第二話 少年、平野平秋水と邂逅する(12)

 秋水の腕に抱えられ、土井はある男の夢を見た。


 その男は大きかった。

 そして、はるか彼方にいた。

 ありとあらゆるものを受け入れ、ありとあらゆるものを否定する。

 他人のために自分の命を簡単に捨ている。

 なのに、敵対する人間に対しては容赦ない。


 嫉妬が追い付かない。

 憧れさえ、追いつかない。

 

 でも、男は少年の中に『足跡』を残した。

 ほっとけば、日常生活という中で埋もれてしまう。

 でも、その足跡をたどって行けばどこかに通じる。

 辿るということは鍛錬することだ。

 

 自分にできるだろうか?

 正解に出るだろうか?

 不安は尽きない。


 それでも、少年は、この日。

 前に向かって歩き出した。

 やがて、自分が闇の社会で『ナタニエフ』と呼ばれることも知らずに・・・

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