第18話 引き留め
その夜の飲み会は何かにつけて佳織が唯依に突っかかったものの、ナナと唯依の仲の良さは自分たち以上に見えて、割り込む隙もなかった。
私から見ても唯依はナナに甘えていたし、ナナも文句を言いながらもそれを受け入れている。唯依の方が押してるのも実はちょっと意外だった。
唯依はちやほやされる方で、口説かれて当然だと思うタイプなので、それがナナに必死でくっついて行っているように見えた。
人見知りをする佳織も唯依に関しては別で、何度か睨み合うことはあったものの、楽しい時間を過ごした。
居酒屋で長居をしてしまって、終電もあるからと店の前でナナと唯依とは別れ、私と佳織は佳織の家に向かう路線に乗り込んだ。
夜も遅いし、佳織を家まで送ってから自分の家に帰ろうと佳織の手を握る。
「大丈夫かな、ナナ……」
「保障はできないけど、ナナだってそんなに気軽には落ちたりしないと思うから、それなりに唯依も真剣なんじゃないかな」
「本当に何でかわからない」
「そんなものじゃない? 人が人を好きになるのって。私が佳織を好きになったのだって、他人に言わせれば理解不能かもしれないし」
「でも、わたしは真凪が好きだから」
「ありがとう。多分ナナと唯依もそうなんじゃないかな。少し見守ろうよ」
「うん」
電車を降りて佳織の住んでいるマンションの前まで辿り着いて、じゃあ帰るねと声を掛けた私の腕を佳織の手が引き留める。
「佳織?」
「もう遅いし、泊まって行ったら?」
じっと佳織の目を見返して、私は肯きを返す。流石にその意図が分からないほど朴念仁ではないつもりだった。
佳織の部屋に入って、勧められるまま私が先にシャワーを借りて、その後佳織がシャワーを浴びるのをルナの寝顔を見ながら待つ。
多分今日の佳織はナナと唯依にかなり誘発されてしまったのだと簡単に想像ができていた。ただ、佳織から求めてくれるなんてまずないことな気がして、この機会を逃せば次はいつになるか分からないので失敗はできない。
「真凪」
風呂上がりの佳織は、最近買い換えた細いフレームの眼鏡に戻っていて、膝までのルームウェア姿に思わず胸が高鳴ってしまう。
「何?」
極力邪な感情を出さないように抑揚を抑えて、佳織に応答を返す。
「あまり上手くないと思うからごめんね」
「そんなこと佳織が謝ることじゃないよ。これから二人でどうして行くかじゃない?」
抱き締めたくて、もう我慢ができなくて、佳織を自らに引き寄せて膝の上に座らせる。
「本当にいいの?」
佳織が肯きで精一杯の応答を返してくれて、私は佳織の唇に自らのそれを重ねた。
風呂上がりの佳織の唇は温かくて、佳織の体を抱き締めながら熱を混ぜ合う。
途中で眼鏡をまた壊してもいけないからと、佳織のそれを外して手近なテーブルに載せると、そのまま佳織をベッドに誘った。
「佳織、私は佳織が好きで好きで仕方ないから、佳織を抱こうとしてるんだからね」
「わたしも……わたしも、真凪が好き……」
今日の佳織は可愛すぎて、私は佳織の体に唇をつけると夢中で佳織に触れた。
佳織は私の動きに合わせて、体を開いてくれる。経験があるにしろ、まだ慣れてなさが佳織にはあるように感じられた。
なんとなく性格的にこういうことを許すのがなかなかできない気はしているものの、そんなことは今重要じゃなかった。
大好きな存在の体を貪り尽くして、何度も互いに果てて、愛を交わし合う。
やっと佳織に届いた気がしていた。
「もう……真凪ってやっぱりエッチすぎるよ」
「だって、佳織の体が魅力的すぎるんだもん。もっと触れたいって思うとついね」
「真凪、わたしね、不安だったんだ。真凪を知りたかったけど、私よりも真凪の方が絶対経験あるから、わたしの体なんてつまらないんじゃないかって」
「そんなことあるわけないじゃない。最高に良かったよ。毎日したいって言わないけど、次は一ヶ月後とか言わないでね」
私の言葉に佳織は笑ってくれる。
「真凪次第じゃない?」
「それはもっと雰囲気つくれってことでしょうか佳織さん」
「そこまでは言ってないけど、したいって思わせてくれたらいいよ」
「なかなか高いハードルな気がする」
「そうかな。わたしだって真凪に触れたい日はあるから」
「そういう時はちゃんと口にして欲しいな」
「やだ」
「ええっ!?」
「頑張って読み取れるようになってね、真凪」
つき合ってエッチまでしたのだから、もうちょっとデレて欲しいななどという希望は、佳織には通じないらしい。
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