ライラ

泣きわめくエルフの女子供たちをなだめるのにすごく時間がかかった、ゴブリンの死体はいつの間にかストレージとかいう便利機能でレッサーボアの素材と一緒に部位ごとで分けられていた、いつの間にレベルも上がっていたようだが初期からこんなチートじゃレベルが上がったところで何も変わらないだろう。それにしてもどのエルフたちもめちゃめちゃ顔がいい。驚くほどに美形ぞろいだった、そういえばなんと森を歩いているとき鑑定という異世界万能スキルと名高いものを手に入れてしまったのだ、もちろん神の加護で。

ダークエルフやらハーフエルフやら普通のエルフやらがごちゃ混ぜになって住んでいる集落であることが分かった。私の知識ではエルフは純血主義というか…はぐれ物を許さない感じな種族だったような…?


まあ私はこの世界の事情明るくはないからこの辺りは黙っていることにしよう、ととりあえず一番落ち着ているエルフの女の人に話を聞くことにした。銀、というより白寄りの艶のある長髪を緩くおさげにまとめて桔梗のような形の深紅の綺麗な髪飾りで髪をとめていた。身長は私より低くて瞳は髪飾りと同じ赤い目をした一際綺麗な女性だった、白とライムグリーンのアオザイの様な服は血やら土埃やらで汚れている。


「助けていただき、ありがとうございます、私はライラ…いえ、ライラと御呼び下さい」


「は、はあ…。」


ライラと名乗った女の人は途中口ごもったのには引っかかったが私は何も言うことができず曖昧に相槌だけ返した。


「男衆は三人を除いては亡くなっていました。三人は治療中です」


ゴブリンたちが殴っていた赤い水たまり…考えないようにしよう。確かに集落の中は酷い有様だった。私は少し来るのが遅かったようだ。申し訳なさで胸がいっぱいになる、私はいつもこうだ、なんだ力を手に入れたって本質は変わらないじゃないか。なんだかふらついてきた、ライラさんが何か言っているが声が強く反響していて聞き取れない、霞む視界で横たわる三人のエルフに近寄って「ハイヒール」とつぶやくと視界が暗転した。周りから叫び声が聞こえる、そして三人の起き上がる気配がして、せめて起きてくれてよかった、とそこまで思って思考を手放した。

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