第5話 虫の居所
男はその日、虫の居所が悪かった。
普段と何も変わらない日常の光景も、その日だけは男の神経を強く逆撫でした。
男は、たまたま街ですれ違ったカップルに、くだらない因縁をつけて相手の男を殴った。
相手の男は頬を抑えてうずくまったが、男は構わず殴り続けた。
それからしばらく経ち、男はバイク事故に遭い、救急車で病院へと搬送された。
一刻も早い手術が必要となり、男は手術室へと運ばれた。
──────────
仮眠室で横になっていると、コールが鳴った。
聞けば、これからバイク事故を起こした男が搬送されてくるという事だった。
状態を確認すると、男は足を粉砕骨折しており、手術次第では後遺症が残る可能性もあり得たが、その医師はこれまで同じような手術を全て成功させていた。
医師は自信に溢れた足取りで手術室へと向かい、男の顔を見る。
苦々しい記憶と共に、ズキっと奥歯に痛みが走った。
手術台に乗せられた男も医師の顔を見て、目を見開いた。
「早く麻酔を」
男は身を捩らせながら何かを喚いたが、看護師が数人がかりで男にマスクをつけた。
麻酔が効き始め、徐々に脱力する男の耳元で医師はそっと呟く。
「とても難しい手術になりそうです。後遺症が残らず上手くいくかどうか……」
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