第7話 何がしたいのか
三上さんが学校に来なくなって一ヶ月が過ぎた。
三上さんは私にこう言ってたな……。
「もし私に何かあったら、頼みます。トントロの事!」
……って。
でも、考えてみてもご近所の関係なんだ。行ってみてもいいかな。
そう思った私は明日、三上さんの家に行く事を決めたのだった。
「いらっしゃい四宮さん。上がって」
「お邪魔します」
午前十時。三上さんの家のチャイムを鳴らすと、三上さんのお母さんが快く出迎えてくれた。
「あの、三上さんの事で話が―――」
「ああ、あの子の事で? ……どうせまた遊びに行ったんだと思ってるわ。テレビでもやってないもの。きっと大丈夫よ」
そう言って、屈託の無い笑顔で答えた。
その後、リビングに案内された私は席に座る。待っていたかのように、クッキーとオレンジジュースが出てきたのは少し驚いた。
「チョコチップクッキー……!」
「ええそうよ。雷花がね、四宮さんはチョコレートが好きだって言ってたの。だからそれをずっと食べずに置いておいたの」
「ありがとうございます。でも、何から話したらいいかわからなくて……」
「どうでもいいわよ、あの子の事は。それより聞かせて頂戴。あなたの話が聞きたいの」
さっきから聞いてて違和感がする。まるで三上さんの事を見ていないような……。
でも、そんな事を考えている時間は無かった。ニコニコした顔で、私が話すのを待っているのに、迷惑が掛かってしまうと思ったからだ。
「はい……、えっと―――」
お昼もご馳走になってしまった。
三上さんのお母さんは、またおいでと言ってくれたが、流石に行く気にはなれない。
「二時間ずっとしゃべってたもんなぁ……」
思い出して苦笑する。あれやこれやと色々聞かれ、少し疲れてしまった。
「三上さん……」
ついさっき、携帯の方にメールが届いたのだ。
『病院にいます。喫茶店が中にあります。そこで落ち合いましょう』
「……」
特にやることもない。行ってみよう。
そう思い、次の目的地を三上さんが入院している病院に決めた。
「私に付けた二つ名は?」
「デス・カーニバル」
「ゆいちーには?」
「セイレーン」
「ハーモニー。 ……残念」
「むーーーー」
両頬をマンボウのように膨らませる三上さん。余程悔しいのだろう。
「本当に三上さん?別人?」
「三上雷花です。この通り」
病院のバッチ、名札? まあ、それらしき物を見せてくれた。
「個室なんだ。邪魔は入らないから、そこで話そうよ」
「うん」
珍しく三上さんが先導する。その表情は読み取れなかったが、何かの覚悟をしている顔だと言う事は、はっきりと読み取れた。
三上さんがベットの上を起こす。私は椅子に座る。
「目が覚めたんだ。先週の木曜日くらいに。一ヶ月経ったんだよね。何かあった? 皆は?」
「そこまで早口にならなくても……。 皆元気だよ」
三上さんの質問にそう答える。
「良かった……。 うん、決心ついた」
「何に?」
「四宮さん、しっかりと話して欲しいの」
「……はぐらかすのは?」
「無し。 ……今日は、本気だから」
三上さんの目がしっかりと私を見据える。
その眼差しのまま、三上さんは私にこう言った。
「四宮さん。本当のあなたを教えて下さい」
この話をするのは少し気が引ける。
だから、確認を取る。
「三上さん。友達でいてくれるなら、話すよ。この話を聞いて、皆私を怖がった。本当の私を受け入れてくれるなら―――」
一泊、いや、二泊置いて続けた。
「今までの態度は捨てて、真剣に聞いて欲しい」
私は、あの日から随分と変わった。
でも、まだ変わっていない部分もある。
そう、例えば――――――
私のように。
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