水上真凪の非日常 第2話 相談
「ごめん真凪、強引なお姉ちゃんで」
沙織さんを玄関まで見送った後、二人でリビングに戻るなり佳織が謝りを口にする。
「ちょっとびっくりしたけど、沙織さんが悪い人じゃないのはわかったから気にしなくていいよ。むしろ、私たちのことを歓迎してくれてるから、あんなことを言ってくれたんでしょう?」
「多分そうだと思う」
「私は自分じゃしようなんて考えなかったから、佳織が嫌じゃないならしてもいいかなって思ってる。佳織は?」
「本当に真凪はいいの?」
迷ってる素振りを見せれば佳織はここから先に進めない性格であることはもう知っているので、いいよと答えを返す。
私にも迷いはあるものの、こんな機会に次巡り合えるとも限らないので、今進めるべきだろう。
「私の親族を呼ぶのは流石に勘弁だけど、佳織は沙織さんだけでも祝福しようとしてくれているんだから、やる意味はあるかなって思ってる」
「真凪は本当に呼ばないでいいの?」
「うん。伯母さんたちが本当の親だったらぶつかってでも理解してもらおうとしたかもしれない。でも、我が子同然に見てくれていても、やっぱり遠慮はあるし、そこを飛び越えてまで嫌な思いはさせたくないなって思ってるんだ。
伯母さんって、常識も良識もある人だから苦しめたくない、かな。私に返せることは、老後に何か問題が起きたら手伝おうってくらい。その時は行ったり来たりするかもしれないから、佳織にもちょっと迷惑掛けるかも」
「真凪がずっとお世話になった人たちだから、それはいいけど、本当にいいの?」
「私も佳織との生活が大事だから、波風を立てたくないのもあるかな。佳織が思い詰めて出て行くとかになったら、それこそ死ぬから」
「もうっ」
今は大丈夫、とくっついてきた佳織を私も抱き締め返す。
「でも、佳織のウエディングドレスは楽しみ」
今から想像してもにやけてしまって顔が戻らない。
スマホの待ち受けにぜひしたいけど、きっと佳織には即行変更されてしまうだろう。
「真凪も着てね」
「私は背が高いから似合わないよ?」
「そんなことない。モデルが似合うんだから真凪も似合うから」
「佳織が着ろって言うなら着るけど……」
背丈だけはモデル並みにあるものの、私には華がないから無理に着なくてもと思ったけど、佳織の強い押しに私はそれを承諾する。
真凪が着ないとわたしも着ないなんて酷すぎる。
「でも、沙織さんは女性同士に偏見ないんだね」
「お姉ちゃんはわたしを理解しようとしてくれるんだと思う。うちの家はお母さんが言ったことが絶対で、文句なんか受け付けないだったんだけど、わたしだけがいつもそれを受け入れられなかった。
ルナを拾った時も、初めて人を好きになった時も、家を出る時も、お姉ちゃんが助けてくれたから、できたこといっぱいあると思う」
「いいお姉さんだね」
「うん。わたしにとっては世界で一番素敵なお姉ちゃんなんだ。……でも、真凪。今日はお姉ちゃんにでれでれしてたでしょう? それとこれとは別だから」
目を寄せて私を睨む佳織はやっぱり見逃してくれてないようだった。
「美人だなとは思ったかな」
「…………やっぱり」
正面で焼きもちを焼く佳織は、ほっぺたを膨らませていて、可愛いと頬を寄せたくなる。
佳織が妬いてくれるのが嬉しいなんて言ったら、佳織は更に拗ねるだろうな、と思いとどまる。
「佳織、美人なら無条件に弱いってわけじゃないからね。目を引くのはあるけど、佳織以外にはもうそんな気にはならないから」
「ほんとに?」
「本当です。私にとっては佳織が世界で一番可愛いから」
そんなことないでしょう、と耳まで真っ赤にした佳織の腰に腕を回して、更に自らに引き寄せる。
「それを示してもいい?」
「ここで?」
「ここで」
私の肯定に小さく頷き返した佳織に顔を寄せて、唇を奪う。
佳織は私の望みを素直に受け入れることにも随分慣れて、抵抗がないことを確認してから、佳織のシャツの中に手を差し入れる。
「もう、昼間だよ、まだ」
「新婚なんだし、いいんじゃないの?」
ここから先は私の得意分野だった。
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