第10話 終わりがほしい?

 じゃあたとえば、宇宙の始まりがあったとして、その始まりの原因、つまり始まりの始まりは何だろうか? 始まりの始まりの、始まりは?

 そうやっていくと、始まりなんて無くなってしまう。では、終わりはあるのだろうか?


 そんなこと考えたって、死猫が死ねないことには変わりない。恐怖を煽るだけだ。

 命に限りがあると分かっていれば、そんな果てのない考え事を、楽しむこともできたのかもしれないが。


 この世界が終わったって、仮に宇宙が終わったって、また新たな世界の始まりに過ぎなかったとしたら。そんなことがあるのなら、自分自身さえ放棄し、身を任せてしまった方がいいのかもしれない。


 そんなことを考えているうちに、また力が溜まってきてしまった。



 深夜、一人で泣いている女性を発見。

 泣いているから、というわけではないが、ターゲットをその女性に決める。


 女性は、ある違和感を覚えた。


 夜中の二時頃だったのに、急に朝になったからだ。

 その異変に、辺りを見渡し、歩き出す女。


 進んだ道の角を曲がる。すると、元いた場所。


「え? どうして? どうして……?」


 何度、どっちの方向へ行っても、角を曲がると元いた場所に戻ってしまう。


 だが、一度見た通行人とは二度は出会わない。他の人間はこの空間に閉じ込められていないようだ。


 店に入ろうとしてみるが、なぜか入れない。歩いても歩いても、先へ進めないのだ。十メートル歩いたかと思うと、まだ入口の近くにいる。


 電話は通じるので、タクシーを呼んだ。だが、タクシーと会えない。確かに、女もタクシーも同じ場所にいるのだが、会えないのだ。


 女は、死猫を見つけ、話しかけた。


「あなたは何度もここを通るね。どうしてここにばかりいるの? 何してるの?」


「私がね、あなたをこの空間に閉じ込めてるんだ」


「でも、もうやめるね。ありがとう」


 死猫はお礼を言って、女性を解放した。

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