第一話 少年、ナタニエフ(兄)と邂逅するという話(3)
「誰だよ、気持ちよく風呂に……」
不機嫌極まりない様子で玄関のドアを開けた。
だが、目の前には市街地の屋根が見える。
自動車やトラック、自転車等が行きかう音も聞こえる。
「ごめんなさい」
どうやら視線が上過ぎたようだ。
下を見ると十歳ぐらいの男の子がいた。
「ごめんなさい、ナタニエフさん」
秋水は一瞥した。
顎を持って男の子を見た。
潤んだ目の中に表情の分からないホッケーマスクの秋水がいた。
どれぐらい、時間が過ぎたのだろう?
嘆息してこう言った。
「まあ、中に入れ」
家の中は殺風景だった。
必要最小限のものを置いた感じで生活感さえない。
秋水は『不動産仲介業者』を名乗っているし、それなりに仕事もするが同時に「占有屋」という法令ギリギリの悪いこともする。
このマンションの部屋も時々現れては趣味のガンプラ制作や昼寝して「所有者は私です」という印象を周辺住民に与えている。
また、部屋数の少ない我が家に代わってゲーム部屋も完備している。
男の子は周囲をきょろきょろ見ていた。
秋水はちゃぶ台を出して日の当たるベランダの窓の近くに置いた。
「おいで!」
秋水の言葉に玄関でおどおどしていた男の子は靴を脱いでやって来た。
「お邪魔します」
今日は快晴でベランダを見れば洗った褌がそよ風に吹かれている。
「ぼ……ぼくは……」
直立不動の男の子に秋水は手で座るように促した。
「どうやって来た? というか、目的はなんだ?」
ぶっきらぼうに秋水は聞いた。
だが、少年は聞いてはなかった。
ここに来て初めてこう言った。
「僕を最強に強くしてください!」
「は?」
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