記録 4ページ目

校門を出た後に力尽きた俺は抵抗を諦め、渋々先輩について行くことにした。


昨日ボヤ騒ぎがあったせいであんまり寝てないんだよ。




「はぁ……」


「あっ、ため息ついたら幸せ逃げるよ」




あんたのせいでもう幸せ逃げてるので大丈夫です。あぁ、金欠だよ明日から。




「で、どこ行くんすか」


「んー、やっぱり駅前のハンバーガー屋さんかな」




なんと、神は俺を見捨てていなかったらしい。駅前のハンバーガー屋、今日は一部商品半額なのだ。


きっと、日頃の行いが良かったおかげだな。




「ついたよー、お腹すいた、お腹すいた」




『一部商品半額!!』と書かれた派手な広告を見る。えっと、半額はチーズバーガーとチキンバーガーか……。あっ、あの人に伝えないと。




「せんぱ……」


「はい、ではテリヤキバーガー二つですね」


「あっ、あとメロンソーダ二つとフライドポテト二つで」


「ああああああああぁぁぁ!?」




なに勝手に注文してんの、もうお店の人作り始めちゃってるよ。取り消せないよ。


なんで半額じゃないテリヤキバーガー頼むんだよ。嫌がらせか。嫌がらせだよな。




あの人を蹴り飛ばしたいという衝動を抑えながら、先に席についているあの人のもとに行く。




「おぉ、やっと来たね君! お姉さんが君の分も頼んでおいてあげたよ、感謝しなさい」


「なにふんぞり返ってるんすか。せめて、半額のもの頼んでください」


「この店のテリヤキバーガーは絶品なんだよ」


「知らないっすよ! 人の金なんすよ、もっと大事に使ってください」




ダメだ、この人にお金の話しても無駄だわ。不思議そうな顔してこっち見てるし。この人こんなんで生きていけるのか、なんか不安になってきたわ。




ライフがマイナスになった俺のもとに店員さんがハンバーガーを持ってきた。


もう、美味しく頂こうじゃないか。色々と諦めたよ。




「いただきます」


「いただきまーす!」




しっかりと合掌してからハンバーガーを食べ始める。めっちゃ美味しい。半額じゃないけど。




チラリと俺を金欠にした貧乏神の方を見た。


うわー、食べてるときに百倍くらい可愛くなるタイプの美少女だよこの人。なんか腹立つ。こんな顔されちゃ許しそうになるじゃないか。許さないけど。


俺の目線に気がついたのか、先輩が不思議そうな顔でこちらを見てくる。




「顔になんかついてる?」


「ついてないんで大丈夫っすよ」




この人に奢るのもそう悪くないかもしれない。




「また、奢ってねー」




さっきの取り消し。こんな図々しい奴に誰が奢ってやるか。

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