第二話 少年、平野平秋水と邂逅する(3)

「俺たち、愛と勇気と夢と希望と栃餅とラーメンと餃子とビールと郷土が大好きです! ナタニエフ兄弟‼」

 この台詞に爆笑が起こった。

「何言っているんだ? おっさん?」

 だが、この不良は次の瞬間、地に伏した。

「うっせ、服が全部洗濯された後だったんだ」

 その言葉より早く、ナタニエフ兄弟(弟)の拳が不良の腹にめり込んだ。

「おーい、おい。いくら不良でも先に手を出しちゃだめだぞ」

 兄が弟をいさめる。

 いつの間にか、兄は土井を抱きかかえた。

 そして、弟に慎重に渡した。

 と、兄は何か思いついたらしく弟の懐をまさぐるとを取り出した。

 不良たちは弟の実力を見てから、まるで波が引くように道を開いた。

 その道をナタニエフ(兄)は平然と、ごく当たり前のように歩く。

 リーダーらしく男の前に立つ。

 を差し出す。

 それは拳銃だった。

「S&W M19 コンバット・マグナム。名前ぐらい聞いたことあるだろ?」

 恐る恐る、リーダーは手を伸ばす。

「何考えているんだよ! 親父!」

 ナタニエフ(弟)が叫ぶ。

「馬鹿、ここでは『兄さん』と呼びなさい!」

 弟は苦々しく思っているらしい。

「馬鹿兄貴!」

「馬鹿は余計だ!」

 わざとらしく咳をしてナタニエフの兄はリーダーを再び見据えた。

 そして、ジャージの上から胸に手を置く。

「ここいらへんに心臓があるよ」

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