第15話 換金

 ★2022年1月7日★


 10億円の当選日より1週間が経ち、ついに換金可能な日がやってきた。


 ただ10億円ともなると、販売元請はんばいもとうけのみずも銀行でしか換金はできず、俺は札幌にある支店へと向かう。


 パラパラと雪降る中をタクシーで移動し30分、みずも銀行札幌支店へと到着。

 自動ドアをくぐり抜け、受付のお姉さんに近付く。


「おはようございます、本日はどのようなご用件でしょうか」

「宝くじが当たったので換金お願いします」

 俺は内ポケットに入れた1等前後賞の当たりくじ3枚を見せる。


「少々お待ち下さい」


 受付のお姉さんはどこかへ行き、そしてすぐ戻ってきた。


「こちらへどうぞ」


 お姉さんは俺を、奥の応接室へと案内する。

 部屋に置かれたソファーに座っていると、スーツ姿の男が入ってきた。


「宝くじの確認をよろしいでしょうか」

「はい」


 スーツの男に3枚の当たりくじを見せる。


「当選おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「今回、1等前後賞の当せんということで10億円ですね」

「はい」

「ではこちらの用紙に記入をお願いします」


 高額当せん宝くじ支払い請求書と書いてある。

 俺は用紙に記入し、ハンコと身分証明書で自己主張する。


 すると、あっけないほど早く換金が終わり、説明が始まった。


「他の口座に送金すると手数料がかかりますがよろしいですか?」

「はい」

「振り込みは大体2週間ほどかかりますので、ご了承ください」

「はい」


 説明が終わり、みずも銀行を出る。

 あとは振り込まれるのを待つだけだ。


 俺は家に帰った。



 ★2022年1月12日★


 外は雪が振り、気温はマイナス5度。

 寒いので家でごろごろしていると、隣の部屋から女性の話し声が聞こえてきた。声が大きいのでよく聞こえる。


「――――行ったら、そこの売り場で10億円出たって」

「ええー」

「買っておけば良かったね」

「あああああ~~」


 ……宝くじの話をしているのか?


 すぐに声が小さくなり、その後は聞こえなくなった。



 ★2022年1月22日★


 そろそろ当選金が振り込まれるはずだ。

 近くの銀行ATMへと歩く。


 ATM前には誰もおらず、俺は通帳記入ボタンを押し、通帳を放り込む。

 機械がゴーガーと音を出し、通帳を吐き出す。


 残高:1,000,038,123


 10億円振り込まれていた。

 特に感動は無かった。


 だが若さとお金、両方を持っている俺って、本当に幸せものだと思う。


 そんな俺が手に入れてないのが一つある。

 女だ。


 俺はまだ童貞、それが心残りだった。



 ★2022年1月23日★


 童貞を捨てるのは簡単である。

 お金さえあれば。


 札幌にはススキノという歓楽街かんらくがいがあり、そこで優しいお姉さんと一時的な恋人になればいいのだ。


 だがコロナウィルスが流行っている今は、どうも行きにくい。

 残念。


「でも俺にはウリンちゃんがいるし、リアル女性とか難しいのはまだいいや」


 イケメンじゃない俺は、優しいウリンちゃんにハマっていた。

 そしていつものお絵かき掲示板を開くと、久しぶりのドエロ画像があった。


 それは完全に無修正なウリンちゃんの裸だった。

 性器に毛は無く、妙にリアルで細かく描かれており、まさに俺が求めていたものだった。


「こんなウリンちゃんがいたんだ……」


 俺は嬉しさのあまり、描いた絵師に「素敵な絵をありがとうございます。お礼がしたいので捨てアドでメールを下さい」とメールアドレスを添えてレスを書いた。


 しばしのち、向こうからメールが来た。

「お礼なんて別にいいですよ。喜んでもらえて嬉しいです」

 と書いてあった。


 俺は電子マネーを購入し「よければ今後もウリンちゃんを書いて下さい」と書いてメールで10万円分の番号を送った。


 番号を送ったあと、相手からの返事は無かった。


 そして俺は後悔した。


 相手に絵描きの強要をしてしまった、相手の負担になってしまった、と。



 ★2022年1月24日★


 次の朝、メールが来ていた。

 昨日ウリンちゃんを描いた絵師からだ。


「電子マネーありがとうございます。お礼にもう一枚、特別に送らせてもらいます」

 と書かれ、画像ファイルが添付てんぷされていた。


 ファイルを開く。

 それは、性器の中まで見える裸のウリンちゃんだった。


「これはもう……出したい……」


 俺は朝から陰部を露出し、そのウリンちゃんを使用する。


「やばい、これは」


 20秒で変換装置に発射。これが本物の実力。

 気持ちよかったので、今回は取得ポイント多そうだ。


 発射後にスマホをみると、1gpと1000ポイントが増えていた。

 久しぶりにゴールドポイントが増えた。


「あー……でもこれ、またウミウシ帝国が来るんじゃないかな」


 ゴールド変換すると、ウミウシ帝国の兵隊が来る。

 前回はそうだった。


 そう思っていると、サムエルの声が聞こえる。


「サムエルだ。またゴールド変換に成功したようだな。よくやった」


 相変わらずで久しぶりだ。


「お前の実績を考え、ウミウシ帝国に精子力がばれないようにしてやる」


 そう言うと目の前にペンダントが現れ、地面に落ちる。

 ペンダントは小さな青い宝石が付いており、銀色のチェーンが付いていた。


「それを身に付ければ精子力を隠せる。相手が真の魔法使いでもな。かなり高価な物だがくれてやろう。使い方はスマホから充填をしろ」


 そう言うとサムエルの気配は消える。

 相変わらず、色々と早い。


 俺は落ちたペンダントを拾い上げる。


「スマホから充填って言ってたな」


 まずはペンダントを首にかける。とても軽い。


 次にスマホを開き『ペンダント充填=100消費』と書かれたボタンを押した。

 画面には充填完了と表示される。


「充填したのか……でも何も起こらないな」


 これで俺の精子力が隠せるらしい。

 精子力ってなんだよ。


 でもこれを身につければ、好きな場所に行き放題ってことだよな。


 どこにでも行けるなら観光もいいよな。

 大阪のたこ焼き、東京タワー、一度は体験してみたい。


 金も時間もある。俺は今何でもできる。


 よし、そうと決まれば飛行機とホテルの予約をするかな。

 どんなに高くても俺には関係ない。


 でもウミウシ帝国のアジト、新宿区だけは行かないようにしよう。


 何だか急に楽しくなってきたぞ。

 これからもずっと遊んで暮らそう。

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