第5話 死ねないんですが

 死猫にとって時間の概念などあってないようなものだが、時々は、自身の超能力に振り回される運命に、無性に虚しくなることがある。


 人間があまりにも簡単に死ぬので、死猫も人間たちと同じ方法で、自殺を試みたことが何度もあった。


 首吊り、飛び降り、飛び込み、中毒、溺死、果ては焼身自殺まで。


 しかし、痛かったり苦しかったりするだけで、結局死ぬことはなかった。


 というか、あまりの苦痛に、無意識に能力を使い助かってしまうのである。


 いや、死猫にとって、自分がそもそも生き物であるのか、死ねないのなら生きているとは言えないのではないか、とか、そこらへん不明ではあるが、死猫は死にたかった。


「この世界ごと死ねたらいいのに」


 そんな独り言をつぶやいたって、何の意味もない。


 しかしそれでも、いつの日か死ぬための努力は、ある種、死猫にとって趣味になっていた。

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