第19話 女性がホテルに来る

 俺は女性が来るのを待っていた。

 ホテルに着いたら電話すると、そう言っていたが……。


 プルルル プルルル


 会話から20分程度、また電話が掛かってくる。


「はいもしもし」

「着いたよー、部屋の番号教えてー」


 俺が部屋の番号を教えると、電話は切られた。

 今からこの部屋に来るらしい。


 コンコン


 ドアがノックされる。

 俺がカギの掛かったドアを開けると、見覚えのあるショートヘアの若い女性が部屋に入ってきた。

 相変わらずの巨乳で、手にはコンビニ袋も見える。


「こんばんわー」

「はいこんばんわ……」


 俺は少し緊張していた。


 彼女は机の上に袋を置くと、中からロング缶を取り出す。


「これ買ってきたんだ、どうぞ」


 そう言って彼女は、お酒であるストレングスゼロを渡してきた。

 俺は受け取ってベッドに腰掛ける。


 彼女も隣に座り、缶をプシッと言わせながら、すでにゴクゴク飲んでいた。


「ねえねえ、名前は何ていうの?」


 やっとお互いの名前がわかるのか


「自分は銀玉男ぎんたまおです」

「ギンタマオね。ギンって呼びましょう。そっちの方がかっこいい気がする」

「なるほど」


 どっちでもいい。


「ところでお姉さんの名前は何ですか?」

「私は笹之前女神ささのまえあてな、アテナって呼んでね」

「アテナさんですか。個性的ですね」

「でしょー、言われるんだ」


 そう言って俺をバシバシ叩く。


「ところで何か伝えることがあるとか……」

「そうなの」


 そういうと、アテナは神妙な顔をして俺を向く。


「ギン君……。実は私……もう削除人スイーパーを辞めようと思うの」

「そうなんですか」


 告白かと思った。少し期待した。

 ちょっとガッカリ……。


「ギン君には言ったと思うけど、私ね、ウミウシに父親を殺されたの」

「はい」

「父は投資家で、普段は家にいたわ。でも一ヶ月前、私が大学から帰ったら父がいなくなってた。リビングのカーペットに血の跡があったの……。すぐに警察に電話したわ。そして警察が来るまでの間、リビングに防犯カメラを仕掛けていたのを思い出したの」


 防犯カメラ……。


「その防犯カメラを調べると、犯人の男が映ってたの。男は腕を伸ばすと父に向かって光を出して、その光が父をつらぬいたの。そして男は、倒れた父の体を消して去っていったわ。もちろん警察にも映像を見せたんだけど、体が消えるなんて信じてくれなくて、結局ただの失踪だって言われて捜査はされなかった」

「そうなんだ……」


「私は犯人を絶対に許さない。見つけて殺してやるって思ったの。そうしたら声が聞こえて、それがサムエルだったの」

「うん」


「サムエルは私に素質があるって、この武器と敵を見つける道具をくれたわ」


 そう言って何も持っていない彼女の左手に、コンパスのような物が現れる。

 どこから出したんだろう。


「でも、もういいの。私ではかたきを取れないってわかったから」


 彼女の手からコンパスが消える。


「今までは幼生ようせいばかり相手にしていたけど、今日、本当の敵の強さがわかったの。駅では強気な事を言ったけど、このままじゃいつか私も死ぬって思った」

幼生ようせい?」


「そう、人型になったばかりのウミウシ、私でも倒せてた」

「そうなんだ」


 知らんがな……。


「ごめんね、こんな話。でも聞いて欲しかった」

「いいよ、俺で良かったらいくらでも聞くよ」


 女性に好かれようとキザっぽいセリフを言う。

 これだから俺という男は。


「ふふ、優しいんだね」


 そう言うと、隣の彼女がじわじわと俺に近付く。

 彼女の太ももが、俺と密着する。


「おれいがまだだったね」


 彼女がさらに近付いてくる。

 彼女の肩と俺の肩は、密着している。


「おれい?」

「あの時、私の代わりにおとりになってくれたでしょ」


 そう言うと、彼女の顔が近付いてくる。


 あっ、と思った。

 俺の口と彼女の唇がふれ合う。


 俺のファーストキス。


 俺が何も言えず固まっていると、彼女は優しく語りかけてくる。


「ごめんね。まだ処女だから、こっちで許してね」


 そう言うと彼女はベッドの下に降り、俺のズボンを下ろしてきた。

 俺はされるがままに、ズボンとパンツを脱ぐ。


 彼女は俺の物を触り始め、続いて棒と玉を舐め続けた。


 そして棒を口に入れ、頭を何度も往復させる。


 俺は初めての経験だった。


 そして俺は、湧き上がるものを抑えきれず、彼女の口の中に出す。

 彼女の口に入れたまま、俺は出し切る。


 彼女のほほが膨み、俺の顔に近付く。

 そしてゴクンと喉を鳴らすと、笑顔で話してきた。


「美味しかったよ」


 その瞬間、なぜだか俺はドキドキしてしまった。


 俺には好きな人がいるのに。

 ウリンちゃんという、完璧な女性が。


 そして、俺の初めての経験が終わり、彼女と話をする。


「そう言えばギン君ってどこに住んでるの?」

「北海道です」

「そっかー遠いね……。また今度、遊びに来たら教えてね」

「はい」


 童貞は女性との会話が続かない。

 俺は彼女に質問をする。


「アテナさんはこれからどうするんですか?」

「うーん。今は大学も冬休みだし、たまには旅行にでも行こうかな」

「いいですね、どこに行くんですか?」

「北海道かな」

 そう言って彼女が俺を見る。


 しかし2月の北海道は寒い。

 俺はアドバイスを出す。


「今の時期の北海道は止めた方がいいかもしれないですね、とても寒いです」

「へえ~」


 彼女が俺の肩を殴る。

 痛みは無かった。


「それじゃ、そろそろ私は帰るね。……もし、どこかで手から光を出すウミウシを見つけたら教えて欲しいな」

「うん、もし見つけたらね」


 見つけても教えないけどね。危険だし。


 そして彼女はホテルを出る。

 彼女の携帯番号と名前はスマホに登録しておいた。


 一人になった俺は、またシャワーを浴びてベッドに寝転がる。


 明日は帰る日だ。


 俺は心地よい疲れを感じながら、ベッドで眠りについた。



 

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