第4話 彼女を殺した犯人を殺してほしい?

 死猫はイライラしている男を発見した。


 死猫は力を使えば、ある程度人の感情を読み取れる。何を考えているのかまでは分からないが、ポジティブ感情がどれほどの強さなのか、またネガティブ感情の強さがどれほどなのか、だいたい分かる。


 死猫は、超能力の力で自身の姿を透明にし、気づかれぬようイライラしている男の後をつけていた。


 この時期、とある強姦殺人事件が起こっていた。犯人は一ヶ月経った今も捕まらず。


 男の部屋まで忍び込み、男の観ているテレビを一緒になって観ていると、犯人の捕まっていない強姦殺人事件のニュース。

 男のネガティブ感情が強くなる。

 彼がスマホをいじっているのを観察していると、その事件に関連するものばかり閲覧していた。


 どうやらこの男は被害者女性の彼氏らしかった。男が母親と電話しているのを聞いていたのだ。


 「なんで犯人見つからないんだよ……見つかっても懲役なんて十年ぐらいなんでしょ。殺人した奴なんか全員死刑でいいのに」


 母親との会話で男がそんなことをつぶやいた時、死猫はこの犯人を殺してみようと思った。


 犯人を見つけるため、神経を集中させる。

 今回は、それだけでもかなりの力を発散できた。

 犯人を特定することに成功。


 男の家からそう遠くない、徒歩三十分くらいのところにいるようだ。


 死猫は犯人のもとへ向かった。

 瞬間移動は犯人特定で疲れたので徒歩で。


 人に見られても不自然でない道路だったため、姿を消さず普通の黒猫として道を歩いた。黒猫の姿が、死猫の本来の姿だ。


 犯人はどうやら高校生らしい。授業中のようだった。


 どうせなら死猫も派手な完全犯罪を起こしてやろうと、思案する。


 死猫の考えた殺害方法は。

 適当な店などから刃物を盗み、犯人が学校内の人目につかない場所に行ったら刺殺する。


 万引き犯である十三歳くらいの子供が高等学校内で刺殺事件を起こしたことは、捜査により発覚するだろうが、何しろ犯人が見つからない……何一つ捜査が進まない。


 そんな計画をパッと立て、死猫はわざわざ監視カメラに映るように人間の姿でホームセンターから包丁を盗み出し、犯人の通う高校へ向かった。


 透明人間となり、犯人の後をつける。


 犯人がトイレへ入った。他に人はいないようだ。


 今だ。


 包丁を片手に持つ死猫の姿を見てきょとんとする強姦殺人犯。


 …………人間が刺された時のリアクションは、案外薄いのかもしれない。


 確実に死ぬように、心臓を数回刺す。


 包丁はその場に放置し、高等学校の外へ出て、人混みに紛れる。

 そのまま路地裏に入り、猫になり、後はニュースなどで傍観を楽しむだけだ。



 強姦殺人事件の被害者の彼氏のことなんて、すっかり忘れていたが、これから捜査が進み、刺殺された彼が犯人だと発覚すれば、彼氏さんは喜ぶだろう。




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