第21話 彼女が欲しくなる

 夜18時、俺はヒゲおじさんから聞いた、合法カジノへ到着した。


 立て看板には『完全合法カジノ ゴールデン』と書いてある。


 外見はコンクリート製の一軒家。

 窓ガラスはあるが、中は全く見えない。


「大丈夫かここ……」


 俺は手動ドアを押して中に入る。


 まず入り口に見えたのは自動販売機。

 売っているのは金の板だった。


 自動販売機の奥、店の中はパチスロ台がズラリと見える。


 俺が自販機前で立っていると、店員が近付いてきた。


「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」

「はい」


「では当店のルール説明をさせていただきます」

「はい」


「当店では最初に自動販売機で純金を購入していただき、それをカウンターでポイントカードと交換、遊戯はポイントで行い、終了時にはポイントを交換するシステムとなっております」

「はあ」


「どうぞお楽しみ下さい」


 そう言って店員は去っていった。


 俺は自販機を見る。


 5千円、1万円、5万円の3種類の純金が売っていた。

 俺は1万円の純金を購入する。


 お金を入れてボタンを押すと、ガランと鳴り、取り出し口に小さなケースが落ちてきた。中には小さな金の板が入っている。


「これが1万円なのか」


 俺はケースごとカウンターに持って行き、待機していた店員に渡す。


「1万円分ですね、どうぞ」


 店員がカードを渡してくる。

 俺は返事をせずカードを受け取る。


 そして店内を歩き回る。


 店内には客が3人いた。

 女性とホスト風イケメン、そして異常に人相が悪い男だ。


 女性とイケメンは隣り合って打っており、俺が近くを通ると「解除チェリー来たぜ」「すごーい」とか、楽しそうに二人でパチスロを打っていた。


 人相の悪い男は、台の上に『ゴッドシオ』と書かれた台を打っている。


「聞いたことない台だな」


 店内には雀荘で聞いた通り、古い台が多く置いてあった。

 俺も知らない台がある。


 だが久しぶりなので、以前よく打っていた台を打とう。

 俺が座ったのは5代将軍綱吉。

 この台は最初の193回転までがチャンスなはず。


 イスに座り、カードを台の右にある機械に差し込む。画面には200枚と表示された。


 1万円でメダル200枚。

 ギャンブル性が高い。


 機械のボタンを押すと画面の数字は150枚になり、台のクレジットに50枚追加された。


 とりあえず打つ。

 100枚で63回転したが、何も起きない。


「すごいお金使うな、これ」


 他の人はこんなギャンブル台を、マジメに打ってるんだろうか。


 疑問に思った俺は、さっきのイケメンをチラッと見る。

 イケメンは隣の女性とキスをしていた。


「キスかよ。いいなあ。俺は1回しか経験がないや」


 うらやましい。

 でも俺には関係ないな。


 俺は残ったメダル100枚分を打つ。


 3枚ベットからレバーを叩き、ボタンを3つ押す。


 打ち出して5秒後。

 俺はカップルが気になり、打ちつつもキスしているのをチラチラ見てしまっていた。


 彼らはもう、2分以上はキスしているだろう。


 すると急に、自分がむなしくなってしまった。


 俺は金持ちだ。

 金持ちは女性にモテる。

 つまり、俺は女性にモテる。


 それなのに、女性とは今まで付き合ったこともない。

 なぜだ。


 俺はむなしくなった。


 結局、100枚で65回転したが何も起こらなかった。

 ただ1万円が消えた。


 イケメンと女性はいつの間にか消えていた。


 俺は店を出て、家に帰った。


 ----------


 家に帰り、部屋に着くと、急に叫ぶ。


「俺も彼女が欲しい」


 彼女がいたら、一緒にパチスロ打って、楽しく過ごせるのに。


 出会いが無いんだ。

 出会いを探そう。


 俺は出会いを求め、インターネットで彼女の作り方を検索した。


 すると、すぐ見つかった。婚活パーティーというのがあるらしい。

 しかも、ほぼ毎日開催だ。


 俺は開催地に札幌を選び、「30代ぐらいの男女集まれ~」って書いてるやつを選ぶ。男性は2500円、女性は1000円の現地払い。


 俺は20歳まで若返っているが、法律上の年齢は37歳だ。

 30代の募集に入れるのが無難だろう。


 30代ぐらいの男女が集まるイベントだし、女性も25~30歳ぐらいの女性がたくさん来ると思う。


 よし。

 いける。

 彼女を作ってやる。


 俺は婚活パーティーに申し込んだ。


 パーティーの参加人数は男性30名、女性30名予定。


 だが、俺には秘策がある。

 金だ。


 はっきり言って、俺以外の29人の男は引き立て役。


 俺が金を持っていると、それさえアピールできれば勝ち。

 おそらく女性30人中20人ぐらいは選び放題だろう。


 そうと決まれば、よし。

 今からアルニーマの高級スーツ、ロニックスの腕時計、高い装備で身を固めてやる。



 そして1週間後、婚活パーティーの日がやってきたのだった。





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