第一話 少年、ナタニエフ(兄)と邂逅するという話(4)
元々は息子の正行が大学でのパソコン授業で『地元である星ノ宮のPR動画を作りなさい』という課題を出されたのが始まりだ。
制約もある。
正行は動画を二本提出した。
一つは真面目に星ノ宮がIT活用によるインフラ整備が進んでいることを街の風景
や表や簡単なアニメーションで紹介したもの。
これを親友であり愛弟子であり、ベンチャーIT会社社長の石動肇が見て一言言った。
「なんか、お役所的な動画だな」
「そうですかね?」
その時、秋水は縁側で昼寝をしているふりをした。
「俺だったら、もっと身近な……ほら、去年の今頃、
「でも、あれは山奥に行かないとないし、荒れ地だから一人で行くには……」
背を向けて寝ているふりをしているが四つの視線が痛い。
最初は乗り気ではなかった。
だが、乗り掛かった舟に乗れば、楽しみたいのが人情だ。
素顔が禁止なので家にあったホッケーマスクをかぶり、家にあったつなぎを着てカメラの前で親子は叫んだ。
「俺たち、ナタニエフ兄弟‼」
ナレーション(という名のツッコミ)などは教養豊かなインド料理や小物を扱う声のいい日本人店主にお願いをした。
結果は一本目は平均点をもらい、二本目は教室中の爆笑をもらったらしい。
だが、本来なら膨大な数の動画、SNSの海に消えるはずが、どこからか話題になりバズった。
その人気に押される形で今度は正行の日々の修行の様子や本格的日本料理のレシピ紹介をホッケーマスクをしたまま(もちろん、関係は兄弟として)紹介した。
――それもだいぶ落ち着いたのに……
秋水は自分と来客用に冷蔵庫からコーラを出した。
一応、身元が分かるものは石動がチェックしてなかったはずだ。
振り返ると少年は緊張したままだった。
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