第二話 少年、平野平秋水と邂逅する(11)

 混乱する土井少年。

 人を傷つけたことのない心優しい少年は自分が持っている刃物から血がしたたり落ちることに脳が付いていけなかった。

――人を殺す

 その重荷に少年は耐えられなかった。

「……やれやれ、しょうがない敵討ちだな」

 傷つけられた秋水は握っている鉈の柄を持ち鞘に納めた。

 泣き続ける土井少年に顔を両手で自分のほうに向けさせた。

「お前にチャンスをやる。俺の舌を噛み切ってみろ」

 そう言うと土井の口の中に秋水の息と舌が入ってきた。

 呆然とする土井。

 顔を話した秋水は優しく肩を抱いた。

「お前は本当に憎むべき相手が誰なのか? そいつに何が言いたいか? 分かっているはずだ」

 そう優しく諭すと少年は大男の懐で涙を流した。

 嗚咽した。

 それを秋水は優しく抱擁した。


 どれぐらい、泣いたのだろう? 

 いつの間にか、土井は秋水の中で安眠をむさぼっていた。

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