薩摩芋

 すうは機嫌が悪いようだった。


 いつも聞いているラジオの周波数を変えたり蛍光管を外したり、地味な嫌がらせをしてくる。


 私の何に怒っているのだろう。

 はっきり言って貰わないと分からない人間なので、すうの不機嫌の理由に思い当たる節がない。


 先日、お隣の奥さんから薩摩芋を貰った。

 一人と一怪異で食べるには多かったので、全部蒸してラップに包んで冷凍した。

 すうも蒸し芋を喜んで食べていたはずだ。


 冷凍庫から出した蒸し芋を眺めていると、不機嫌そうな声がした。


―大学芋…


「は?」


―大学芋…


―カリカリ…


 ああ…。

 全部蒸してしまったら外側がカリカリの大学芋には出来ないということか。


「生の芋買ってきてやるよ」


―カリカリ…


 少し嬉しそうなすうの声を聞きながら、何故怪異の機嫌を取らねばならないのだろうかと私は思った。

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