4 ランバルへ
ひとしきり星空をみたあと、晩餐会の部屋に戻ってくると春信君が
「ゆっくりして行けばよいが、明日は出発だ。ここより先、私は同行できないが、我が兵が護衛する。桜花姫は体にさわるので、ここで」
桜花は不服そうだが、空を飛ぶのは結構体力が必要なのでしかたがない。ここまでもかなり無理を言ってついてきたのだった。
すると、シオンが桜花に気を使ってか
「そうだ隆司、桜花と千冬様にあれを折って差し上げればどうだ」
「おり鶴ですね、わかりました」
隆司は持っていた色紙で鶴を折って、桜花と千冬に渡した。
千冬は感激し
「まあ、隆司様はこのような繊細なこともされるのですね」
「暇つぶしにですけど」
それを見た桜花も
「ああ! 私にも折ってください」
「はい、それより折り方をお教えしましょう。僕の国ではこれを沢山作って病気のお見舞いや、お守りにするのです」
そう言って、桜花や千冬に折鶴の折り方を教えた。
楽しく作業しているさなか、桜花が
「でも、いつお姉さまは隆司様に折り方を教えて貰ったのですか」
すでにいくつか折り鶴を作ったシオンは、少し勝ち誇ったように
「ふふ、それは秘密だ」
「ああ、ずるい! 」桜花が不満げに言うと、嫌味気に「ところで、お姉さま。アシュルムに会うのでしょ」
すると、シオンは急に手元を止め
「……うう、思い出させるな。アシュルムは苦手だ」
愚痴を言い出すシオンに隆司は
「アシュルムとはランバルの王太子ですね。でも、ランバルは麗蘭と同盟して蛮族に対しているので、大切なお方ですよね」
「そうなのだが……」
シオンが消沈する理由がわからない隆司だった、それには桜花が
「お姉さまには、あの話が……」
シオンは腕を組んでふてくされている。
「どうしたのです」
「実は、お姉様はアシュルムさまとの婚儀の話があるのです」
「麗蘭とランバルの結びつきをより強くするためにですね」
隆司は納得したように頷くと、シオンは急に怒りだした
「隆司! なぜに頷く。私が、あんな奴と結婚しても、お前はいいのか!」
「お前は、って……僕は、何も」
「……! だいたい、この話もあいつの姉のミレイが言い出したことだ、麗蘭はだれも受け合っていない」
やりとりを聞いていた千冬は
「折り紙をしたり、あんなにムキになるシオン様は初めてですね。隆司様とは仲がよろしいですね」
横の春信君も笑いながら頷いている。聞こえていたシオンは赤くなって
「明日は早いので、今夜はもう寝ましょう」
桜花も
「ええ、もう寝るの」
隆司も疲れているので
「そうですね。それでは」
あわただしく晩餐会はお開きになった。
******
翌日は快晴になった。爽やかな風が吹き流れ、絶好のフライト日和だ。
桜花は
「それではお姉さま、いってらっしゃい隆司様と仲良くね」
なんだか、投げやりな口調だ。
「あっ……なんだ、先行している従者達はもう、着いているころだろう。そこまでだ」
「はいはい。早く帰ってきてくださいね」
「わかってる」
そこに春信君が来ると
「実は、ランバルでは、少し不穏な動きがあるかもしれない。蛮族の魔導師が周辺で見かけられたとの噂もある、気を付けた方がいい」
「はい、そのこともあって、今回様子を見にくのですから」
春信君がうなずくと
「隆司殿、シオン姫をたのむぞ」
「ええ! 僕にはなにもできませんよ」
春信君は
「そんなことはない、万の兵より頼りになる」
「買いかぶりすぎですよ」
謙遜する隆司だが、本心から出た言葉だ。
シオンは笑っているだけだった。、
そして、隆司とシオンは蒼天の里を飛び立った。
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