第4話 意外と良いやつかも……


学校の校門前と着いたハルとルイ。

深呼吸をするハル。


ハル[はぁ~~ふ~~~]

ルイ[大丈夫?お姉ちゃん……]

ハル[……うん、大丈夫!…………嘘!…………ルイ~緊張してきたよぉ~~]

ルイ[だよねぇ…………でも、大丈夫!お姉ちゃん可愛くなったんだし自信を持って!]

ハル[(俺が気にしてるのは、容姿じゃなくて~クラスのあの雰囲気なんだよぉ~~でも……怖じけるわけには……)う、うん、お姉ちゃん頑張るから……]

ルイ[ファイト!あ、あと、一応確認ね、お姉ちゃんのクラスは二階だからね、2年1組で席は窓際の一番後ろだって、因みにあたしは、一階の1年2組に居るから、何かあったらあたしの所に来てね!]

ハル[うん、わかった、ありがとうルイ]


そして……校門前でグタグタしてしまっていたせいで、時間ギリギリになってしまったハルは、急いで自分のクラスへと入っていった。

戸をガラガラと、開けるハル。


ハル[(あ、後ろから入ればよかった……)]


時間もギリギリと言うこともあり、皆席に着き、前から入ったハルは注目の的であった。

そして、一瞬にしてクラスがシーンと静まる。


ハル[(ぅ~~めっちゃ見られてるぅ~早く席に……一番後ろの窓際……あ、空いてた……そこだな)]


さっと席に座るハル。

するとクラスの皆は急にザワついていた……。


女子[え?誰あのコ?]

男子[え??え?転校生?]

女子[え?え?ホントに誰?あそこの席って、長谷川さんじゃなかった?]

男子[つーか、めちゃくちゃ可愛くね!?あのコ]

女子[凄く可愛い~……誰?]

男子[おい、誰か声掛けて来いよ(笑)]


周りが何か言ってるのは聞こえるが、緊張し過ぎて何を言われてるか分からなかったハルは、下を向く。


ハル[(あ~変にめちゃくちゃ目立ってしまった~遅く来て前から入ったからだ~……明日からは早く来よう……)]


そんな事を考えていたら、担任が入ってきた。

ガラガラ。


担任[皆、おはよう~えーと今日は~皆に大事な報告がある、えー、昨日まで休んでいた【長谷川】さんだか~親御さんの話だと記憶喪失になってしまったらしい……それで]

男子[え!?先生!長谷川さんって……]

担任[長谷川さんは長谷川さんだろ!窓際の一番後ろの席に今座ってる]


皆の注目が一気にハルへと集まる。


ハル[(おいおいおい!勘弁してくれよ~そーですよ~長谷川ですよ~)ど、どもッ長谷川です]

クラス全員[えーーーーーーーーーーーー!]

男子[嘘だろーー!え!あれが!長谷川!?]

女子[ウソウソウソ!ホントに!?長谷川さんなの!?]

男子[転校生とかの間違いじゃなくて!?]

女子[別人過ぎるし、美人過ぎて信じられない…………]

担任[こらこら!静かにしろ!今は容姿がどうこうを言ってんるじゃない!長谷川は記憶を失っているそうなので、本人が、一番辛いし大変だと思うので、皆でしっかりサポートしていってくれ!と言うわけだいいな!皆]

クラス全員[はい!]

担任[……や、やけに、返事が良いな……それじゃ早めにホームルーム終わらせるか、長谷川さんまた、後程]


ハルが会釈する。


担任がクラスから出て行った瞬間!一気に大人数がハルの周りがに集まってきた。


ハル[え!ぇ!えぇ!何!何?!]


焦るハル。


男子[長谷川さん記憶無くなったって本当!?]

女子[本当に長谷川さんなの!?]

男子[なんか、急に可愛くなったよな!]

女子[急に記憶喪失なったの!?]

男子[付き合ってるやついるー?!(笑)]

女子[ちょっとーそれ今関係無いでしょ!]

男子[良いじゃん別に~(笑)]

女子[それより長谷川さんどやったらそんなに急に美人になれるの!!?教えて~]


ハルは一気に質問攻めに合い混乱していた。


ハル[え?え!そんなに一気に言われても~]


ハルが困っていたら突然……『ドーン!!』っと机を蹴ったと思われる大きな音がした。

その瞬間クラスが静まり返る。

場所はハルと同じ一番後ろの席の廊下側だった。


ハル[(ビ、ビックリした~……)]


机を蹴った男子が近付いてきた。


ハル[(え、何か来る!……怖い)]


そして、横に立ちハルに向かって顔を近付けた。


机を蹴った男子[おまえ……俺の事も忘れたのか?]


ハル[え、ぇーと…………(えーーー顔ッ近ッ!あ、でも、顔……綺麗…………じゃねー!誰!誰?男の時にこんなヤツ居たっけ!?いや!絶対に居ない!!たぶん俺が女になったから、出てきた新キャラなんだ! )]


机を蹴った男子[……ふーーん覚えてねーんだ……]

ハル[…………あ…ははは……そ、それがぁ……ちょっと記憶]

机を蹴った男子[あっそ……]

ハル[…………]


そう言うと彼はクラスを出ていってしまった。


女子[何あれ?こわッ(笑)]

女子[意味分かんないしね~(笑)]

男子[ま、まぁ……でも、田口あんなだけど別に悪いヤツじゃねーしな(笑)]

男子[ま~な~勘違いされるだけなんだよな~お!チャイム鳴ったな座ろうぜ!ごめんね~長谷川ちゃん(笑)]

ハル[う、うん……大丈夫(苦笑)(田口って言うのか……アイツ…………あービックリした…………そして……皆にこんなにも囲まれるなんて…………でも、ある意味……アイツのあの行動が無かったら……助けてくれたのか……な?…………んな訳無いか…………でも……あの……『俺の事も忘れたのか……』何か深い意味があるのかなぁ……?)]


そんな事を考えるのは、疲れるから止めることにしたハル。

昼休み、ハルはルイと一緒にお昼に、お弁当を食べていた。


ルイ[お姉ちゃんどうだったぁ?]

ハル[んーーー何か囲まれて質問攻めにあったーーー…………]

ルイ[そ、そっか~(笑)まぁそーだよね、お姉ちゃん変身しちゃったし記憶喪失なっちゃったしね]

ハル[……う、ん]

ルイ[……どうかしたの?]

ハル[……うん、いや、それよりも……ちょっと気になる人が居てー……]

ルイ[えーー!お姉ちゃん!いきなり好きな人が出来たの!?]

ハル[違う!違う!ごめんね!言い方か……ごめん違うの…………ちょっと1人の男子に……『おまえ……俺の事も忘れたのか』って急に言われて…………それで…………気になっちゃって]

ルイ[ふーーーん、なるほどねぇ~~で、その人は何て言うの人なの?]

ハル[……他の男子のコが……田口って言ってたのが聞こえたから、たぶん田口君って言うんだと思う]

ルイ[え、あー!田口君?]

ハル[ルイ!知ってるの?]

ルイ[知ってるも何も……幼馴染みだよ……]

ハル[…………えーーーーーー!本当に!?]

ルイ[うん]

ハル[あれと……?]

ルイ[うん]

ハル[あの怖いのと……?]

ルイ[あはは、田口君は怖くないよ(笑)ただ勘違いされやすいだけだよ!本当は優しくて、思いやりがあって……それにお姉ちゃんの事いつも気に掛けてくれてたんだよ(笑)]

ハル[そーなの?]

ルイ[うん、小さい頃は良く話してたけど~……ほら、お姉ちゃん喋らなくなっちゃったでしょ……それでも、田口君はお姉ちゃんの事ずっと、陰から支えてたんだよ]

ハル[え?……それってどう言う……]

ルイ[んーーまぁ今だから言うけど……田口君がお姉ちゃんがイジメられないように、小中高と、ずーーーっと……降りかかる火の粉をはらってた?って言ったら良いのかなぁ……まぁそんな感じで!妹のあたしとしても、感謝してもしきれない人だよ!(笑)……だから……もしかしたら……幼い時の思い出や自分の事を忘れられて、ショック受けてたんじゃないかなぁ…………]

ハル[…………そっか、今までのあたしを助けてくれてたのか…………(意外と良いやつかも……)ごめんルイ!お姉ちゃんチョット行ってくるッ]


ルイが笑顔で。


ルイ[うん!分かったッ頑張ってお姉ちゃん!]


そうして、ハルが田口を探し始めた。


ハル[(えーと取り敢えず帰ってねーよなアイツ?……下駄箱見たけど~外靴あったし~どこに行ったんだろ?誰かに聞いてみようかな?……取り敢えずクラスの男子に……)]


ハルは一度、自分のクラスに行った。


ハル[あのー……]

男子[え!?俺?はい!なんでしょう長谷川さんッ]

ハル[た、田口君って……どこに居るか分かる?]

男子A[田口君……あぁ……うーん……ちょっと俺は分からないですかね~]

ハル[そーですか……]

男子B[田口ッ?あー俺、屋上に行くとこ見たけど]

ハル[ホント?ありがとう~助かりましたッ]


ニコッとするハル。

その、笑みにデレ~となる男子二人。


男子B[ぜ、全然ッお、お役に立てて良かったです!(笑)]


ハルは急いで屋上へと向かった。


ハル[(居るかな……)]


屋上の扉を開けるハル。

ガチャ


ハル[(コッコ~サビてて……おも~いぃ~)んーーー!(……女の身体ってこんなにも力が無いのか~)]


ハルが一生懸命扉を押していたら、急に扉が軽くなり勢いよく開いた。


ハル[わッ!]


その勢いでハルは扉に頭をぶつけた。


ハル[痛ッたぁ~~]


ハルがしゃがみ込み頭をおさえる……。


田口[……おまえ……何やってんの?]


田口が扉の横に立ってハルを見下ろす。

涙目で頭をおさえながら、見上げたハル。


ハル[う~~……え?……あ!た、田口君見つけたッ!]


田口に向かって指を指すハル。


田口[……な、何だよ]

ハル[あたし、田口君を探してたの!]

田口[……何で?]

ハル[…………それは…………(ヤバい……勢いで探してたけど……何を言いたかったんだっけ……)……えーと……その……]

田口[…………何もないなら行くけど]


あたふたするハル。


ハル[(ん~~何て言おう……)ん~……]

田口[……じゃぁな……]

ハル[待って!]

田口[……なに……]

ハル[あ、あたしと友達になってください!]

田口[は?]

ハル[(友達って~~!)……あ、いや、その……あたし!妹に!ルイに聞いたんです!田口君が小さい時から……あたしを守ってくれてた事!]

田口[!]

ハル[……だけど、あたし記憶喪失になってしまって……その、子供の頃の事も忘れちゃってて……だから、…………今から、また、友達になって欲しいです!]


ハルがそう言って頭を下げる。


田口[…………別に友達なんて……なんなくてもいーよ俺は……]

ハル[……ッ……(まぁ……だよな……忘れられた上に、そんなの都合良すぎるもんな……)]

田口[…………でも……おまえに何かあった時……困ってる時は……俺が……いつで助ける……俺は俺で好きにするから気にするな……じゃぁな]

ハル[…………え…………それって……]


そう言うと田口屋上を後にした。


そして、帰り道。


ルイ[お姉ちゃん、どうだったの?田口君に会えた?]

ハル[…………うん…………]

ルイ[何かあった?]

ハル[……ねぇ……ルイ……友達になんなくてもいい……って言われて……でも、おまえに何かあった時、困ってる時は俺がいつでも助ける……って……どう言う意味かな…………でも、それって友達では……ないんだよね?]

ルイ[ん?お姉ちゃん、もしかして、田口君にそう言われたの?]

ハル[う、うん……]

ルイ[うーーーん…………それって……一応お姉ちゃんの事を気にしてくれては~いる?……って事だよね]

ハル[なのかなぁ~?]

ルイ[って事は、嫌われては~いないんじゃない?それに、怒ってもないッそれに…………たぶん田口君お姉ちゃんの事…………]

ハル[ん?あたしの事……なに?]

ルイ[……うぅん!何でもない(笑)まぁ!大丈夫だよお姉ちゃん!]

ハル[う、うん……そ、そーだね!(まだ、始まったばかりだし、この環境にも少しずつ馴れなきゃだから……あまり余計なこと考えないようにしよう……うん!)]


こうして、何とか女としての……始めての登校を終えたのであった。

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