第2話

「鹿崎さん、おはようございます〜お早いんですね。ふわぁ〜」


「おう、おはよう二ノ瀬。来週提出のレポートあるからな。ところでよく眠れたか?」


「はいっ!もうバッチリ!3日は寝なくても活動できるぐらいには!鹿崎さん、レポートファイトです!ところであの、朝ご飯作ったら食べますか?目玉焼きとトーストにしようと思ってるのですが……」


「作ってくれるのか?!是非是非!いやぁ、ありがたい!これ終わったらコンビニに弁当でも買いに行こうかなと思ってたんだ」


「そうですか!じゃあ作りますね。出来たらメールしますので来てください。それでは」


「はーい」


〜管理人室〜


「鹿崎さん、目玉焼きどうですか?美味しいですか?」


「ああ!黄身が硬めで俺の好みをわかってる!ありがとう!」


「実を言うと私も硬めが好きなんですよ!とゆうことは鹿崎さんとは気が合うってことですよね!どうです?私の専属清掃員として永久就職しては。絶対楽しいですよ?」


「それだけで気が合うって軽率すぎやしないか?」


「そうでしょうか?食べ物で気が合えば大抵は合うっていいますけど?」


「んなわけあるか!とゆうか、それ一つだけで判断すんなよ……」


「ちなみに私はりんごのジュースが好きです。鹿崎さんはなんの飲み物が好きですか?」


「市販されている水。知ってるか?水って味があるんだぜ?さっぱりした味とか!」


「好みが変わったんですか?私の記憶が正しいなら以前りんごのジュースが好きって言ってたような気がするんですが……」


「なあ、人って好みが変わるんだぜ?確かに二ノ瀬の言う通り以前俺はりんごのジュースが好きって言った。けど、水のおいしさに気がついちゃったんだよ」


「そうなんですか……。じゃ、じゃあ、鹿崎さんは朝起きたらまずなにしますか?」


「俺か?俺はな、顔を洗うな。そうすることで1日が始まったって感じることができるし、眠気を飛ばすことができるからな」


「私もですよ!朝顔を洗って今日も管理人として頑張ろうって気合いを入れるんですよね。私たち気が合いますね♪」


「それだけだと本当に気が合うかわからないって」


「じゃあ次はお風呂で湯船に浸かるときに右脚から入りますか?それとも左脚からですか?」


「俺は右脚からだな」


「私もですよ!ほら、気が合いますね!」


「二ノ瀬って右利きだろ?」


「ですね」


「右利きだから右脚から湯船に入るんじゃないのか?知らんけど」


「そうなんですか?でも、私と鹿崎さんは右利きなので気が合うどころか相性抜群なのでは?!」


「二ノ瀬、右利きの人は多いんだよ。だから大抵の人とは気が合うぞ?」


「むぅ!じゃあこれはどうです?ざる蕎麦を食べたときに麺つゆは全部飲む派ですか?それとも飲まない派ですか?」


「飲む派だな。塩分補給になるし、それに美味いからな。麺つゆ」


「おお!私もですよ!麺つゆって甘しょっぱくて美味しいですよね!また気が合いましたね!もういい加減認めてくださいよ。私たち相性がいいって」


「好きなものとかが一致=相性がいいにはならないからな?その中にプラスアルファで価値観や考え方が同じじゃないと相性がいいっていえないぞ?」


「私は価値観や考え方を鹿崎さんに合わせるので問題ないです。どうです?相性抜群ですよね?」


「いやいや待て待て!なんでそうなるんだよ?!自分の価値観とか考え方はないのかよ?!」


「?私は鹿崎さんといられるなら鹿崎さんの価値観、考え方に変えますが。それが何か?」


「その時点で価値観と考え方があってないんだよ?!わかる!?」


「なんでですか?価値観と考え方を相手にあわせるだけで同じになりますよ?ほら、相性が良くなりましたね!」


「えっと……」


「なりましたよね?」


「ナリマシタ!」


「ですよね♪それじゃあ専属の清掃員になりますよね?」


「それはちょっと遠慮しておこうかな。とゆうかそもそも来年から俺、違うアパートに引っ越ししようと考えてるし」


「ゴホッ!ゴホッ!」


「大丈夫か?!」


「大丈夫なわけないですよね?!飲み物を飲んでいるときにそんなおかしな冗談を言わないでくださいよ!」


「冗談じゃないんですけど……」


「はぁ?!なんで?」


「大学が来年隣町に移転するんだってさ。なんか維持費削減とか老朽化してるからっていう理由で文系、理系、本部がひとつのキャンパスに集約されるんだって。だから新キャンパスの近くのアパートにでも引っ越そうかなと。もう既に部屋探しを開始してるよ」


「隣町ならここからでも通えますよね?別にアパートを変える必要もありませんよね?」


「通えるっちゃ通えるんだが、交通費がかかるからな。隣町に住むことによって交通費を抑えることができるし。大学生にとって交通費があるかないかで生活の質が変わるからね」


「鹿崎さんは私のことが嫌いなんですか?」


「なんでそうなる?!ただ利便性と金銭面を考慮してだな!?」


「だったら私から離れないでくださいよ!交通費は私が出しますから!」


「二ノ瀬にそんなことさせられるわけないじゃないか!」


「私、鹿崎さんのためならなんでもできますよ?だって私、鹿崎さんのことがあの時から大好なんですから!」


「……え?マジですか?」


「はい……」


「ちなみにあの時とは?」


「以前いた態度が悪い住人に注意した時、その人が逆ギレして私のこと殴ろうとしてきましたよね?その時に助けてくれましたよね?そしてその後、『怖かったろ?でも、二ノ瀬は間違ったことはしてないから自信持て』って優しい言葉をかけてくれただけじゃなく頭を撫でてるくれたじゃないですか。その時から好きになってしまいました……」


「あー、あったなそういうことが。じゃあ昨日のあの時っていうのも?」


「……はい。好きだから心配したんです。いつも出迎えてるのも早く話したいからで……」


「じゃあ専属清掃員っていうのは雇うんじゃなくてまさか……」


「そうです。鹿崎さんの思ってる通りです……」


「じゃあ結婚を前提として付き合いたいってこと?」


「……はい」


「こちらこそよろしくお願いしますって言いたいところなんだが、新しいキャンパスの近くのアパートに……」


「さっきも言ったけど、私は鹿崎さんのためならなんでもできます!だから……!」


「はぁ〜、まったく。じゃあわかった。付き合うよ」


「じゃ、じゃあ別のアパートに引っ越さない?」


「そうだな」


「私から離れない?」


「そうだな」


「嘘じゃないよね?」


「そうだな」


「……言質とったからね?ちゃんと携帯に録音しましたから。私のこと裏切らないでくださいね?」


「そこまでしなくてもよくね?」


「私、そうゆうのがないと落ち着かないんですよね」


「相手を信用してないってこと?」


「違いますよっ!信用してるんですが、その、不安になるんですよ。捨てられるんじゃないかって。だから証拠を聞くことで心を落ち着かせるんです」


「なるほど。まあ、それで心が落ち着くのならそれでいいか」


「ゆうくん……!」


「いきなりどうしたんだよ?!とゆうかゆうくんってなに?!」


「愛称ですけど……。だめ、ですか……?」


「ダメじゃないです」


「じゃ、じゃあ私のこともゆーちゃんって呼んでください」


「今?」


「そうです」


「ゆ、ゆーちゃん」


「ゆうくんに呼ばれちいました♡うれしいです♡」


「あのー、頬擦りをやめていただけると……」


「やーだ♡」

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