第7話 死ねない猫と死ねる猫
死猫は、死ねない超能力猫であり、そして死にたがっている超能力猫である。
猫に限らず、死ねない者は永遠という果て しなさに絶望し死を望み、死ねる者は死んでしまうことを恐怖する。
いや、正確に言うのなら死猫は猫ではない可能性が高いが。
死猫は猫が車にはねられるところを目撃した。
頭から血を流してぐったりする白い猫。
車はそのまま走り去った。
死猫は猫の傍へ駆け寄った。
放っておいたらもうすぐ死にそうだ。
…………怪我を治すか、安楽死させるか。
死猫にはどちらもできる。
今までなら、怪我を治していたところだろう。永遠に死ねないことの、漠然とした孤独や恐怖、虚しさ寂しさは、ある時は人や動物を幸せにしたくなったり、ある時は生きていることそのものに同情する気分にさせる。
最近の気分は、後者だ。
死猫は、この死ねる猫の生死を自分が握っているのも、何かの運命だと思った。
いや、正確にはそんなことは思ってないが、死猫はこの死ねる猫を安楽死させることにした。
──これで、全ての苦痛が無くなったはずだ。
「君のことは永遠に忘れないよ」
永遠に忘れない。一瞬でも、私が死期を早めた猫がいるということは。
猫を道の端に移動させ、その場を後にする。死猫は白い猫を思い浮かべながら、少しいつもより浮き足立った気分でいた。
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