干し柿
庭の柿の木に実った実を、鳥が啄む用に枝に少し残して渋柿を採る。
ヘタを取らないよう皮を剥き、熱湯消毒した後二個一組で紐に結んで重ならないように縁側の軒先に吊るした。
―ほしがき…
―あまくなれ…
すうは私が干し柿の表面を揉む度に祈るように歌っている。ぶらぶら揺れる柿の実は乾いてくると少しずつ濃い色に変わる。
乾燥させる間、定期的に揉む事によって甘味が増す。黴防止に時々焼酎を吹きかけ消毒しながら雨や湿気を避けて1ヶ月程度干した。
揉んだものと揉まないものを二種類作っておいて前者を先に取り込んだ。甘くて大きめの方がすうは好みかもしれないという勝手な憶測だが。
―ほしがき…
―あまい…
もう数日経った頃、揉まなかった方の硬めの柿も取り込んだ。ごく薄く切って、買ってきたクリームチーズを載せて酒の肴にした。濃い褐色の柿を花のように皿に並べる。
残った柿も切って生ハムとハーブとオリーブオイルを和えてサラダも作り、粗挽きの黒胡椒をかける。
私は満足して皿の上の料理を眺めた。簡単だが見栄えが良い。
「うん。美味しそう」
先日ぶらりと寄ったバーのマスターにウィスキーに合うと教えて貰ったレシピだが、家には辛口の日本酒しか無かったので其れを飲んだ。柿の甘味とクリームチーズのコクが日本酒にも意外と合う。
―かき…
―チーズ…
「お酒は駄目だよ」
私は微酔いで良い気分のままクリームチーズ干し柿の載った皿を卓袱台の隅に置いた。
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