第46話 新たな冒険への旅立ち
「うん、うん、どれもおいしい」
みんなでテーブルを囲んでの食事。
といってもミミは今日は家族と一緒にテーブルを囲んで、今はソーニャと二人で食事を取っているが。
エルフの里ではダーク・トロールロードたち魔物の討伐と世界樹の解放を祝って宴が開かれていた。
「……すいません、ランス様、一撃でやられてしまって。暗黒世界になってから体が軽くなって調子はよかったんですが……」
「あれ相手はしょうがないよ。それにしてもやっぱりソーニャ動き良くなったよね、俺もそう思ってた。後、そのランス様っていうのそろそろ止めない? ミミにも言うつもりだけど。ここまで一緒に仲間でやってきて上下関係もないし」
「え……じゃあ、ランス……?」
「そうそう」
そこへ、ミミファミリーがやってくる。
「どうも娘のミミがお世話になりまして、奴隷にされている所を助けて頂いたそうで、どうもありがとうございます」
ミミの父親に頭を下げられ、俺は恐縮してこたえる。
「いえいえ、こちらこそ、ミミには助かってます。気になさらないで下さい」
「また、今回もどうもありがとうございました。エルフの里を代表してお礼申し上げます」
今度は母親の方からだ。はたまた恐縮して――
「いえいえ、気を使わないでください」
すでにエルフの里のみんなからは感謝の言葉はたくさん貰っていた。
ミミは世界樹を目指して移動している時、ずっと悩ましい顔をしていたが、今は晴れやか表情へとなっている。
おそらく何かしらの憂い、おそらくは家族絡みが解消されたのだろう。よかった。
その後、2,3挨拶をしてミミファミリーは自席へと戻っていった。
世界樹の解放はしたが、黒雲はまだちらほら見受けられる。
まだ何か光で解放する事が必要なのか、または、他に何かあるのか。
女神に聞きたいが宴の後にエルフの女王に聞いてみるか。
なんか懇意にしてるみたいだし。
久しぶりの日光を満喫する為かわざわざ木の上に日焼け台を建てて、そこで日焼けをしている猛者も現れている。
平和になった里のその光景がいいなあとなぜか印象に残る事になった。
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「女神アテネ様を召喚したいという事ですね」
「はい、可能であればという事なんですが」
最もミミからたぶんできるとは事前に聞いているが。
「呼びかけはできます。ただお答え頂けるかどうかは保証しかねますが」
「それは全然かまいません」
「それでは世界樹に接続して呼びかけてみますね」
世界樹はどうやら光神たちとのチャンネルにもなっているらしい。
ララは祈りを捧げ頭を垂れる。
しばらく時間が経過し、ララがその顔を上げて宣言する。
「女神様と繋がりました。顕現されます」
そのララの言葉の後、前に女神が現れたのと同じように再び実体を持たないその姿で俺たちの目の前に現れた。
「みなさん、世界樹の解放、及び、ダーク・トロールロードの討伐。よくぞ成し遂げてくれました、御礼申し上げます」
そういうと女神はその頭を下げた。
ララ、及び、その側近たちはえらく恐縮している。
「さて、ランス、私を呼んだ理由はまだ黒雲が残っている理由とその対処法でよかったですね」
「ああ、そうです」
「ラゼール帝国が北西に現在光の教団といわれる宗教団体が、本拠地を置いている所に闇の力を発している塔があります。その闇の塔は世界樹によって世界に光の力が戻った事で顕在化し、判明しました。その塔から発せられている闇の力を遮断すれば闇の力は相当数弱まる物と思われます」
「……その光の教団でよかったですか?」
「ああ、説明が足りませんでしたね。光の教団と教団名はそうなっていますが、実際、光の神に属するものは信仰されていません。名ばかりで邪神に連なるものが信仰されているようです」
ラゼール帝国。
世界最大の国家。
そのお膝元とも言える領内でそんな闇の力が勢力を誇っているのか。
「じゃあ、その光の教団とかいうのをやっつけて闇の塔の闇の力を発しているものを破壊すればいいのでしょうか?」
「闇の塔はもう一つあります。それもまたラゼール帝国領内なのですが、そこの闇の塔のある場所はスタンピードの時の魔物の巣となっています。ラゼール帝国の帝都に殺到したけど帝都には侵入できなかった魔物たちで恐らく世界で最大の魔物の巣です」
「それは……俺たちだけで対処するのは厳しいですね……、嫌でも魔神エヴァの力を借りれればワンちゃん、いやでも、なんか力を制限するとか言ってたから無理かな……」
「ラゼール帝国については光神への信仰が薄く、私も影響力を行使できません。ランスたちに頑張ってもらうしかありません。それではランス、みなさん、頼みましたよ……」
そういうと女神は前と同じようにその姿を少しずつ消していった。
頑張ってもらうしかないから頼みますって……。
女神は無茶振りをして去っていった。
さてどうするか。
帝国まではここからまたパンゲア大陸に戻り、そこからも多くの移動が必要で1ヶ月くらいかかるかもしれない。
でもまあ、行くしかないか。
「ミミとソーニャ、また、帝国まで冒険の旅になるけど大丈夫そう?」
「「はい!」」
二人とも即レスをしてくれた。
ありがたいことだ。
「お姉ちゃん」
女王から妹の顔に戻ったララがミミに呼びかける。
「ララ、安心して! ランスを名実ともに私のご主人様にしてみせるからね!」
「うん! お姉ちゃん頑張って! 気をつけてね!」
一体ミミはララに名実ともにご主人様ってどんな話をしてるんだ。
そこへ、
「呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーーん!」
天に人差し指を指差し、腰に手を当てたいつものポーズをした魔神エヴァが現れた。
特に召喚した覚えはないが……。
てか今、部屋に走って入ってきたな。
部屋の外で待機して聞き耳でもたててたのか?
そもそも王居にどうやって入ってきたのだとかもツッコミはあるが。
「エヴァ、お父さんは大丈夫だったの?」
「ゔっ! …………大丈夫じゃない。罰で100年ぐらい幽閉されそうだったから逃げてきた。こちらの世界での力の制限はされちゃったけど……まだ魔王レベルじゃ負けないくらいの強さはある! ランス、私も旅につれていけ!」
なんで? と最初に思うが、戦力としては申し分ない。
「ええ? いや、それは……俺はいいけど、ミミ、ソーニャいい?」
「ミミ、エヴァには助けられた借りがある。いい」
「私もエヴァには助けられたようですのでいいですわ。仲間と認めます」
ミミとソーニャも特に異論はないようだ。
「…………エヴァのお父さんって誰なの? 後、念の為、聞くけど後でお父さんに俺たち怒られないよね」
「えーと、うーんと、たぶん……大丈夫だと思うけど……後、お父さんは……ハーデス……冥王ハーデス」
「冥王ハーデス!? それに……たぶん?」
「たぶん……」
冥王ハーデスのお怒りなんか勘弁だ。
……まあと言っても、最悪巻き添えを食らったとしても、命までは取られないだろうし……あまいいっか。
こうして俺たちは新たな仲間の魔神エヴァと共にラゼール帝国へと向けて旅立つこととなった。
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