第2話 魔法の本との出会い

 何の変哲のない村に魔導師が図書館を作り、そこに住み着いてから約20年後。魔導師は病気で亡くなった。 連れもその数年後に亡くなって、だいたい40年が経った。


 すっかり古びた図書館ではずっと本を読み続ける人間がいた。 静かに本に目を落とす人間は、切れ長の黒い目を長いまつげがおおい、 薄い唇をきゅっと結んで書に没頭していた。


  昼を知らせる鐘が鳴ると、顔をあげ、立ち上がって伸びをする。


 この人間の名は風露。この村一番の本好きで、寝食以外はずっと本を読んでいることで有名である。


 風露は、先ほどまで読んでいた本を懐に仕舞うと、食事のために家へ向かった。風露が家に着くと、両親が食卓についてこちらを見ていた。 風露は、いつものように席につき、無言で食事を始める。 いつもの家の風景だ。


 そうして静かな食事が終わり、 風露は図書館へと帰った。そのまま風露は日が沈み、一番星が地上を見下ろす時間まで、静かに本を読み続けた。


 そんな日々が続き、 風露は12才になった。 同年代に比べて小柄で色白な風露は、このままでは結婚できないのではと密かに両親に危ぶまれていた。


 ある冬、風露は読み終わった本を書棚に戻そうとして、図書館に飾られている絵が取り外せることに気づいた。 物語などで見る仕掛けかもしれないと、好奇心から絵を取り外してみると、見たことのない素材の戸があった。 風露は戸の前で開けるかどうか少し悩んだが、思いきって戸を開け放った。


「す、すごい」


 そこには、黒曜石の机の上に金色の本が開いて置いてあった。

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