4 アクラ燃ゆ
三日後、シオン軍がアクラの城を包囲した。
アクラも臨戦態勢で全門を閉めて迎え撃つ体制を整えている。
そこにシオン軍が攻め込むが、鉄壁の城壁に全く歯が立たない。ただし、シオン軍はあまり真剣に攻め込まず、夜遅くまで絶え間なく攻撃を仕掛けていた。
夜が
「シオン様………このようなこと言いにくいのですが。
シオンは苦笑して。
「私をだれだと思う。このために私と潜入したのだろ」
「………はい」
隆司は汚れ仕事をシオンにさせる自分が情けなく、下を向いている。
そんな隆司にシオンは
「そろそろ時間だ、楽しかったぞ。久しぶりに女に戻った気分だ」そして、隆司に顔を近づけると「また、頼むぞ」まじかに見るシオンの顔に隆司がうろたえていると、シオンは微笑んで離れていった。
シオン軍は正門に集中攻撃しているが、鉄壁の正門だけに集中しているので、アクラは余裕で対応していた。
一方、シオンと隆司の向った東の通用門は十人ほどの兵が守っているだけだ。
東 門もかなり頑丈で外から破壊できるものではなく、蛮族の魔導師の結界も張られ破城槌をもってしてもヒビ一つ入れられたことはない。
門兵は静かな門の前で半数ほどは寝ていた。
シオンは慎重に近づくと最初に手前で休んでいる兵を素手で音もなく倒し、その剣をもって門に向かった。
シオンは抜身の短剣を前から見えないよう背中の帯にさし、大胆にも正面から歩いて向かっていく。起きていた五人ほどの兵が気づくと、微笑みながら近づく美女に
「なんだ、お前は」
一応、警戒して構えたが、シオンの
シオンは簡単に衛兵の傍にいき、完全に短剣の間合いに入った。
衛兵がシオンをニヤニヤしながら見ていると、シオンは急に姿勢を低くし背中の二本の短剣を両手に握る!
一瞬で勝負はついた。
衛兵たちは声を上げる間もなく崩れ落ち、すぐに隆司が駆け寄ると
「見事です! 」
隆司が感心したように言うと、シオンはさみしげな表情で
「お前に、こんな私を見せたくないのだがな………」
独り言のように言うと、血のりの付いた剣を放り投げた。
意外なことを言うシオンに隆司は、何か悪いことを言ったのかと戸惑ったが、時間もない
「さあ、行きましょう。もう、味方も来ているはずです」
シオンは気を取り直して頷くと、隆司とシオンは通用門をあけた。
門の外には二十人ほどのシオン精鋭の手勢が密かに集まっている。みな、アクラの軍服を着て中に入ってきた。
こうして味方と合流するとシオンは
「隆司、気を付けるのだぞ。私は、軍に戻って指揮をとる」
「はいシオン様、夜明けには決着がついているでしょう」
シオンは微笑んで頷くと闇の中にかけていく。
一方、隆司はシオンの手勢をつれて正門に向かった。
正門は、同じ二十人ほどの衛兵が守っていたが、隆司の連れてきたシオンの兵は精鋭だ、同数で不意をつけば圧倒的に強い。
変わらず、外からシオン軍が攻撃しているが、鉄壁の城壁に阻まれアクラは当直の兵だけで対応していた。
城壁の上の兵は、下で右往左往しているシオンの兵を馬鹿にしながら余裕で見物し、魔導師が火炎を放つと、撃ち込んだ先で散る兵を遊び半分で見ていた。
しかし、その後事態は一変する。
隆司がひきつれた二十人ほどの兵が正門のアクラ兵にとびかかっていく。
奇襲されたアクラ兵たちは簡単に蹴散らされ、隆司は数人をつれて、正門の巨大な
閂が抜けると、巨大な正門がゆっくりと動きはじめる。
―これまでの戦闘中に一度も開かなかった城門が開く―
アクラの兵は悪夢を見ているかの様に呆然とした。城の中に二万人のシオン兵がなだれ込んで入ってくる。
想像もしない状況が起こり、城壁の兵は足元が震え愕然としている。
正門を襲ったシオンの精鋭は再びシオン軍の服に着替えて加勢するが、隆司は門の外に退避した。
アクラの守備隊は愕然とし
「どうしたのだ! なぜ、城門を開く!」
「敵が、潜入してきました! 」
かつてない事態にアクラは大混乱に陥った。
城壁が開かれた場合を想定した訓練もされていたが、ここ数年そのような危機がなかったので、あまり真剣に行われていない。しかも夜半過ぎで、町は熟睡の中だ。
城の中に敵をいれると、城砦都市なので中には市民もいる。攻める方は手当り次第だが、守る方は人質と一緒に戦っているようなものだ。
アクラは統率を失い、シオン軍は敵を分断し拠点を次々と奪いとっていく。
蛮族の魔導師は敵味方関わらず容赦なく火炎を放ち、町を火に包み、逆にアクラを劣性に追い込んでしまう。
その 火炎を放つ魔導師は普通の兵ではかなり手強いので、主にシオン自身が相手をした。シオンは魔導師の放つ火炎をもろともせず突っ込んで、次々と倒していく。
アクラは混乱し、街は魔導師が放った火災が発生し、逃げ惑う市民や兵士の大部分は、わざと開けていた裏の城門から外に脱出して逃げ去る。
ほどなくシオン軍は城内を制圧し、王宮を完全に包囲した。
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