記録 3ページ目
とてもユニークな入学式が終わり、教室で先生からこれからのことについて聞いた俺たち新入生は、帰路につくことになる。
そう、俺は家に帰りこれからこの学校に通うのだという実感を噛み締め、今日の疲れをゆっくりと癒すはずだった。もう一度言おう。はずだった。
「なんでここにいるんすか」
そう、俺は先輩、到底先輩とは思えないのでこれから先輩と呼ぶつもりはないが、あの女にカツアゲされているのである。
「ねぇねぇ君、お昼ご飯奢りなよ」
「先生呼びますよ」
「それだけはやめて!? ただでさえ原稿置いてきたせいでこっぴどく怒られたんだから」
わー、ここにカツアゲしてくる輩がいますよー。なんて、入学初日に大声で叫べるほど俺の肝は据わっていない、残念ながら。
周りのクラスメートは通りすがりに「どんまい」と言いながら教室を出ていく。見捨てられたよ、俺。入学初日にクラスメートに見捨てられたよ。
「ほら、私が怒られたの君のせいだからさっさと奢りなさい」
「どう考えてもあんたのせいっすよね!?」
「そんなことないよ、時間がある人が時間がない人になんか恵んでくれるのは普通でしょ?」
「普通じゃないっすよ! あんた色々とおかしいっすよ!?」
俺がそういうと、自覚はある、と返された。自覚あるなら自重しようよ!?
「とにかく君は私にお昼ご飯を奢る運命なの! ほら、行くよ」
「なんでっすか! 意味わかんないっす!」
するとあの女は、細い腕からは考えられないような力で俺をずるずると引きづって行く。え、行くの? 俺、この人に奢んなきゃいけないの?
俺、金欠なんだけど? この人のせいで俺明日から金が無いことを嘆かなきゃいけないの? なんで? 頭の中はてなマークでいっぱいだわ。あと怒りマーク。
引きづられていく俺を見た先生と先輩たちは、あぁまたか、みたいな目で見てくる。ねぇ、誰か注意しろよ。後輩、生徒が引きづられてんだぞ。ねぇ!?
そんな俺の願いも虚しく俺はいつの間にか校門の前まで連れてこられていた。ここまでの道中、皆が「どんまい」と言ってきた。助けろよ!
俺の嫌そうな顔に気づいていないのか、気づいていないふりをしているのか、この女は俺の表情になど構わずとても嬉しそうな顔をしてる。
ほんとにこの女蹴り飛ばしてやりたい。
「さぁ、行くよ!」
「いやっす! 絶対に奢りたくないっす!」
学校中に俺の悲鳴がこだました。
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