第23話 武器取得

 部屋に戻った俺は、暴力を手に入れるためスマホで魔法アプリを開く。


 現在のポイントは8gp、18200point。

 ほぼ毎日貯めていたが、使用はしていない。


「たしか、武器はゴールド交換だったな」


 ゴールド交換リストを開く。

 リストの中身は以前と変わらず、5つだけ表示されている。


 若返り、パチンコ当て、宝くじ、守りの指輪、そしてSK-25補給型電磁投射砲ほきゅうがたでんじとうしゃほう

 この5つだけだ。


 デートの時に見知らぬ複数の男に襲われ、カップルの2人が殺されたなんてニュースはよく聞く話だ。俺には彼女を守る義務がある。


 俺は強い意志を持って、一番下にある電磁投射砲でんじとうしゃほうの交換ボタンを押す。

 押したその瞬間――。


 パッ


 身につけているペンダントが一瞬だけ光る。


 ……なんか光ったぞ。


 そう思っていると、サムエルの声が聞こえた。


「サムエルだ。お前が交換した武器はペンダントに収納した」


 収納?


「使い方は『レールガン』と念じるだけでよい。そいつはおもに金属を食う。弾を補充したいなら金属に触れさせておけ」


「金属を食べるんですか?」


「そうだ。食わせたもの全てが動力であり、弾になる」


「へぇ」


 食わせるって、生き物かよ。


 俺はためしに『レールガン』と念じてみた。


 (……レールガン)


 すると俺の右手に銃が現れた。

 リボルバー式じゃない、四角いオートマチックハンドガンみたいなやつ。

 重さは感じない。


 何だろう、銃を持つと何だか強くなった気がする。

 感動していると、サムエルが話す。


「その武器はお前専用だ。消したいなら『戻れ』と念じろ。離れすぎても勝手に戻る」


 本当かよ。


 俺は『戻れ』と念じてみた。

 その瞬間、持っていた銃が消える。


「消えたぞ……」

 つい、声が出る。


 銃が消えたのだ。一瞬で。

 銃刀法違反にすらならないレベルだ。


 これでいつでも武器を出せる。消せる。愛する人を守れる。

 筋力の低い俺は、武器に頼るしかないのだ。


 サムエルが話しかけてくる。


「ペンダントの充填が無ければ武器は出せない。それを忘れるな」


 そう言って気配が消えた。


 俺は魔法アプリを開き、『ペンダント充填=86消費』と書かれたボタンを押す。


 これでよし。

 今度からは忘れずマメに補充しよう。


 武器も用意したし。3日後のデートも安心だな。

 本当に楽しみだ。


 もしかして最初のデートでキスまでいっちゃうかも。

 いけるなら、もっと先も狙いたい。


 はあ、だめだな。こんなことばかり考えてしまう。

 まったく。



 ★2022年4月20日★


 午前4時。

 外はまだ暗い。


 デートは明後日あさってだが、武器であるレールガンに金属を食べさせよう。


 俺は近所のスーパーに向かう。

 そこの駐車場には、秋に捨てられた自転車が放置されているのだ。


 スーパーの駐車場に到着。

 雪は溶け、辺りには誰もいない。


 目の前には壊れかけの自転車がある。


 俺は『レールガン』と念じ、現れた武器を自転車に触れさせる。

 すると触れた部分から、まるで氷が溶ける以上にみるみる無くなっていく。


 自転車は3分程で消えた。

 ハンドルやサドルが消え、タイヤのゴムも溶け、何も残らなかった。


 まだ辺りに人はいない。

 試し撃ち、してみるか。


 俺は駐車場の近くにある1本の木に近づいた。

 あしの太さぐらいはある、木。


 俺はその木に向かって、レールガンを撃つ。

 ヒュンという音が聞こえ、腰の高さに当たった。


 だが、何も起こらない。そう思った瞬間――。


 ベキッと音が鳴り、撃った場所が膨らむ。

 そして、ゆっくりと木がこちら側にかたむいてくる。


 倒れてくる木は俺の真横まよこを通過し、バサッと音を出して転がる。

 場所が悪ければ当たっていた。


 俺は残った方の木を見る。

 膨らんだ場所には金属のような物がへばり付いており、触っても取れない。


「うーん……………逃げよう」


 俺は辺りを確認するが、やはり誰もいなかった。

 そして家に帰った。



 ★2022年4月22日★


 今日は婚活で出会ったサヤカさんとデートの日。

 映画と昼食を予定している。


 スーツは止めて、動きやすいカジュアルな装備で行こう。

 暴漢ぼうかんがきても倒せるよう、ペンダントは装着済みだ。


 待ち合わせは札幌駅。

 予定10分前に到着したが、既にサヤカさんがいる。

 俺は片手を上げて、先に声をかける。


「やっほー」

「あ、ギンさん。こんにちは」

「それじゃ行きますか」

「行きましょう」


 歩き始めた俺は、サヤカさんの手をつなぐ。自然に。

 すると、相手も手を握り返してくれる。


 これだよこれ、37年間これを求めていたんだよ。


 俺たちは手をつなぎながら、近くのビルの中にある映画館へと移動した。


 今日の映画は行列ぎょうれつのマトリックス再再生さいさいせい、最新作だ。

 ニートが数列を使ってネオニートになるアクション映画。

 俺が観たいと言ったら、サヤカさんも観てみたいと言ってくれた。


 そして2時間が経過、映画が終わる。


 内容はまあまあだった。

 俺はサヤカさんに感想をぶちまける。


「何か、まあまあな映画だったね」

「私はネオニートになる所が面白かったな。引きこもりが強くなれるの良かったー」

「あーそこ俺も感動したわー」


 そんな映画の感想会をしながら、俺たちは同じビルのレストランへと向かう。


 レストランに到着。

 食事が来るまで会話をした。


 お互いの仕事、休みの日のこと。

 そして恋人の話題になった。


「ギンさんって、今は彼女いないんですか?」

「うん。いたら婚活に参加してなかったよ」


 俺は笑顔で答える。


「それもそうですよね。私も彼氏いないです」

「へー……」


 俺は急に変なことが気になり、聞いてみた。


「そういえば、最後に男の人と付き合ったのって、いつぐらいなのかな?」

「うーんと……8年ぐらい前かな。もうずっと男の人と遊びに行ってないかも」

「そうなんだ」


 話をしていると、ウェイターが食事を持ってくる。

 そして美味しい昼食はすぐに終わった。


 2名分のスパゲッティとデザートで合計5000円。今の俺には安い。

 支払いの時にサヤカさんが少し出すとか言っていたけど、お金を多量に持っている俺の役目だ。


 会計が終わった。

 最初のデートはあっさりが良いらしいので、今日は終わり。

 次回も3日後にデートの約束をして、駅で別れた。


 俺はタクシーで帰る。


 20分程度で家に到着。

 そして俺は考える。


 サヤカさん、彼氏いたんだな。

 間違いなく俺より経験値は上だろうな。


 そりゃそうだよ。

 31歳女性で処女なんて、今の日本では発掘されていない金鉱脈と同じ。

 レアだし価値がとんでもない。


 でもしょうがないよな。

 いくら俺が20歳に若返っても、イケメン以外は声を掛けられない。

 俺は喋りが上手くないし、ナンパも出来ない。


 婚活でようやく、自分の強みである金持ちを伝えられるんだ。


 しかし婚活もなあ、20代集まれイベントには37歳の俺は参加不可だったし。

 今回の30代ぐらい集まれは、ほとんどが35~39歳の女性ばかりだったからなあ。

 若くて28歳、次に若いのが31歳のサヤカさん。


 サヤカさんとは話も合うし、俺には一番合っていたんじゃないだろうか。


 とりあえず3日後のデート、今度はキスまでいきたい。

 俺は色んな経験値が欲しいのだ。


 と、部屋の中で横になりながら考えていた。


 俺は横になったまま、スマホをいじる。

 ニュースサイトを見てみると、新宿で男性2人が行方不明と書いてあった。どうやら連続失踪事件らしい。


 新宿は怖いな。

 そう思いながら、今度はスマホで、次のデートで行く店を調べていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パチンカスの逆襲★~魔法とパチンコと宝くじでお金持ちで人生楽に暮らそう~ 緑豆デルソル @midorimameDELSOL

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ