前日譚 小春日和前 十七、粉骨砕身ⅴ/日常ⅲ /萌え出ずるⅳ


【注意】

 今回は鬱回です。さらに残酷なシーンがあります。苦手な方は飛ばして下さい。

 次回、概要を書いておきます。


◉登場人物、時刻

⚫︎粉骨砕身ⅴ

〈戸田方〉

大久保六郎兵衛尉 高雲斎家臣。

保坂式部     保坂平左衛門の叔父。


〈南武方〉

南武刑部大輔  棟梁家の宿老。大身の國人衆。

        前棟梁に妻を娶らせた

        『当國棟梁之伯父』。

櫻井余呉右衛門 南武家の重臣。

        先陣を務めていた。壊滅後、

        先陣の残余を集めつつ、川を渡

        り、迂回して後方へ移ろうとし

        た所、国府から移動していた刑

        部大輔と合流する。


⚫︎日常ⅲ

保坂平左衛門  大久保六郎兵衛尉の家臣・

        家子いえのこ

        親族衆で今回が初陣。


 この五人は主人公ではありません。


巳正みせいの刻 午前十時から午前十一時


⚫︎萌え出ずるⅳ

????    主人公。今回は出番あります。

        数え年で八歳。棟梁家の庶長

        子(側室から生まれた長男)。

        筋肉教徒。

伊兵衛     村の中で主人公が侍身分である

        事を唯一知っている子供。

        数え十五歳。

        今回の石合戦で副将を務める。

悟助      主人公が参加する村の大将格。

        大柄で乱暴な典型的なガキ大

        将。総身に回りかねる知性。

        対戦相手の与兵衛とは仲が

        悪い。自分より大柄な主人公が

        気に入らない。筋肉教徒。


与兵衛     相手方の大将。腕力も知恵も悟

        助と良い勝負。筋肉教徒。

太助      御陵保ごりょうのほの大将


午正うませいの刻 正午から午後一時

巳初みしょの刻 午後一時から午後二時


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前日譚 小春日和前こはるびよりのまえ 十七、粉骨砕身ⅴ/日常ⅲ /萌え出ずるⅳ


庚戌かのえいぬ二年長月十六日 巳正みせいの刻 保坂式部(戸田方先陣)


 本陣に戻り、空になったうつほを交換する。その時、殿との間で先陣が攻撃を続行すべきか、部隊の再編を優先するかで話し合いが持たれ、結果、攻撃を続行する事が決まった。


 先陣は騎馬のみの先行で敵本隊に攻撃を加え、その後、再編が済んで推し出してきた本隊先手と交代し、後方に下がって部隊再編を行う。

 一番おいしい所を名族の多い本隊の武者に|譲〈ゆず〉る形にはなるが、この戦で常に先手さきてを務めてきた我ら大久保党としては、先陣は譲れない。


 我らは用意できなかったが、乗替用の馬を持っている大久保の殿は替え馬に乗り替えておられた。やはり、替え馬があるとこういう時に便利である。武者たる者、多少無理してでも替え馬を用意すべきか……

 そのような事を考えながら、並足でゆるゆると進ませる。

 馬も疲れている。いざと言う時のために無理はさせない。


 (至 山地)         (至 寺倉)

 道               道   川

丘丘道丘丘丘丘丘丘丘丘崖崖崖崖丘 道  川川

丘丘道道丘丘丘丘 丘道道道道道道道道  川川

丘丘丘道丘丘丘  道道崖丘丘丘崖 道   川

丘丘丘崖道丘崖 丘丘丘丘崖丘崖  道   川

 崖丘丘道崖崖 崖崖崖崖丘丘崖林林 道  川

崖崖丘   (尾根筋)  丘崖崖林 道  川

丘丘丘丘丘丘崖丘丘丘丘丘丘丘丘丘林 道  川

丘丘丘丘丘丘崖丘丘崖崖崖丘丘丘林林『戸』 川

丘丘崖崖崖崖丘丘丘 丘崖丘     道  川

丘丘丘丘崖崖丘丘   丘      道  川

 丘崖崖崖丘      「木花集落」道  川

             (南武方)道  

浅瀬小川小川小川浅瀬小川小川小川小浅瀬小川小

丘丘丘丘丘丘丘丘    「木花集落」道

丘崖丘丘崖丘丘崖丘崖「神」(南武方『先』

丘丘丘崖丘丘丘崖崖丘丘崖      道

(尾根筋・戸田方目標)道道道道道道道道  川

崖崖崖崖崖丘丘丘崖崖崖崖林林    道  川

崖崖崖崖崖崖崖崖崖崖丘丘林 道道道道  川川

丘隘路隘路隘『南』隘路『尾』林林川川川川川川

道川川川川川川川川川川川川川川川川川川川川川

(至 渡の郷)

『戸』=戸田本隊 『先』=戸田先陣

『南』=南武本隊 『尾』=南武軍最後尾

「神」=神社

隘路あいろ=人一人、馬一頭通れるのがやっとの狭い崖道




 ヒュン


 その時、音が聞こえた。


 ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン



 死神の鎌の音が。



何処どこだっ!!」

「右手っ、山の上かと思われますッ!」


 矢が飛んできた。

 我らを押し包む様に矢の雨が降っている。


 ドウッ


 馬が射倒され、投げ出される戦友とも

 倒れた馬に足を巻き込まれ、抜こうと足掻あがいていたが、身体に何本もの矢が突き立ち、やがて動かなくなった。


「前に出ろ!これだけの矢量だ、もう直ぐ止む。山の敵がうつほを替える間に、隘路あいろの敵の最後尾に肉薄せよ!敵と混ざってしまえば、もう矢はてない!」



 ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン




 しかし、無情にも、



 ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、 ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュンヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュンヒュン、ヒュヒュン、ヒュ、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュン、ヒュヒュン、ヒュンヒュン、ヒュンヒュン



 矢の雨は止む事がなかった。



 尊敬すべき先達が、

 何呉なにくれと世話をした良き若者が、

 気心の知れた友人が、

 そしてあおいで来た大久保の殿が、

 ……百戦錬磨の大久保党の勇士たちが、


 矢の雨の中、次々と倒れて動かなくなっていった。



 …………いつの間にか、自分も横倒しに倒れていた。もう何方どちらが前かも分からず、それでもいずって進んでいた。

 死神の鎌の音が次第に遠くなる。もう、痛みは感じない。このまま、何処どこまでも歩いていけそうだった。


 そうして、世界は白くなって消えていった。





 (至 山地)         (至 寺倉)

 道               道   川

丘丘道丘丘丘丘丘丘丘丘崖崖崖崖丘 道  川川

丘丘道道丘丘丘丘 丘道道道道道道道道  川川

丘丘丘道丘丘丘  道道崖丘丘丘崖 道   川

丘丘丘崖道丘崖 丘丘丘丘崖丘崖  道   川

 崖丘丘道崖崖 崖崖崖崖丘丘崖林林 道  川

崖崖丘   (尾根筋)  丘崖崖林 道  川

丘丘丘丘丘丘崖丘丘丘丘丘丘丘丘丘林 道  川

丘丘丘丘丘丘崖丘丘崖崖崖丘丘丘林林『戸』 川

丘丘崖崖崖崖丘丘丘 丘崖丘     道  川

丘丘丘丘崖崖丘丘   丘      道  川

 丘崖崖崖丘      「木花集落」道  川

             (南武方)道  

浅瀬小川小川小川浅瀬小川小川小川小浅瀬小川小

丘丘丘丘丘丘丘丘    「木花集落」道

丘崖丘丘崖丘丘崖丘崖「神」(南武方)道

丘丘丘崖丘丘丘崖崖丘丘崖      道

(戸田方目標)『刑』 道道道道道道道道  川

崖崖崖崖崖丘丘丘崖崖崖崖林林   『先』 川

崖崖崖崖崖崖崖崖崖崖丘丘林 道道道道  川川

丘隘路隘路隘『南』隘路『尾』林林川川川川川川

道川川川川川川川川川川川川川川川川川川川川川

(至 渡の郷)

『戸』=戸田本隊 『先』=戸田先陣殲滅地点

『南』=南武本隊 『尾』=南武軍最後尾

『刑』=南武先陣残余と南武刑部大輔

「神」=神社

隘路あいろ=人一人、馬一頭通れるのがやっとの狭い崖道



庚戌かのえいぬ二年長月十六日 巳正みせいの刻 保坂平左衛門(戸田方本隊)


「おいっ!」

 挨拶周りに忙しい私の肩を誰かが乱暴に掴んだ…………振り返ると、先程挨拶をした人だ。顔面が蒼白になっている。


 …………?

 気が付かなかったが、何やら周りが騒がしい。

 何ぞあったのだろうか?



 その時、対岸の山から法螺貝ほらがいの音が何層にも聞こえて、何本もの赤い旗が林立した。


「……ああっ…………」

 誰かの慨歎がいたんが聞こえる。


 そこから、矢の雨が降っている。

 その降っている先に目を移すと、





 …………………………………………………………


 痛々しくきずを負いながら逃れようとする馬が、点々と転がる何か黒いシミの様なものが、道を汚していた。


 理解わかりたくないのに理解わかってしまう。

 大久保の殿が、御世話になった先輩が、夢を語り合った友が、そして父が死んでから親の様に私を育ててくれた優しい叔父が、

 大久保党の仲間たちが点々と、一人残らず倒れて動かなくなっていた。







 世界から色が消えた。




「おいっ、退きかねを鳴らせ!濫妨狼藉らんぼうろうぜきに向かった百姓衆に変事を知らせろ!」


 殿の声がする。殿の声?

 先程、百姓衆の事を教えてくれた第二陣の人の声の様な気もする。殿の許しも得ず、勝手に退きかねなど鳴らして良いのだろうか?

 灰色になった世界の中で、そんなどうでも良い事を考えていた。



庚戌かのえいぬ二年長月十六日 巳正みせいの刻


 集落の中の或る家の中で、落ちていた里芋をむさぼり喰った。

 それから、かめを覗いたり、床板を外して土を掘ったりした。


 爪が割れて、がれて血がにじむ。

 気にならなかった。


 今年の不作はことに酷かった。

 例年、秋は作毛が取れ、一息吐ける時期だと言うのに、今年はひでり・大雨・大風と天災続きで、何も実らなかった。


 死んじまう、このままじゃ間違いなく死んじまう。この濫妨取らんぼうどりで稼がねぇと間違いなく生きられない。

 片っ端から漁り、幾つかの戦利品を見つけた。

 喰い物は見つけたそばからむさぼり喰う。


 そうして一息吐いた頃。


 カンカンカンカン、カンカンカン!


 お味方の陣から狂った様に鉦が鳴らされた。

 何ぞあったのだろうか?

 確かこの合図は戻れという意味だった筈だ。



 しかし、その時気が付いた。

 貪り喰っちまった。

 家で待つ両親とお母ぁと子に持っていく食い物をこさえないと。

 

 銭こは見つけていたが、直ぐに食い物に変えられるとは限らない。何か食えるものを持って帰らないと、お母ぁたちは明日にでも死んじまうかも知れねぇ。


 あっちこっちをひっくり返していると。

 

 カッ、カッカッカッ


 雨の様に何かが降ってきて、屋根に当たる音がした。木と木がぶつかる様な硬い音。

 外から「……ぁぁっ」と言う様な悲鳴とドサッと大きな物が倒れる音。


 でも、家族に食える物、持って帰ってやらないと。

 そうして家中ひっくり返して、やっと一握りの米を見つけた。それを大事に大事に握りしめる。


 背負子しょいこに銭この入ったかめを乗せ、きつく縛り付ける。手には大事な大事な米。


 ……外を見ると矢の雨が降っていた。

 先程からの硬い音はこれだったらしい。

 慌てて家に入り、戸板を外して左手で持つ。

 米は捨てられない。家族の命だ。


 他の家にも入りたかったが、これは一度戻るべきだ。陣中に戻り事情を話せば、この銭こを食い物にえてくれるかも知れない。生きて帰らなきゃ。

 


 意を決して外に出る。

 どうしてそんなに矢を持っているのか、まだ止まない。でもお味方の陣までそう遠くはない、大丈夫。


 ……其処彼処そこかしこで倒れるモノは見えない振りをした。昨日まで知り合いだったナニか。見ると自分も引きずり込まれる様な心地がした。



 順調に進み、あと少しで帰れると思ったその時、


 カッ!


 薄い戸板を貫いて、右肩に矢が突き刺さった。

 瞬間、指の力が抜けて中の米がこぼれ落ちそうになる。

 

 零せねぇ。家族の命は零せねぇ。

 米を零さない事に集中し過ぎたせいか、


 ガタッ


 左手の戸板を取り落としてしまった。



 ヒュンヒュン、ヒュン


 矢の雨が降る。

 もうあと少しでお味方の陣。

 走った。

 両手でしっかりと米を持つ。


 ガチャン!

 背中で硬い音がして、

 かめが割れて入っていた銭こが散らばった。



 ぁぁっ、この手の米だけじゃ足りない。

 銭こも拾わないと。

 でも、両手に米を持っていて、如何どうして銭こが拾えるのだろう。


 その瞬間とき、百姓の身体を熱いモノが駆け抜けた。

 百姓が自分の身体を見下ろすと腹から奇怪なモノが突き出て、それに絡む様に赤黒い太いヒモの様なナニかがまとわりついていた。

 世界が傾く。


 帰らないと、帰らないと。

 家で家族が待っている。腹を空かして待っている。何か食い物を持って帰ってやらないと…………

 帰らないと、帰らないと………………





丙寅ひのえとら三年神無月かんなづき十日午正うませいの刻 悟助


 正午近く。風は温まり、鳥は唄う。

 草が風になびき、青い空気を届ける。

 臭気とも言わない微かな香りが、新鮮な心持ちにしてくれる。

 良い日和だ。


 だが、俺の心には嵐が吹き荒れていた。

 


 何なんだ!あのヨソ者は!

 デカい面しやがって!

 ヨソ者が先頭ド真ん中を歩いているのは何なんだ!

 周りの奴らも周りの奴らだ!

 いつの間にかヨソ者になつきやがって!

 

 …………いつの間にか半裸なのは何なんだ!

 妙な歩き方をして、時々、珍妙な構えをするのは何故なんだ!

 …………どうやったら、その筋肉を手に入れられるんだ!筋肉稽古の後、筋肉を休ませるには何をしたらいい?筋肉に嫉妬したのは初めてだ!

 ……あの腹直筋下部にむしゃぶりつきたい。



 …………さて、それはそれとして、アイツが俺たちを敗北から救ったのはたしかなことだ。あのまま、何も考えずに歩いていたら、相手の伏兵にやられていた事だろう。

 気に入らないが、それだけは確かだ。気に入らないが。



丙寅ひのえとら三年神無月かんなづき十日巳初みしょの刻 悟助


 そうこうしている内に『市辺の一枚岩』と呼ばれる小高い丘のふもと、相手の見える位置までやってきた。

 敵は二十八人居る。先ほど襲ってきた伏兵は病欠と言っていた七名だと言う事だ。

 …………やる事がきたねぇ。



道 丘崖崖崖崖崖崖崖森森『神』河河河

 道道『小高い丘』崖森森 道 河河河

森森崖     崖森森森 道 河河河

林森森崖崖崖崖崖森林  『御』草河河河

  林林林林林林林林   道 草河河河

             道 河河河

   この辺り草場    道河河河

             道 河河河

 『御』=御厨みくりや(主人公)の保 

 『神』=神楽かぐら(敵方)の保


 敵大将の与兵衛の奴、何が楽しいのか、ヘラヘラ、ヘラヘラ笑ってやがる。気に入らねぇ…………

 今、岩で頭カチ割っても、一発だけなら誤射かも知れない。


 その時、半裸のヨソ者が前に進み出ると、


 ………………………。


 妙な構えを始めた。

 両腕を肩から上げて力瘤ちからこぶを作ったかと思うと、流れる様に腕を下げて片腕の手首を掴み、はすにかまえると、三角筋から上腕三頭筋を盛り上げ、ピクピクさせやがった。

 そして意味不明にニッカリと相手に笑いかけた。


 ……で、何が起こるんだ?

 ヨソ者は此方こちらに戻ってくると、やり切った顔をして、笑った。




 ………………意味が、分からねぇっ!

 未開の部族の戦闘前舞踏か何かかよ。

 こんなのが俺たちの風習だと思われて、嘲笑わらわれたらたまらん!


 与兵衛の顔を見ると…………何か引きつって固まってた。

 ………………………………何か知らんが、勝った。



丙寅ひのえとら三年神無月かんなづき十日巳初みしょの刻 伊兵衛


 午後に入って、鋭い冷たさの刃を持っていた風もぬくまっている。

  風は送り風。今のうちに始めてしまいたい。


 緊張感のない遣り取りをしていた悟助と与兵衛だが、ピリッとした空気が戻ってきている。

 敵味方の両大将のまとう空気はそのまま、両陣営の空気になり、戦機は熟した。


 そんな時、

「調子に乗っていられるのは、これまでだ!」

 与兵衛が声を上げた。


「我ら、太助始め、八田村、御陵保ごりょうのほの住人、総勢二十名!義あって、神楽かぐらの保、与兵衛どのを御助けいたす!」

 ……次の言葉は思ってもいない所から、降ってきた。左手、小高い丘の上にいつのまにか、新たな集団が現れていた。


道 丘崖崖崖崖崖崖崖森森『神』河河河

 道道『小高い丘』崖森森 道 河河河

森森崖 『陵』 崖森森森 道 河河河

林森森崖崖崖崖崖森林  『御』草河河河

  林林林林林林林林   道 草河河河

             道 河河河

   この辺り草場    道河河河

             道 河河河

 『御』=御厨みくりや(主人公)の保 

 『神』=神楽かぐら(敵方)の保

 『陵』=御陵ごりょう(敵方援軍)の保


 たまらず声を上げる。

「途中参加など、認められぬ!これは神事である!」

 かぶせ気味に太助が叫ぶ。

「我ら、日頃より与兵衛どのと付き合い、心底を良く存じておる!その心に一点の曇りなし!神仏も御照覧あれ、我らはきっと、与兵衛どのを勝たせてみせる!」

 そうして御陵ごりょうの保の連中は、旗を挙げ、かねを打ち鳴らした。



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