第20話 合法カジノ

 ★2022年2月3日★


 起床は朝8時。

 朝食はハムエッグとパンとコーヒーをしょくし、ホテルを出る。


 俺はホテル前にある客待ちタクシーに乗り込むと、羽田空港へと向かった。


 空港に到着し、イスに座りながら飛行機の搭乗時間を待つ。


「あっという間の旅行だったな」


 殺されそうになった事。初めてキスをした事。

 色んなことがあった。


 そして、大半の人間が知らないであろう、人の口の中の温かさを知った。

 俺はもう大人だ。


「誰も知らない事を知っている俺は、凄い人間なのかもしれない」


 空港の中で独り言が出る。


 でもアテナさん、優しかったな。

 処女だと言ってたけど、あんなに知識が豊富なのは尊敬する。

 本当に素晴らしい女性だ。


 でも遠距離恋愛は上手くいかない。

 忘れよう。


 俺は上から目線で、彼女を忘れることにした。


 ピポピポーン


 搭乗のアナウンスが鳴る。

 俺は飛行機に乗り、北海道へと戻った。



 それからは何事もなく時間が過ぎていった。

 ファーストキスを奪ったアテナさんの事も、次第に忘れていった。


 そして2ヶ月が過ぎ、北海道では雪が溶け出す頃となった。



 ★2022年4月1日★


「ヒマだなあ」


 俺はだらだらと過ごしていた。

 朝12時に起きてインターネットをし、宅配ピザや寿司を食べては朝4時に寝る。

 自堕落じだらく生活である。


 株も面倒なので購入していない。


 あまる時間を暇つぶしに使う。

 旅行からの2ヶ月間、そう過ごしていた。


 暇つぶしは主にゲームとパチンコ。


 最初はMMORPGをやった。他の人と一緒にモンスターと戦うやつだ。1回500円のガチャで武器防具を引き、10万円使った所でプレイ前に飽きてしまった。


 次は対戦型FPS。


 俺は最強の武器防具を4万円で揃えた。

 とても楽しかったが、暴言が多くて嫌になった。


 本当は、プレイヤー人口が多くて、1位になれば皆からチヤホヤされて、お金があれば無課金者を蹂躙じゅうりんできる、そんな都合の良いゲームがやりたかった。


 でもそんなゲームは無い。


 だから俺のヒマは、パチンコ屋で消化されていった。




 ★2022年4月2日★


 朝起きて、札幌にあるススキノを思い出した。

 飲む打つ買うがある歓楽街。


 俺は救いを求め、ススキノへ行くことにした。


 腹が減っているので、まずはススキノ近くのファミレスまでタクシー移動。

 ファミレスに入る。

「お一人様ですか?」

「はい」


 オープン席に案内され、座る。

 近くには学生らしき2人組が話をしている。


「そういやこの前、大三元だいさんげん上がったぜ」

「すげーな」


 何の話だろうか。

 俺は食事が来るまで、男2人の会話を聞いていた。


「それでその雀荘じゃんそうで1万円も勝ったぜ」

「おおー」

「半荘1回250円必要だけど、勝てばそれ以上儲かるんだぜ」

「すげーな」


 麻雀か。

 高校生の頃、脱衣麻雀をやりたくて覚えたな。

 久しぶりにやってみたい。


 到着したハンバーグを食べて会計を済ませると、ススキノの町で雀荘を探す。


 雀荘を探し歩いていると、変な立て看板があった。

 看板には『近日OPEN 完全合法カジノ ゴールデン』と書いてある。


「合法カジノ……まあどうでもいいか」


 俺はスルーした。


 そこから少し歩くと、雀荘を発見。

 中に入ると男性店員が出迎える。


「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」

「はい」


「レートは千点五十円テンゴ、2万点持ちの3万点返し。トップ3万点の2着1万点追加、喰いタン後付けアリアリ、場代は1半荘ハンチャン250円、ドリンクは無料です」

「わかりました」


 要するに3万点以上ならお金が増え、負けても1500円あれば絶対払えるという事らしい。


 待合室で説明を受けた俺は、すぐに麻雀卓に移動する。


 麻雀卓にはイスが4つ、既に3席埋まっている。

 左からおばさん、おじさん、お兄さんだ。


 空いている席に座りプレイを始めると、説明時に注文したアイスコーヒーが届く。

 マスクのままで飲めるよう、ストロー付きだ。


 そして戦いが始まった。


 ――――6時間が経過。


 楽しくて夜までプレイしてしまった。

 結果は場代を含めてマイナス18000円。大負けである。


 でも、心は満たされた。

 楽しかった。


 また明日も来よう。



 ★2022年4月12日★


 雀荘じゃんそうに行き始めて10日が経つ。

 結構楽しく、毎日行っていた。

 

 そして今日も行きたくなる。


 俺はタクシー乗り、運転手に雀荘までと伝える。


 雀荘に到着。

 中に入ると顔なじみが3人いた。

 ヒゲおじさん、8000婆さん、メガネ。


 お互い名前は知らないが、ヒゲのおじさんがパチンコをするので話が通じている。


 そのヒゲおじさんが話しかけてくる。


「おう、おはよう」

「おはようございます」


 挨拶をすると、いつものように麻雀を始める。

 そして半荘が終わった所で、おじさんが話しかけてきた。


「お兄さんパチスロするんだっけ?」

「はい」


「ここの近所にゴールデンっていう店が出来たの知ってるかい」

「いえ、知らないです」


「俺も知り合いから聞いて行ってみたんだけど、昔のパチスロ機がたくさんあってね。何でも合法カジノらしいんだけど、コイン1枚50円と高かったんだよね」

「へー」


「そんな訳で1円も使わずに店を出たよ。お金は大事にしないとね」

「そうですね」


 コイン1枚50円か。

 普通は20円なんだけど、合法カジノだから何でもありなんだろう。


「おじさん、そのゴールデンって店の場所はどこなんですか?」


 俺は店の場所を聞く。


「ああ、そこの角を曲がった所にあるよ」


 ヒゲおじさんは答えてくれる。


 そして今日も夜まで麻雀を打ち、時刻は18時になっていた。


 ゴールデン。

 ちょっと行ってみるか。


 昔のパチスロ機が置いてあると言われ、俺は合法カジノへと歩いて行った。

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