第6話

1ヶ月後、再び啓治は待合室にいた。

この1ヶ月の間、飲み忘れがないように毎朝のランニング後、水分の補給と同じタイミングで薬を服用した。なるほど中野医師の言った通り、1週間ほど経ったあたりから毎日頭痛がするようになってきた。渡された鎮痛薬でその痛みを凌ぐ。最後の一週ほどは薬の効果が出てきたのか頭痛も起こらなくなってきていた。


マイクで名前を呼ばれて診察室に入る。


「上杉さんこんにちは。体調いかがでしょう」

啓治が腰掛けるとすぐに中野医師が尋ねた。

「そうですね、やっぱり1週間ほど経った頃に頭が痛くなってきまして頂いた鎮痛薬を飲んでいました。最近はもう痛みは出なくなっていましたが薬が効き始めたということなんですかね」

「おそらくそういうことかと思われます、まあこのまま継続していってもらえればと思います」

「分かりました」

「またお薬は1ヶ月分お渡ししますね。この1ヶ月は論文上ではめまいや耳鳴りが起こりやすいと言われていますのでそのお薬も出しておきます。ではお大事に」




前の1ヶ月と同じように薬を飲み、仕事をし、家に帰って家庭での時間を過ごした。中野先生の言う通り週に1、2度めまいや耳鳴りがひどい日があり、もらった薬で対処した。


次の1ヶ月は筋肉痛が主な症状だった。その次の1ヶ月は動悸。その次は胸痛。そして今月は倦怠感。いずれも中野先生が説明してくれた通りだ。死ぬほどの激痛というわけでもなく、命に別状はないらしいが、日常生活に支障をきたすこともあり正直少し参り始めていた。

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