一章 棟梁襲名 四、大堂辻前大隅
話は二十日程、さかのぼって……
◉登場人物、時刻
???? 主人公、今回は出番なし。
大堂辻前大隅 軍役衆を務める豪農、在郷被官。
卯初の刻 午前5時〜6時
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一章 棟梁襲名 四、
この國の春は美しい。
……厳しい冬の名残が残る寒い土地だが。
短くとも、いや、だからこそ花々が今を限りと咲き誇る、
……例えこの國が我らを愛さなかったとしても。
この國は
我が
多数の下人を抱える豪農で、村の
その事実の前では血筋など無益である。
棟梁家の一族で、遥か昔、武名を轟かせた勇者が再興した
我は
……飯を食えずとも朝日は昇る。
で、あるならば……
……考えてみれば「春」は「あけぼの」であったか。ならば冬も春も朝が良い、という事だ。
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる」
………………
腹は減っても、
今は辛くとも、明日を信じる活力に成り得る。
こうして見苦しく
自分の苦しみは無駄では無いのだ、と教えてくれる。
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◉用語解説
出典 清少納言『枕草子』より
【免田】
本来の意味は古代末期から中世日本において『国が規定の課税を免除するのを認めた土地』ですが、この作品では『知行地として与えられたのでは無く、あくまでも課税地ではあるが、軍役を務める代わりに課税を免除された土地』と言う意味で使っています。正式な用語の使用ではありません。
【二鑓二領】
ここでは二鑓は二本の槍持ち、二領は具足を付けた兵二人。合計四人では無く、一本ずつ槍を持った兵を二人出す軍役。
【受領名】
朝廷から正式に許される事なく、武家が自ままに名乗った官職名。自分で決める場合と主家から許される場合がある。親の受領名を引き継ぐ場合も多い。百家名ともいう。
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