第二話 少年、平野平秋水と邂逅する(2)

 土井少年は不思議な感覚に陥っていた。

 怖い。

 不良共は怖い。

 でも、とても小さく感じる。

 動きも本人たちは素早いつもりだろうけど妙に緩慢に見える。

 だから、どうかわしていいかが寸前で分かる。

 多少、打たれたが決定打ではない。

 

 しかし、それが油断になった。

 腕にナイフが肉をえぐった。

 その痛みが集中力を切らせた。

「ああああああ‼」

 生まれて初めて味わう痛みだ。

 足は耐えきれずに膝をつく。

 燃えるような痛さだ。

 それは孤独や悲しみを思い出させる。

 これに気をよくした不良たちは一斉にナイフを手にした。

 突然、まぶしい光が不良たちと少年を照らした。

 電気が通じていないと思われたサーチライトの光だった。

 思わず目を細める。

 そこに男の声がした。

「あー、情けないったらありゃしない……大の大人が子供相手に武器を使うなや」

 その声は土井の心に複雑な安心感を与えた。

 サーチライトの中に入って来たのは、ホッケーマスクをかぶった大男二人組だ。

 だが、服装を見て笑いそうになった。

 映画などだと、この手の変装はツナギが定番だがサツマイモ色をしたジャージだった。

 正直、ダサい。

 大男二人は腰に携えた鉈を鞘から出し空中でクロスさせ言った。

「俺たち、愛と勇気と夢と希望と栃餅とラーメンと餃子とビールと郷土が大好きです! ナタニエフ兄弟‼」

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