ハァ……静かにしろ……ハァ、ハァ]

ハル[んー!(怖い!怖い!怖い!怖くて動けない!力が入んない)]


そのままハルは引きずられ……公園の陰の方へ……連れていかれた。


ハル[んー!んー!]


そして、急に押され……その場に倒された。

尻餅をつくハル。


男[ハァ、ハァ、ハァ、長谷川……ハル~ハァ、ハァ、ハァ、あ~~こうしたかったぁ~……あはははは(笑)]


ハル[ハァ、ハァ、だ!誰!?何!?やだ!(あたしの名前知ってる!)]

男[うるせーッ静かにしろ!殴るぞ!]


そう言うと男は、何か棒のような物をチラつかせた。

そして、男は用意していたガムテープで、ハルの口に貼ってふさいだ。そのまま、両腕も後ろからガムテープでグルグルと巻いた。


ハル[んー!]


その後、男は無言でハルの正面でしゃがみ……

……ハルのブラウスの胸の所の、ボタンとボタンの間に……両手の指を入れ……そして、左右に引き裂くように……おもいっきり!ブラウスを剥いだ!ボタンは飛び散る……


男[…………これも邪魔だなぁ……]


そう言うと、男は中に着ていたインナーも破いた……。


男[ハァ、ハァ、ハァ、いいね~可愛い~ブラジャー着けてんじゃ~ん(笑)ハァ、ハァ(笑)あ~……まずは、揉んでやるからなぁ~(笑)]


ハルは……どうする事も出来ず、恐怖で固まってしまっていた。


ハル[(あ…………もう…………ダメだ…………)]


そう、思っていた瞬間。


男[ぐッ!!]


男が、横に転げ込んだ!


ハル[!(え……!何……?)]


男[痛ッて~!……はぁ!?だ、誰だ!?…ぐッ!!]


もう一発殴られる男。


男[……ッ……………………何すんだッ……てめぇ~!]


そして、殴った誰かが声を出す。


田口[お前こそ……何してんだ……]

男[!……お、お前……田口……]

ハル[!(田口君!?)]

田口[やっぱお前……4組のやつだろ……名前知らねーけど……]


そう、ハルを襲った男は……4組に居た体育の時に、田口に顔にボールを当てられた男だったのだ。


男[……ッ…………また、てめぇーか…………何なんだお前!……邪魔すんじゃねーよ!]

田口[お前…………俺の今までで人生の中で、1番の俺をムカつかせたな…………]

男[はぁ~?またそれかよ!?(笑)意味わかんねーし!?そいつ、お前のお気に入りの、陰キャ女じゃねーだろ?(笑)頭イッちゃってんの?はははは(笑)……]


そう言って笑ながら、男は棒で田口に殴りかかった。


田口[イッてんのはお前だ…………よッ!!]


田口が殴りかかってきた男の腹に、蹴りを入れた。男は転がり込んで、持っていた棒も飛んでいった。

そのまま、男に近寄る田口。


男[……ぐッ……]

田口[お前死んだら?]


そいう言うと田口は男をまた、蹴り……そのまま、寝転んでる男の胸ぐらを掴み、殴り出した。一発、二発、三発、…………。

その光景をハルはボーッと見ていたが、ハッとなり……必死に叫び出した。


ハル[んー!んー!んー!んーー!!]


それに、気付いた田口は……殴るのを止めた。

男は気を失っていた。


田口[ハァ、ハァ…………ッ…………]


田口はハルの所へ行き、ゆっくり口に貼られたガムテープを剥がした。


田口[……大丈夫か……?]


無言で頷くハル。

両手のガムテープも剥がして貰うと…………ハルは堪えていた涙が溢れてきた……。


ハル[うッ……うッ……うぅッ……こ、怖かったよぉ~うッ……]


ハルは思わず、田口に抱きついた。


田口[………………ッ…………]

ハル[うッ……うッ……うッ]

田口[…………そ、そのままじゃ不味いだろ……ちょっと待ってろ]


田口はカバンから持っていた運動着のジャージを出してきて、ハルに掛けた。


田口[……コレ……汗くせーかもしんねーけど……着とけ……]

ハル[……う、うん……うッ……あ、ありがとう……うッ……]


少しして、落ち着いたハルは。


ハル[……田口君……ありがとう……]

田口[……別に……]

ハル[…………でも…………どうして……わかったの……?]

田口[………………たまたまだ……]

ハル[…………でも……たまたまにしては……タイミング良かったような…………]


田口が頭をかき、悩むようにして少し黙った後。


田口[……お前……記憶無いんだろ……]

ハル[……うん……]

田口[…………なら話す…………ガキの頃……俺達はよく一緒に遊んでた……お前は明るくて元気があって、俺もそんなお前と一緒に居て楽しかった……でも、ある日……クラスの女子に、一緒に遊んでる所を見られて……【田口ってハルちゃんの事好きなんでしょ~(笑)】って言われて……俺は思わず……【す、好きじゃねーし!こんなヤツ!たまたま一緒に居ただけだし!キモいし!】なんて……恥ずかしくて咄嗟に言ってしまって……その後、クラスで噂になって…………それからハルはイジメられるようになってしまった……ガキだった俺は……どうしたらいいか分からなくて……お前とも話せなくなって…………そのせいで……明るかったお前は暗くなってしまって…………だから、俺は……それから……罪滅ぼしのつもりで……イジメられそうなお前を守り続けた…………だから…………お前に気付かれないよに…………今日まで……学校への行き帰りを…………その…………]

ハル[……そっと……見守っててくれたんだね]


ハルがそう言うと、田口に微笑み掛ける。


田口[……あ、あぁ……でも、それは……俺のせい……]

ハル[でも!じゃない!]

田口[え?……]

ハル[フフフッなーんてッ(笑)……あたしも、よく妹のルイに言われるから(笑)だから!過去の事はウジウジ言っても仕方の無い事だし!これからまた、楽しくやればいいじゃんッ(笑)…………あたしも…………記憶無くて……田口の事……皆の事……傷付けてしまってるかもだけど…………それでも!前に進むしか無いって思ったから……だから……友達にならなくていいなんて言わないで!だから……コレからの!あたしと仲良くしてくれないかな?]

田口[…………いいのか?……こんな俺なんかと……]

ハル[だーかーら!いいって!言ってるでしょ!(笑)ヨロシクね!田口君!]


田口は少し照れながら。


田口[わ、わかった]

ハル[エヘヘッ(笑)]

男[……うッ…………]


男が目を覚ました。


ハル[……あ……]

田口[……起きたか……]


田口が男の方へと向かう。


ハル[ど、どうするの!?これ以上、な、殴らないでね!]

田口[殴らねーよ]


田口が横になってる男に寄り……しゃがみこんで胸ぐらを掴む。


田口[おい……]

男[……ッ……]

田口[お前……今回はコレで済ませてやる……ただもし、次にアイツに手出したら……殺すからな]

男[……は、はい……]


そう言う田口は、ドンッと男を突き放した。

そして、田口はハルに……。


田口[コイツのやったことは犯罪だ……たぶん、また、同じ事をするけど可能性がある……だから警察に連絡するけどいいか?……たぶん、俺もお前も色々と事情聴取されると思うけど]

ハル[……うん、わかった]


その後、警察に連絡して、駆けつけた警察官に男は連れていかれ……ハルの格好を見た警察官は、直ぐ様状況を把握した。

その後が大変だった……ハルの所へ駆け付けた母、ルイが号泣……父も後から駆け付け死ぬほど心配していた。

家族は田口に大変感謝し、何度も何度もお礼を言っていた。

ただ、田口は……正当防衛とはいえ……過剰防衛となり……学校側としては、3日の停学とすることとなった。

そのあと、数日ハルも学校を休んだ。



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