【注釈】封建領主と軍役

【注釈】封建領主と軍役


 この話は架空戦記ですが、なるべく現実の歴史研究を準拠しています。

 但し、私自身が歴史研究をやった事が無く、本に書かれている事、ネットで調べた物を読んで、まとめているだけに過ぎないので誤っている可能性は多々あり得ます。

 あくまでこの「作品世界」の設定と考えていただければ幸いです。


 長い文ですし、ご面倒であれば読み飛ばして頂いて結構です。

 この話が少し特殊で今までの「常識」からすると少し違和感があると思い、一応、致命的な物のみ書いています。


 「ん?おかしいな」「どう言う事?」と思った時に読んで頂ければ、有り難いです。


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一章 棟梁襲名 【注釈】封建領主と軍役


 我々が考える『戦国期の戦』と言うものは、例えば槍隊、弓隊、鉄砲隊などが整然と並び、軍太鼓やかねの音に合わせ、一矢乱れぬ呼吸で三間槍を集団で突き合わせたり、矢などを放ったりするイメージである、と思います。


 ドラマや小説でお馴染みのこの場面は、しかし実は戦国時代でも中盤から終盤にかけてであり、それどころか、そもそもこんな光景は無かった、とする研究者の方も居られるそうです。



 理由はあります。

『戦国期の軍隊』と言うものは、『傭兵』である足軽衆を除けば『名田』(非課税地、知行地)を預けられる代わりに武士に課せられた軍役(戦争参加義務)によって集められたからです(前述の通り、国によっては百姓身分のまま課税の代わりに軍役を務める『在郷被官』もいた訳ですが、ここでは置いておきます)。


 それは、例えば武士一人に「貴方はこれだけの名田を預けられているから槍を○人、弓を○人、鉄砲○人etc.連れてきなさい」と言う形でした。


 そして、その連れられた槍兵や弓兵は主人である武士の周りを警護する形で配置され、軍隊全体で「槍だけの隊」、「弓だけの隊」と言う形で配置する事は出来ません。


 当時は國人衆を始め被官の武士も独立性が高く、いかに大名と言っても『武士の個人資産である兵』を取り上げる事は不可能でした。


 そして武士同士で、同じ主君に仕えるので有れば、何百騎の軍役を務める武士も十余騎しか軍役しか務めない武士も『同格』と言う建前がありました(勿論、実際の発言力などは異なります)。


 なので『戦国期の戦場』ではどう言う光景だったのか?と言うと、

『一騎の主人(武士)をお供の武士、被官衆、在郷被官などが取り囲み、人数もバラバラなそれらの集団が横一列に並ぶ』と言う形になります。


……戦いにくそうですよね?戦い難いんです、コレが(笑)


 敵方も日本の武士の場合、相手も同じ状況なのですが、外国相手だった元寇の際、緒戦で劣勢に陥ったのは、(一説によると)この所為だったと言われています。

 恐らく武士達自身もその欠点を理解していた、と思います。


  それでも根本的な原因が『知行地と軍役』(『御恩と奉公』)と言う封建制の大前提だった為にどうしようもありませんでした。



 私が考えるに解決への努力として『寄親・寄子制』があります。『寄親・寄子制』は政治的なシステムや色々な面がありますが、こと軍事の側面で言えば封建制を否定せずに、軍集団の人数をある程度、ならす事ができます(もちろん守備を任される土地の重要性や寄親になる人物と大名家当主との関係性などで差は生まれますが)。

 指揮官である寄親を筆頭に大人数の武士と少人数の武士を組み合わせればある程度、軍集団の人数を平均化させる事が出来ます。


 様々な努力を積み重ねながら結局、根本的な解決は戦国中期以降の(領土が広がる事による)大名権力の(配下である武士層への)支配力の強化を待たなければなりませんでした。


 戦国中期以降、生き残り支配力を増した大名同士が配下の武士から兵士を取り上げ、槍隊、弓隊などを結成し、集団戦を行う事により、更に戦場が熾烈しれつを極める事になります。


【主要参考文献】

◉西股総生氏「戦国の軍隊」 

        角川ソフィア文庫(2017)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも中世軍事考証をされている西股総生先生の一冊。初心者の私でも非常に読みやすい、分かりやすい本です。


 今回もお読み頂き有難うございます。

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